謝れ……
アレックスが、俺の持っているロリポップについて答えたのを聞いた瞬間、俺は激しいショックを受け、頭の中が完全に真っ白になった。
時間が本当にゆっくりと流れているように感じた……
……風がゆっくりと吹き抜け、俺の髪を揺らす。周囲のすべてが白く染まり、まるで世界から色が失われたかのようだった。
キーン……! 尋常ではない驚きのせいで、頭の中で高い音が鳴り響いていた。
俺はただ目を丸くするだけで、どんな顔をすればいいのか分からなかった。
その瞬間、俺はひどく深く考え込んだ。
(冗談かと思ってた……)
タバコについて尋ねてきた子供に出会ったときの記憶が、ゆっくりと蘇ってくる。
「あそこ、すっごく美味しいタバコ売ってるよ」記憶の中の子供の言葉だ。
そして、記憶はタバコ売りの商人へと移る。
「これは最高のタバコですぞ」記憶の中の商人の言葉だ。
さらに、記憶はジャンとビルへと移る。俺が彼らのタバコを侮辱したせいで怒っていた時のことだ。
「何を言ってやがる! このタバコ一本で3ゴールド近くするんだぞ!」ジャンは怒っているようだった。
「そうだ!」ビルも怒って言った。
今、俺の頭の中にあるのは、白く染まった静寂の世界の中でくるくると回る、たった一つのロリポップだけだった。
(間違いない。この世界ではロリポップがタバコなんだ。俺のジーニアスな頭は、こんなでっかいコンスピラシーに今までなぜ気づかなかったんだろう……)
頭の中で響く自分の声は、まだショックを受けて諦めきっているように聞こえた。
俺はゆっくりと我に返り、今アレックスの目の前にいる自分を認識した。ロリポップを持った右手はゆっくりと力なく垂れ下がったが、その指はまだロリポップを握りしめていた。
ショック状態のまま、俺はうつむきながら小さく自分自身に呟いた。
「つまり、この世界の『ニコチン』は『シュガー』だったってこと? シュガー、化学物質CO2Hプラスアルファ、ダイアベテスの原因……道理で違法なわけだ」と俺は呟いた。
情けない様子の俺を見て、アレックスは冷たい顔で俺を見つめた。
「そうだ、それが今のお前に相応しい姿だ。姉のように勇者になろうなんて期待するのはよせ。見苦しい」アレックスは威厳のある声で言った。
そう言い残すと、アレックスは背を向け、黙り込んでいる俺を置いてゆっくりと歩き出した。
「謝れ……」俺はうつむいたまま、小さく口にした。
その声を聞いたアレックスは、数歩歩いたところで突然ピタリと止まり、少しだけ首を後ろに向けた。そして、視界の隅で俺を横目で睨んだ。
「謝れ、だと?」アレックスの顔は怒りに満ち、冷たい表情で鋭く睨みつけてきた。
アレックスは完全にこちらへ振り返り、威圧感を放ちながら近づいてきた。
「私はただ真実を言っただけだったんだが……」
俺の目の前まで来ると、アレックスは威圧的な鋭い視線で顔を近づけてきた。
「……もう一度聞かせろ」その声は低く重々しく、圧倒的な威圧感に満ちていた。
アレックスの右手は固く握り締められ、筋肉の筋がはっきりと浮き出ている。俺が答えた後、殴りかかる準備はできているようだった……
……俺はロリポップを強く握りしめ、飴がガラスのように砕けた。
その瞬間、俺はアレックスの頬に向けて拳を振り抜いた……
「俺の世界にあるタバコに謝れ!」俺は怒りとともに叫んだ。
……それと同時に、アレックスも俺の頬を狙って拳を振り上げていた。
時間がゆっくりと流れる。
——俺たちは互いにためらうことなく、右の拳を相手の頬へと振り抜いた。だが、俺の手には、拳の軌跡に沿って舞う微かな紫色の炎があった。
ドンッ! 俺の拳が先にアレックスの頬を捉えた。その瞬間、アレックスは一瞬バランスを崩し、俺の頬に向かっていた拳が空を切った。
一撃を受けてアレックスの頭がぐらついた時、彼の目は制御を失ったかのように激しく動き、何が起きたのか信じられないという顔をしていた。
『馬鹿な……これが本当にあの、アキラか……?』
◇
その光景を見ていた、アレックスに同行する兵士たちが口々に言った……
「嘘だろ! 隊長が元弟子に押されてるぞ?!」
「加勢するべきか? でも……アキラには昔コーヒーを奢ってもらった恩があるしな……」
「俺もだ……。あいつが貴族だった頃はよくしてもらったからな。なんか、やりづらいぜ……」
「ああ。とりあえず、隊長の指示を待とう」
彼らはそう語り合っていた。
◇
今、俺の左手は固く握り締められ——
「謝れ……」俺の声は低く響き、視線は鋭く研ぎ澄まされていた。
——左の拳が素早く振り抜かれ、打撃の軌道には微かな紫の炎が舞い散る。その拳は、再びアレックスの顔面へと向かった。
「おのれ……舐めるなぁッ!!」アレックスが激怒して叫んだ。
アレックスは咄嗟に両腕を交差させ、俺の拳を防御した。
ドスッ!
