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観測者に見守られる屋敷で生きることにした ~静は世界を支配しない~  作者: 灯乃しんわ
第三章 導かれし者たちの出会い

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第九話 湯けむりと朝の約束

後片づけも一段落した頃、静はセリナに声をかけた。


「セリナさん。お風呂の準備ができたらお呼びしますので

 それまで皆さんとゆっくりしていてください」


その言葉にセリナは一瞬、きょとんとした表情を浮かべる。


「お風呂……ですか?

 あの……貴族の方が入る、あのお風呂でしょうか?」


「貴族、というのがどんな方なのかは分かりませんが……

 たぶん、そのお風呂だと思いますよ」


静はそう答えつつ、内心では首を傾げていた。

(……お風呂って、そんな特別なものだったっけ?)


日本では当たり前だったお風呂

だが、この世界では違うのだろうか。


その戸惑いを察したのか、セリナは少し照れたように説明する。

「私たち平民は、普段は井戸水を汲んで、温めた布で体を拭くくらいなんです。

 夏なら川で水浴びもできますけど……冬は、とても無理ですから」


「アリアさんたちのような上級冒険者の方だと、清浄の魔道具や

 私のように生活魔法が使える人は、清浄魔法で済ませることが多いですね」


「なるほど……」

静は納得したように頷く。

この世界では、お風呂は贅沢品なのだ。


「それなら、今日はぜひうちのお風呂を使ってください。

 ゆっくり湯船に浸かれば、きっと疲れも取れますから」


そう言って、セリナを皆のいるリビングへと促した。


◆◆◆


一方、静はキッチンに戻りツキを見下ろす。

「さて……人数も多いし、お風呂も広い方がいいよね?」


ツキは呼ばれたことに気づいたのか、首を傾げる。


静は屋敷コアのメニューを開き、《増改築》を選択した。

浴場の項目を見ていくと、様々な選択肢が並んでいる。


「大浴場……露天……あ、温泉もあるんだ」


少し迷ってから、静は楽しそうに呟く。

「今日は温泉にしようか。ツキも一緒に入る?」


「にゃ~」

嬉しそうな鳴き声に静も自然と笑顔になる。


「あ、そうだ。泊まってもらう部屋も用意しないと」


そうして静は、次々と必要な準備を整えていった。

客室を五つ。それぞれに寝具を用意し、清潔なタオルと寝間着を準備する。


◆◆◆


リビングへ戻ったセリナが皆に伝える。

「静さんがお風呂の準備ができたら、呼んでくださるそうです」


「お風呂!?」


アリアが思わず声を上げる。

「そんなものまであるの……?」


「また魔道具かしら?」

リーナは興味津々だ。


「すごいね! 本当に何でもあるんだ」

フィアは目を輝かせる。


「お風呂……とても甘美な響きですね」

ミレイアはうっとりと呟いた。

旅を続けていると、ゆっくりお風呂に入る機会は少ない。


その時、ふとミレイアが表情を変える。

「……今、何か感じなかった?」


「はい……神聖な気配のような……」

セリナも小さく頷く。


「魔道具とは違う魔力ね。でも、危険な感じはしない」

リーナが補足する。


そう話しているところへ、静がやって来た。

「皆さん、お風呂の準備ができましたよ。

 タオルなどは置いてありますので、ご自由に使ってください。

 設備の使い方は……セリナさん、お願いできますか?」


そうして一行は浴場へと案内される。


◆◆◆


浴場の扉が開いた瞬間、湯気と柔らかな香りが広がった。


「……広……」

アリアの声に皆が足を止める。


石造りの広い湯船に、澄んだ湯が満たされている。

天井は高く、窓からは月明かりが差し込んでいる。


「魔力の流れが……とても穏やかですね」

ミレイアが静かに言った。


「床、滑らないよ!」

フィアが楽しそうに跳ねる。


湯に浸かった瞬間、自然と息が抜けた。

「……温度が、ちょうどいい……疲れが溶けていく感じがするわね」

アリアも目を細める。


「肌……すべすべする」

リーナが驚いたように腕を撫でる。


「温泉……心にも作用しますね」

ミレイアの言葉に、皆が静かに頷いた。


笑い声が湯気の中に溶け

旅の疲れがゆっくりと癒されていく


◆◆◆


湯上がり後も驚きは続いた。


「この風……すぐ乾く……」

ドライヤーを使ったリーナが目を見開く


「髪、すごく柔らかくなってない?」

フィアがセリナの髪を見て言う。


セリナはそっと触れ、その感触に目を潤ませる。

こんなに柔らかい髪は初めての経験だった。


◆◆◆


その夜、屋敷の灯りはいつもより多く灯されていた。

まだ答えは出ていない。


けれど――

翌朝、甘い香りに包まれた朝食の席で

もう一度、大切な話が交わされることになる。


それは、祈りの行き先を決めるための、静かな約束だった。


世界は――また少しだけ、動き始めている。

静かに、だが確実に。


この出会いが、どんな未来を紡ぐのか。まだ誰も知らない。

だが、確かなことが一つある。


この場所は――もう、一人だけの場所ではない。


楽しそうな笑い声

そして祈りが満ちる場所へと

変わり始めている。

イメージソングを作成してみました。

もし興味を持って頂けましたら、曲を聴きながら読んでくれたら嬉しいです。

物語の方も順調に書き進めていますので宜しくお願い致します。

https://suno.com/@10monoshin8


カクコムでも先行掲載しています。

もし続きが気になって読んでいただける方が居たら下記のページでお願いします。

https://kakuyomu.jp/works/822139842423376578

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