戦意高揚の詩2
夏に書いていたのにすっかり秋
ゆっくりしていってね!と自分に言って図書館来たのだけれど、なんでわがままな少女に戦意が上がる言葉を聞かれてるのだろう。教室で自習してればよかった。魔法学の復習の方が今の状態より遥かに楽だ。こんな、「早くしろ」と言わんばかりの顔で見てくる少女の横で戦意が上がる言葉を書き出すよりは。
「早くしなさいよ、あなた軍人の卵でしょ?」
軍人の卵だからと言って文が上手く書けるわけない。何かをしてこの空気を紛らわせたい……そうだ、この少女の名前を聞いてなかった。聞いてみるか。渡された綺麗な万年筆を机に置いて、少女の方を見る。相変わらず不機嫌そうな顔をしていた。
「そういえば、名前を聞いていませんでしたね。よければ教えてくださいませんか?」
「あぁ、そうね。私は……銀竹 夏目よ。名乗ったわよ。覚えないけど貴女の名前、教えてもらおうかしら」
「2年雲ケ畑 栄です」
お互いの名前を教えると、私はまた紙に目を落とした。そういえば、歴史の資料集には大昔の戦時中のスローガンが載っていたような……資料集は教室か、夏目という少女に説明して取りに行くか。雨が降っているが、まぁ真面目に考えていることをアピールできるからいいか。私は、資料集に戦意が上がりそうな言葉が載っていた記憶があることを少女に伝えてみた。少女は、不機嫌そうな顔のまま「私も行くわ」と言い出した。何故、ついてくる必要があるのだろう。理解ができない、付き添いの人たちも困ってるだろ。だが、この銀竹はなんだか言いづらい。仕方ない、軍人の卵たる者、優しく紳士的にエスコートするしかないか……そう決意をして、付き添いに「私が必ずやお守りいたしますので」と優しく微笑み言う。すると、心配げに私達を見つめながらも納得してくれたようだ。この空間からは脱出できたからいいが、何故この少女はついてきているんだ。意味が分からない……まぁ、私は私の仕事をこなすだけだ。頑張れ自分! そう自分を応援しながら傘を広げる、少女も可愛らしい傘を広げ私のあとをてこてことついてくる。この図書館から私の教室がある校舎までは5分ぐらいか近くてよかった。雨の中、コンクリートで舗装された道を歩く。外に出ている生徒はいなく、窓からは生徒が楽しそうに話しているのが見えた。まぁ、図書館までいくバカはいないか。最近は電子書籍ばかりだな、紙の本も味があっていいと思うんだが……紙をめくる時のあの感覚、さらさらざらざらした紙を触るのは心地がいい。そんなことを考えていると、昇降口につく。靴を履き替え、少女用にスリッパを用意する。濡れた傘はまるめて傘立てへ入れる、私の教室は3階なので階段で行くことにする。階段に向かうと少女が露骨に嫌な顔をしたのは気のせいだろう。
私の教室につくと、少女は入口で待たせてロッカーの中に資料集があるか探す。最近は、あんまり使ってなかったからあるかもうろ覚えだったが……がさごそとロッカーの中をあさる。すると奥の方から資料集を見つけ、それを引きずり出す。ロッカーを閉め、少女の元へ行くとなぜか二人の上級生に絡まれていた。どうしてこうなった……。