アレックスは俺の攻撃を見事に防ぎ、拳を受け止めた腕を覆う防具からは、衝撃による薄い煙が立ち上っていた。
彼は両腕で強く押し返し、俺の拳を弾いて左腕を横へと弾き飛ばした。
アレックスはすかさずその隙を突いた。
一瞬にして彼の体が前へと飛び出し、俺の顔面に向けて渾身の拳を振り下ろしてきた。
「ハァァァァッ!!」彼は叫びながら拳を振るった。
ドゴォッ! アレックスの拳が俺の頬を強打し、その衝撃で俺の体は回転して彼に背を向ける形になった。
背を向けた瞬間、俺は間合いを取るように片足を大きく横へ踏み出し、地面を強く蹴りつけた。
そして……
——その足を軸にして素早く体を回転させ、再びアレックスの側面に相対した。
《バスケットボールで言えば、ピボットと呼ばれる動きだ》
『今のは!』アレックスは驚愕した。
——その瞬間、俺は片足を高く振り上げた。あまりの速さに、強烈な風が地面を叩き、俺たちの周囲に土埃が舞い上がった。
振り上げられた俺の足は、まるで側面からアレックスを切り裂こうとする剣のようだった。
アレックスは攻撃を終えたばかりで体が前傾姿勢になっていた。そのため、振り上げた俺の足は彼の頭上に位置しており、彼はまだ自分に迫る危機に気づいていなかった。
アレックスの拳のせいで、俺の顔には少し痣ができ、頬には血のついた擦り傷が残っていた。
「この景色を見たことあるか?」俺は淡々と言い放った。
その言葉を聞いて、アレックスは驚いた目で俺の方へ顔を向けた。しかし、彼の目に映ったのは、自分の顔の半分を覆う俺の足の影だけだった。
『しまった!』
稲妻の如く素早く振り下ろされた俺の足が、アレックスの後頭部から首筋を強打し、そのまま地面へと叩きつけた。それはまるで彼の首を斬り裂く剣の閃きのようだった。
ズドンッ!……その強烈な一撃により、地面が砕け散り、土埃が空中に舞い上がった。
舞い上がった土埃がゆっくりと晴れていく。そこには、顔を地面に押し付けられたアレックスの姿があった。地面には窪みとひび割れが残されていた。
彼の両手も同じく地面を陥没させ、ひび割れを作っていた。地面への更なる激突を腕で必死に堪えようとしたのだろう。その姿勢は、まるで土下座をしているかのようだった。
アレックスが顔と両手を地面につけ、土下座しているように見えるその姿。彼のちょうど目の前には、プラスチックの棒とともに粉々に砕けたロリポップの破片が散らばっていた。
俺は冷たい視線でアレックスを見下ろした。
「俺の世界のタバコに謝る必要はない。直接土下座する方が、遥かに礼儀正しいと思うぜ」俺は冷たく言い放ち、その視線は虚ろに見えた。
それを聞いたアレックスは激高した。地面について開いていた両手が固く握り締められ、地面を強く鷲掴みにした。
すると、アレックスは立ち上がり、片手で頭を押さえながら、酔ったようによろめき、数歩後ろへ下がった。
彼の顔には血が伝い、顔の一部を覆っていた。
「さっきからタバコ、タバコと……! 一体貴様は何の話をしてやがるんだ!」アレックスが叫んだ。
「へ?」その言葉を聞いた瞬間、俺は思わず唖然とした。




