見張るカラス(3)
首を少し後ろへ巡らせた。頬のあたりの血管が浮き出るほど、俺は怒りを堪えていた……
「よくも、俺の背中から……やったな」
俺は激昂して言った。
……俺の後ろで、奴は息を切らせていた。
歯が数本抜け落ち、体は少し前かがみになり、その手にあるナイフは俺の体に突き刺さったままだ。
奴の顔は血にまみれ、ボロボロになっていた。
「大人の世界をなめるな!!」奴は怒りをあらわにして言った。
そして、両手でナイフを引き抜いた……
……その手は震えており、ナイフから滴り落ちるほど血に染まっていた。
「お、俺は正しい……は、早く行かないと……」
奴は恐怖で手を震わせ、数歩後退しながら言った。
それから身を翻し、走って逃げようとした。
しかし、傷を負っているせいで、素早く動くことができない。
激しい目眩に襲われているかのようにふらつき、痛みを抑えるために肩を押さえながら、ただゆっくりと走っていた。
それを見た瞬間、俺の目は見開かれ、瞳孔が収縮した。
「逃げる!?……俺から!?」
怒りを堪えながら、頬の血管を浮き出させて俺は低く呟いた。
……ガラスの破片の近くにあった俺の手のひらが素早く動き、そのガラスを固く握りしめた。
ガラスは鉄格子の隙間にきつく挟まっていたため、無理やり引っ張り出すと、下の部分だけが砕け散った。
破片を握った俺の手のひらから、血が数滴したたり落ちた。
三角形の形をしたガラスの破片を頭の近くまで掲げ、いつでも投げられるよう構えた……
「逃がすか」俺は怒り狂って低く言った。
――その鋭いガラスを、7メートル先へ逃げる奴へ向けて投げつけた。
時間がゆっくりと流れるようだった。
キィィィィン〜……薄暗い街灯の光の下でガラスは回転し、そのすべての面が眩しくきらめいた。
――ガラスは奴の後頭部に鋭く突き刺さり、空中にわずかに血が舞った。
奴は地面にうつ伏せに倒れ込んだ……
……血がゆっくりと地面を染めていき、奴はピクリとも動かなくなった。
◆
「ハァ……ハァ……ハァ……」
俺は少し視線を落とし、荒い息を吐いた。
目の下には、大量に出血した時のように黒い隈のような影が差していた。
少し体を屈め、傷ついた脇腹を押さえながら、俺はゆっくりと身体を反転させた。
倒れないよう、手がかりを求めて鉄製のゴミ箱の縁を掴んだ。
掴んだゴミ箱の縁に沿って、ゆっくりと手を前に滑らせていく。
血にまみれた俺の手のひらの跡が、鉄の表面に残された。
「こりゃあかんな……」俺の顔面は蒼白で、声は弱々しかった。
血が地面へと滴り落ちる。
俺は路地裏からゆっくりと歩き出し、大通りを渡ろうとした。
虚ろな目で、俺は少し思考を巡らせた。
(生きものはみな、いずれ死ぬ。問題はそこじゃない。
どう死ぬか……それだけが、俺にとって大事なんだ)
……ビルの上にいるカラスが、まだ俺を監視している。
その瞳には、道を渡ろうと歩いている俺の姿が映っていた。
(綺麗な女性を守って死ぬ……か?……悪くないな)
道を渡る一歩ごとに、俺の体から流れ出る血が路面を濡らしていく。
血まみれの俺の手が、ゆっくりと前方へ伸ばされた。
(いや!諦めるな……まだ助かるかもしれない、早く手当てを)
《 道路は中央に白い線がある片側2車線の通りだ。
俺は右側を歩いており、左側へと渡ろうとしていた》
「プーーーッ!!!プーーーッ!!」
俺を撥ねようとするトラックのクラクションの音が響き渡る。
車のライトの光が、ゆっくりと俺の体を照らし出した。
俺は驚いて、すぐにそのトラックの方を振り向いた。
(トラックくん!?)




