60.従二位⑦
【人物】
藤原夏良 主人公 30歳。 10歳の時、高熱から前世の記憶がよびおこされる。 父親は桓武天皇。養父が藤原冬嗣。藤原北家。良岑安世の名をもらう。妻は雪子、桜、京子。子は長松、宗貞、豊晨姫。
817年 弘仁7年4月
渤海使として来ていた王孝廉、釈仁貞、王昇基が瘡病(天然痘)により死亡、副使・高景秀ら数名が帰国する準備に入っていた頃。
藤原冬嗣邸に藤原夏良が来ていた。
「父上にお願いの儀があってまいりました」酒を飲む冬嗣の前に跪く藤原夏良。
「なんなりと」難しい顔をした。
「1年ほど渤海経由で唐に渡りたいのです」
「大国を見てくるのも良いかもな。」最初は驚いていたが、納得した顔に変わった藤原冬嗣。
「義母も含めて四人の女性と子供だけになりますので、少し心配なのです。時々見に行っていただけないでしょうか」
「もちろんだ」笑顔を藤原冬嗣。
家に帰ると玄関に馬車に樽を積んだ陸奥からの荷が来ていた。
「お疲れ様。甘南備高継殿にお礼を」彦兵衛が対応して、従者へ言伝を頼んでいた。現在の陸奥介は甘南備高継氏が陣頭指揮を執っている。人望が厚い人物との事であるが、未だ会った事が無い。
家に入ると、雪子、桜、京子が出迎えた。子供達は寝たようである。
食堂に入り夕餉をとりながら「皆にお願いがある」藤原夏良が切り出した。
「渤海経由で唐に行き、金大明に会って来たいと思っている。衣のお礼と酒を持って行って一緒に飲みたい。と思っている」
「危険ではないですか」雪子が心配して言った。
「危険は大きいが、一度は行きたいと思っていたのです。兄も父もいますので、万が一の時には大丈夫かと。多くの助けがあるので、家の事は大丈夫です。」
「短くて1年と言うことですね」
「はい。その通りです。二、三年かかる可能性はあります」
女性全員が顔を見合わせたが、笑顔である。
「ちゃんと説明していただきありがとうございます。家の事は大丈夫です。心置きなく見識を広めるためにも見てきてください」桜が代表して話してくれた。雪子も京子も頷いている。
早朝、太極殿にて執務室前で帝を待つ藤原夏良。
「待たせたな」嵯峨天皇が寝殿より来て従者が開けた執務室へ入っていく。
「ありがとうございます」藤原夏良は深々とお辞儀をし、続いて入っていく。
「左大臣殿、何用かな」笑顔で冗談めかしに言う。
「大臣としても、臣下として渤海と唐へ行き、交流を深めてきたいと考えています。」
「国としてはありがたい申し出だが、命がけの旅に弟を送るのは許可できない」
「今回の船は、前回難破した船をさらに強固にして造ってありますので、ご安心ください。」
「必ず帰ってくるのだぞ」
「もちろんです」
翌早朝、太宰府へ向かう藤原夏良を見送る三人の女性。
「行ってきます」
馬にまたがる藤原夏良と、無理にでも着いていくと聞かない彦兵衛が、馬にくくり付けた荷物を確認し、後を追っていく。酒樽は先に送ったようだ。
下にスクロールしていくと、広告の下に評価を付ける【☆☆☆☆☆】ボタンがあります。
本文を読んで面白いと思われた方、続きが気になると思われた方は是非とも応援をお願いします
今後の作品作りのモチベーションにも繋がります!
感想も是非!




