↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
観測者に見守られる屋敷で生きることにした ~静は世界を支配しない~  作者: 灯乃しんわ
第四章 静かな日々、揺れ始める世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
34/268

閑話 世界が揺れる時、屋敷は今日も穏やかに時を刻む

《ルミナ・ヴェール》の四人が旅立つ、少し前のこと。


重厚な扉に囲まれた会議室では、重苦しい空気が漂っていた。

教会中央監察局、ルミエール王国。

そして一部の王立研究機関から選ばれた関係者たちが、集まっている。


かつて南部へと伸びていたはずの支配エリアは

いつの間にかその動きを止め、ここ最近は――辺境の街フォルツの方向へと

静かに、しかし確実に広がり始めている。


「……意図が読めない」

誰かがそう呟いた。


コアの反応は相変わらずだ。

穏やかで、安定していて、攻撃性の兆候は一切ない。


それが余計に判断を難しくしていた。

何を目的に、どこへ向かっているのか。全てが不明瞭だ。


「観測者案件として指定されている以上

 こちらから不用意に接触するわけにもいかん」


「かといって、放置していい問題でもない」


議論は堂々巡りを続けるが、誰も明確な答えを持たない。

不安と警戒だけが積み重なっていく。


「……上級冒険者《ルミナ・ヴェール》からの報告はまだか?」


「他国が派遣した探索者はどうなっている?」


誰も明確な答えを持たない。

不安と警戒だけが、積み重なっていく。


――そんな中


世界を満たす神気がふと深く震え、

各国の大神殿はもとより、すべての聖女・聖人のもとへ、

神託が同時に降り渡った。


『観測の女神ルーナフィリス、選ばれし聖女の歩みを告ぐ』


『その道を害し、妨げることは、いかなる者にも許されない』


『それは神々の秩序を乱す行いである』


その瞬間――

世界は……確かに揺れた。


その意味をすぐに理解できた者は、誰もいなかった。

しかし、確かなことが一つ……秘匿されていた『観測者』が動いた。


◆◆◆


同じ頃

屋敷から東へ――

辺境の街フォルツへと向かう道を

静とセリナ、ツキ、そして《ルミナ・ヴェール》の四人は進んでいた。


不思議なほど、魔獣の姿は見当たらない。


「……本当に一匹も出ないわね」

アリアが周囲を警戒しながら呟く。


油断はしない。けれど、肩の力もいつの間にか少し抜けていた。

道中では薬草を見つけたり、珍しいキノコや木の実

果実を採取したり。


気がつけば、まるで散歩の延長のような時間が流れている。


「にゃ~」

ツキは上機嫌に鳴き、時折、気になる場所へと先導していった。

尻尾を立てて誇らしげな様子。


「……行きの時と全然違うわね」

ミレイアが首を傾げる。


理由は分からない。けれど警戒だけは解かない。

そうして日が暮れる前には屋敷へ戻る。


温かい食事と、しっかりとした休養

そして、湯気の立つ温泉


「……これって、探索になるの?」

湯上がりにアリアが腕を組んで考え込む。


「うーん……」

真剣に唸るその横で――


「まぁ、いいんじゃない?」

フィアは気楽に笑った。

「ツキと毎日お散歩できるし、楽しいよ♪」


「確かにね」

リーナも頷く。

「こういう探索……旅?も、悪くないわ。疲れた後の温泉、最高だし♪」


「……普通だと思っちゃ、いけないんだけどね」

ミレイアが、少しだけ慎重な声で言う。

「でも……今くらいは、いいんじゃない?」


その言葉にアリアは苦笑した。


一日が終わり

世界では神々の意志が交差し、大きな波が生まれつつある。

そんな中、この屋敷では――

今日も変わらない日常が静かに流れていた。


世界は――また少しだけ、動き始めている。


どんなに世界が揺れようとも、この屋敷の日常は変わらない。

それがこの場所の在り方。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。