59.従二位⑥
【人物】
藤原夏良 主人公 29歳。 10歳の時、高熱から前世の記憶がよびおこされる。 父親は桓武天皇。養父が藤原冬嗣。藤原北家。良岑安世の名をもらう。妻は雪、桜、京子。子は長松、宗貞、豊晨姫。
藤原房前 生没年:681-737 飛鳥時代から奈良時代前期にかけての貴族。藤原不比等を父とする藤原四兄弟の次男で藤原北家の祖。官位は正三位・参議。贈正一位・太政大臣。
816年 弘仁7年4月
太極殿にて、藤原夏良、大納言、中納言が全員呼ばれていた。
「藤原園人が、左大臣を辞したいと言うてきた。治療に専念しており政務ができない状態が続いている。このまま静養いただくのが一番良いと考えており、左大臣に良岑安世。従二位に昇格させ、藤原冬嗣が右大臣に。正三位に昇格させ、藤原緒嗣が内大臣に。以上昇格を発表する。色々な考えがあるだろう。ここで質問があれば答えることとするが、何かあるか?あ、そうそう。皆に言っておくと、良岑安世は自身の領地から取れる稲を毎年飢饉に苦しむ民へ配布してくれている。これを聞けば、若いのに異例の昇格に反対もないだろう。」
帝への提言などあるはずもなく、そのまま解散となった。
藤原夏良邸では宴が開かれた。
藤原北家と親しい者が集まっている。
藤原夏良はお酒を注ぎに周っている。
「良岑安世殿おめでとうございます」席にいたのは藤原葛野麻呂である、現在中納言兼民部卿である。(エピソード25-26参照)
「藤原葛野麻呂殿もお久しぶりです。民部省でのご活躍聞いております。」
「ありがとう。私なんかより良岑殿の活躍が一番じゃよ。藤原房前の玄孫とひ孫が揃って左大臣と右大臣だなんて、快挙じゃよ。隠居の藤原園人も喜んでおったわい」
「お会いしたのですか」
「一応、従祖父じゃからの、会わないわけにはいかなんだ。まあ、重責を退いたので顔艶は良かったぞい」
「それなら良かった」
少し離れた所に文室綿麻呂がいた。今は右衛門督である。
どぶろくを注ぎながら。「文官としてだと落ち着きませんか」
「記録する作業は、どうにも苦手です。50過ぎでも軍人は多く働いておるので、もっと現場に出たいと考えております」
さすがに元征夷大将軍である。現場に出たいところは坂上田村麻呂将軍も同じであった。
そこに、二口から従者が来て、樽を持ってきた。
「お祝いのところすみません、この樽だけどうも醗酵度合いが違うので見てもらうために持ってきました。」
栓を抜き、お椀に入れた。どぶろくに気泡がある。
『アルコール発酵か?』
飲むんだ顔が和らいだ。
「まじか。今日出来るとは。すごい奇跡だ」
樽の半分を甕に入れ、残りを従者に渡す。
「この酒を他の樽に入れてどんどん量産するように言ってくれ。そして、樽は必ず回収して、再度使うように言って欲しい」
「かしこまりました」従者は二口へ戻っていく。
半分分けた甕を藤原冬嗣の所に持って行き、お猪口に注いだ。
「飲んでみて欲しい」
「なんじゃこりゃ。すごい醗酵してるが、大丈夫なのかい?しかし甘くて美味しいな」
「ええ、これが酒の第一号です」
『完成まで長かった。金さんに送るかな』
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