46.従三位⑤
【人物】
藤原夏良 主人公 25歳。 10歳の時、高熱から前世の記憶がよびおこされる。 父親は桓武天皇。養父が藤原冬嗣。藤原北家。良岑安世よしみねのやすよの名をもらう。
藤原緒嗣 生没年 774-843 藤原式家、参議・藤原百川の長男。官位は正二位・左大臣、贈従一位。山本大臣と号す。(エピソード3・29参照)
811年 弘仁2年10月
二口から早馬が来た。
「藤原緒嗣殿が会いたいとのことです」
彦兵衛が寝室に書簡を持って来た。
「少し出かけて来ます」寝床で寝ている京子に話すが、寝ぼけているので気づかないかもしれない。
着替え終わり、裏の馬小屋で馬に乗り、出かける。
馬で5分ほど東に行くと二口である。
三重の塔を見上げる藤原緒嗣。
「お久しぶりです」藤原夏良が下馬して挨拶した。
「やはり貴殿でしたね」
「あ、存じ上げないで言伝を?」
「いえ、ここは貴殿に下賜された場所にて分かってはいたのだがね。諜報機関とは畏れいった」
「ここの場所をどうしてお知りに?」
「伝書鳩が多く集まる場所なので、何かと思って来たのだ」
なるほど、考えても見なかった。確かにこの時代に伝書鳩はまだ一般的ではないからな。使用頻度に気をつけるよう伝達しておこう。
「御用向きは?」1階に案内しながら歩いていく藤原夏良。
「ご助言を賜りたくてな。我が一族は今回の薬子の事件で大打撃を受けている。貴殿のお父上は私と同格に上がって来ておるというのに、私の存在価値はないかと思うてな、引退したいのだが、帝からは考え直すよう言われており、悩んでいるのだ」
「藤原家同士で相反してはおりますが、優秀な方を除外する事には帝とともに反対します。情報が必要ならばここをお使いください。今は観音寺として空海和尚の指導のもと密教修行の場ともなっておりますので、心穏やかになれるとも思います」
「貴殿までそのような事を」
「いえ、事実でございます。以前、桓武天皇から議論を持ちかけられたときにはきっぱりと正論をぶつけたではないですか。観察使制度も同じです。昨年に廃止されましたが、何らかの形で復活すべきです。このままだと、地方に力が蓄積されて地方貴族が分離してしまいます」
『貴方の頑張りが今後の日本の方向性を決めるのです。頑張って!』
「一度、空海和尚にも会われると良いです。何か見えてくるかもしれません」
「そうですね。居場所を確認して、手紙を出してから少し休暇を取って伺ってみます」
うまくいくといいな、高子妃に子供が生まれるし、少しづつ歴史が変わっている。
藤原緒嗣氏の奮闘で貴族への傾倒を切り替えられないかとも思っており、最大限の援助はしたいと思っているが、大々的に援助ができない悩みである。
蝦夷でのどぶろく造りに合わせ、一部稲を安価に仕入れている米問屋があるので裏金は現状潤沢である。
当然、嵯峨天皇と藤原冬嗣、坂上田村麻呂、藤原内麻呂には話してあるが、米換算で陸奥国5年分とは思っていないだろう。
まだ、お酒は神社が造るものと言う意識が高く、税金がかからないので今のうちである。
誰かが気付き、税金が課せられるまで稼ぐのである。
「稼いだ貨幣をどうするかだな。流通に回したいし。悩みどころだ」
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