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観測者に見守られる屋敷で生きることにした ~静は世界を支配しない~  作者: 灯乃しんわ
第四章 静かな日々、揺れ始める世界

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第五話 真実を知る者は静に動き出す

辺境の街フォルツは、いつもよりざわついていた。


人の数が急に増えたわけではない

市場も、宿屋も、通りの店も、表向きはいつも通り

商人は商品を並べ、子どもたちは走り回り、日常は続いている。


それでも――

声が、視線が、足取りが、どこか落ち着かない


「……なんか、空気が重いね」

フィアが歩きながら小さく言った。


「ええ」

リーナも周囲を見回す。


「噂話があちこちで止まってる感じ。

 聞き終わる前に、次の人へ渡ってるわ」


街の中央へ向かうにつれ、人の流れが一方向に偏っているのが分かる。


自然と視線は教会の尖塔へ集まっていた。

祈りの時間でもないのに、教会前には人だかりができている。


「……嫌な予感がする」

アリアがほとんど独り言のように呟いた。


「アリア?」


「いえ……ただの勘よ」


そう言いながらも、その足取りはわずかに速くなっている。

人混みに近づくにつれ、断片的な声が耳に入ってきた。


「聞いたか? 聖女様が……」

「神託を受けたって……」

「観測の女神、だったか……?」


《ルミナ・ヴェール》の四人は自然と足を止めた。

アリアの背筋が、すっと伸びる。


「……観測、って」

ミレイアが低い声で言う。


「まさか……」

フィアが言葉を濁す。


人混みから一歩離れ、物陰で四人は顔を寄せた。


「名前は出てないわね」

リーナが、冷静に状況を整理する。


「でも……時期も、場所も、話の方向も

 偶然で済ませるには揃いすぎてる」

アリアは、ゆっくりと息を吐いた。


頭の中に浮かぶのは、あの屋敷の静かな空気

静のどこか頼りなさそうで、それでいて決して揺るがない態度


(……あの人なら)


きっと慌てていない。

状況を把握していなくても、無理に動こうとはしないだろう。

それが分かっているからこそ――胸の奥が少しだけざわつく。


(でも……世界は、そうじゃない)


噂は善意で膨らみ、恐れで歪み、正義の名の下に暴走する。

静やセリナが、その中心に立たされる光景が

一瞬だけ、脳裏をよぎった。


「……休憩は後にするわ」

アリアがはっきりと言った。その声に迷いはない。


「このまま先へ行く」


「え、でも……」

フィアが口を開きかけるが、アリアは首を横に振る。


「中途半端な情報が独り歩きするのが、一番まずい」


「教会も、王国も、民衆も……不安なままにしておけない」


リーナが静かに頷いた。

「正しい情報を正しい順番で。それが今の最善ね」


「……静たちのことは?」

フィアの問いに、アリアは一瞬だけ目を伏せた。


「屋敷の詳細は伏せる。支配エリアの性質だけ」

「それと……セリナを、神輿にしない」


その言葉にミレイアが小さく息を吐いた。

「……らしい判断ね」


「守るって、そういうことだもの」


馬車に乗り込み、街を抜け

夕暮れを越え、夜の道へと入っていく。

車輪の音に揺られながら、アリアは窓の外を見つめていた。


(信じてる)


静はきっと大丈夫だ。セリナも、ツキも。

けれど――

信じているからこそ、世界側を止めなければならない。


「……間に合ってほしいわね」

ぽつりと漏れた言葉に――


「大丈夫だよ」


フィアが、いつもの調子で答えた。

「だって、あの人たち、変な意味で、放っておけないもん」


リーナとミレイアも、静かに頷く。


屋敷では、今日も穏やかな時間が流れている。


それを知りながら――

《ルミナ・ヴェール》は世界の側から走り出していた。


夜の道を、馬車は駆けていく。

イメージソングを作成してみました。

もし興味を持って頂けましたら、曲を聴きながら読んでくれたら嬉しいです。

物語の方も順調に書き進めていますので宜しくお願い致します。

https://suno.com/@10monoshin8


カクコムでも先行掲載しています。

もし続きが気になって読んでいただける方が居たら下記のページでお願いします。

https://kakuyomu.jp/works/822139842423376578

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