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観測者に見守られる屋敷で生きることにした ~静は世界を支配しない~  作者: 灯乃しんわ
第五章 静かな日常に役目が宿る

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閑話 守るための旅路、帰る場所へ

《ルミナ・ヴェール》の四人は、冒険者ギルド・ルミエール本部を訪れていた。

王都でも最大規模を誇るその建物は、石造りの重厚な外観と

内部の広々とした吹き抜けが特徴的だ。


中は今日も忙しなく人が行き交っており、依頼の確認や報酬の受け取り

情報交換に訪れた冒険者たちの声が絶えず響いている。

受付カウンターの前には常に数人の列ができており

ギルド職員たちも慌ただしく書類を整理したり

依頼書を掲示板に貼り出したりと、活気に満ちた日常が広がっていた。


「おや、皆さん。お久しぶりです」

カウンターの一角で、馴染みの受付嬢がこちらに気づき、柔らかく微笑んだ。

彼女はいつもこのギルドで四人の依頼手続きを担当してくれる

顔なじみの職員だった。


「ギルドマスターからお呼びですよね? こちらへどうぞ」

受付嬢の案内に従い、四人は普段は立ち入らない奥の廊下へと進んでいく。

廊下の両脇には会議室や資料室が並び、奥へ進むほど静かで厳かな雰囲気が

漂ってくる。

やがて、重厚な木彫りの扉の前で一度立ち止まった。

受付嬢が軽く、だが丁寧にノックする。


「フレイア様、《ルミナ・ヴェール》の皆さんがお見えになりました」


「どうぞ」

扉の向こうから、落ち着いた、それでいて凛とした声が返ってきた。


受付嬢が扉を開けると、そこは広々とした執務室。

窓からは王都の街並みが一望でき、室内には地図や書類が整然と並べられている。机の向こうには、一人のエルフの女性が立っていた。


冒険者ギルド・ルミエール本部ギルドマスター

フレイア・ノート


長い銀髪を後ろで一つに束ね、知的で冷静な表情を湛えた彼女は

この王国最大のギルドを統括する人物だ。


「来てくれてありがとう」

フレイアは静かに四人を迎え入れた。


形式的な挨拶と軽い近況確認を終えた後、彼女は机の上に一通の書状を置く。

その書状には教会とルミエール王国、二つの印章が押されている。

公式性の高い、極めて重要な文書であることが一目で分かった。


「確認になるけれど……教会、王国、そして冒険者ギルド

いずれも"当該案件の主"に対し、敵対しない方針で一致したわ」


淡々とした口調で、フレイアは説明を続ける。

「要望があれば最優先で対応する。ただし、接触も強制はしない。

あくまで、相手が望んだ場合のみ、こちらから働きかける。

それが今回の大原則よ」


そう言いながら、フレイアは引き出しから小さな魔道具を四つ取り出し

机の上に並べた。手のひらに収まるほどの小型の通信機だ。


「緊急連絡用の魔道具よ。短文のみ送信可能。

使わないに越したことはないけれど……万が一のために持っておいて。

ギルド本部と直接つながっているから、何かあればすぐに連絡できるわ」


さらにフレイアは机の脇に置かれた

布で包まれた品を指し示す。


「これはマジックバッグ。馬車一台分の容量が入るわ。

長期行動を想定しているから、食料や野営道具も一通り詰めてある」


「それと、個人用のマジックポーチは一人ずつ。

中には高品質の回復ポーションを数本ずつ入れてあるわ。

何かあったときは躊躇せず使いなさい」


フレイアはそこで一度言葉を切り、地図を広げた。


「フォルツまでは、ギルド所有の高速魔道馬車を使ってもらう。

通常なら五、六日かかるところを、今回は三日程度で到着する予定よ。

道中の安全は確保されているけれど、念のため護衛も一名同行させるわ」


ここまでは、ギルドマスターとしての冷静で事務的な説明だった。

だが、次にフレイアが口を開いたとき、その声には少しだけ感情が混じっていた。


「……正直に言うわ」

 フレイアは四人を静かに見渡した。


「教会や国から、かなり重い役目を押し付けてしまった。

 これは本来、あなたたちに背負わせるべき性質のものでは

 なかったかもしれない」


そう言って、フレイアは短く、静かに頭を下げた。


「危険を感じたら無理はしないで……

 撤退を最優先して。報告よりも、生きて戻ることを選びなさい。

 それが私からの命令よ」


その言葉に、ミレイアがふっと笑った。

 「相変わらず、心配性ね」


そう言いながら、彼女は机の上に小さな包みを置く。

中には甘味と胃薬が入っているようだった。

「甘味と胃薬。どうせ、夜中に頭抱えるんでしょ?

 少しは休みなさいよ、姉さん」


「……見抜かれてるのが一番つらいわ」

フレイアは苦笑し、わずかに肩の力を抜いた。


「そんなに心配しなくても平気よ、姉さん

 私たちだって、それなりに場数は踏んできたんだから」

ミレイアは肩をすくめて見せる。

その仕草には、姉を安心させようとする妹の優しさが滲んでいた。


アリアも静かに微笑む

 「フレイアさんも大変でしょうけど……

 無理はしないでくださいね」


「あなたに言われると、余計に刺さるわね」

フレイアはため息をつき、アリアを見つめた。


「……昔から、真面目すぎるのよ、あなたは」


フィアが、ぱっと明るく手を振った。

「大丈夫大丈夫! そのあたりは私たちに任せておいて♪

 アリアが倒れそうになったら、ちゃんと休ませるから!」


リーアは少し考えるように視線を落とし、それから落ち着いた声で言った。

「私たちは無理に踏み込むために行くんじゃない。

 帰る場所を壊さないために行くの

 だから、ちゃんと帰ってくるわ」


その言葉に、フレイアは一瞬だけ目を見開き

――それからゆっくりと頷いた。

「……ええ。信じているわ」


◆◆◆


ギルド裏手の発着場では、高速魔道馬車が静かに待機していた。

魔力の流れが安定した、長距離移動専用の特別仕様の車両だ。


車体には防御魔法の刻印が施され、内部は四人が長時間移動しても疲れないよう

座席にクッション性の高い素材が使われている。

窓も衝撃に強い特殊なガラスで作られており

外からの視線を遮る加工も施されていた。


「三日後、フォルツよ。無事に、ね」

フレイアの声を背に、四人は順番に馬車へ乗り込んだ。

荷物を積み込み、それぞれが席に腰を下ろす。


扉が閉まり、車体が静かに動き出した。

窓の外では、王都の景色がゆっくりと遠ざかっていく。

石畳の道、賑やかな市場、行き交う人々の姿。

それらが少しずつ小さくなり、やがて緑豊かな郊外の風景へと変わっていった。


アリアは窓の外を見つめ、小さく息を吐いた。

(……守るための旅)


誰かを倒すためではない

奪うためでもない


ただ、壊さないために進む、それが今回の旅の意味だった。


馬車は静かに速度を上げ、フォルツへ向かって走り出した。

車輪の音だけが、穏やかに響いている。


四人はそれぞれの思いを胸に

目的地へと向かっていく


――守るべきものを胸に

帰る場所を信じて

イメージソングを作成してみました。

もし興味を持って頂けましたら、曲を聴きながら読んでくれたら嬉しいです。

物語の方も順調に書き進めていますので宜しくお願い致します。

https://suno.com/@10monoshin8


カクコムでも先行掲載しています。

もし続きが気になって読んでいただける方が居たら下記のページでお願いします。

https://kakuyomu.jp/works/822139842423376578

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