第二話 働く場所とロリコン
「それでどうしますかサジさん。」
「どう・・・とは?」
「ΕΣΤΙΑ様がこの町に行けと仰ったからには何かこの町でしてもらいたい事があるのでしょう。我々イーリスの町民はあなたの滞在を歓迎します。ですが・・・。」
ですがでちょっと言い難そうにしたというのはやはり仕事についてだろうな・・・。
今は異世界で右も左もわからない状況だが、元々は社会の一部として仕事をし、生活していたのだ。
社会というのはなんらかの仕事をしなければ生活できない。
まぁ仕事せずに暮らしているような人も居るらしいが、そんなもの生活保障などがしっかりしていた元の世界だけだろう。
この世界でそれを求めるのは間違っているし、俺はそれを良しと思わない。
働けるなら働いた方がよい。
だが・・・果たしてただの事務員に過ぎずたまの休みにちょっと体を動かす程度な俺にこの世界の仕事が務まるだろうか?
自慢ではないが顧客の一人に農家の人が居てその手伝いした時、腰を痛め数日寝込んだほどだ。
はたして俺にこの世界の仕事が務まるだろうか・・・?
「えぇ、わかっています。仕事をしなければ生活ができない。働かざるもの食うべからずと私の世界では言いますからね。」
「申し訳ない。本来であれば神の使いを働かせるべきではないでしょうが、この町にはそこまでの余裕が無いのです。」
その後、色々この町の話しを聞くがどれも専門的な知識か技術が必要で、異世界から来たような人には任せられないというのがわかった。
それになによりジョブというものが大きく左右されやすいとの事だ。
恐るべし異世界。
腰が不安だが農家でもしようかと思ったら畑をするにも植物系の魔物を生えないようにする技術かスキルが必要とは・・・。
しかし困ったな、この世界の知識も技術も無い状態、さらにジョブというのもわからない状況ですぐ出来る職業がないとは・・・。
「だったらミミー達の先生したらいいよ!」
「そうです!それがありました!」
エドワードさんと悩んでいたらミミーが気楽に提案してきたのをエドワードさんがそのまま採用した。
だがちょっと待ってほしい。
先生とはこの世界の知識がないと出来なくないか?
先ほど地図を見せてもらったが私の知っている言語で書かれていなかった。
文字すらわからない人にそんな仕事勤まるとは思わないのだが・・・?
「大丈夫です。先生と言ってもこの子達、孤児院で面倒をみる事ですから。そこなら他にも人はおりますし、この子達の勉強に混じってこの世界の事を知ることが出来ますよ。」
子供と一緒に勉強か・・・。
恥ずかしいとか言ってられないな。
それに他に人が居るなら専門的な知識などはその人達から教わりつつ馴染んでいくのがいい。
さすがに農業や狩りなど出来る気がしないからな、子供達の面倒を見るならその方がまだ気楽だ。
ただその子供達もやはり魔族なのだろうか?
「ミミーやエドワードさんがそういうのであればこちらとしては異論はありませんが・・・。やはりその子達も魔族で?」
「えぇ。魔族というのは基本的に己を一番にしか考えません。一応群れで行動しますが、親の居なくなった子供を育てる者は例え血縁であってもそうそう居ません。我々はそういう捨てられてしまった子達を孤児院で育てているのです。」
たとえ血縁でも居ない。
寂しい話ではあるが弱肉強食な野生に近いのかもしれない。
だからと言って、それを容認したいとは思わない。
きっと共存を望んでいる彼らもだろう。
だからこそ孤児院を作ってそこにそういう子供達を集めたのだろう。
「わかりました。私に何が出来るかわかりませんが、精一杯その役目を果たしましょう。」
「助かります。先代の方が高齢の為亡くなっておりまして、次の方を探していた所なのですよ。」
「ホロおじーちゃんは優しかったけど・・・死んじゃうのはしょうがないよね。」
ホロおじーちゃんというのが先代の方なのだろう。
魔族と種族の寿命がどうなのかわからないが、俺に勤まるか不安ではある。
しかし、引き受けた以上責任を持って仕事をしなくては。
「それでは町の人にあなたを紹介しないといけませんね。夕方、集会を開きますのでそれまで我が家でごゆっくりしていてください。」
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます。」
「えへへ。」
「ミミーは一度孤児院に帰りなさい。結構遅くなってしまったからみんな心配して・・・」
「すいませんエドさん!ミミーがまだ孤児院に帰っていないんです!」
突如ものすごくあわてた様子で一人の女性が入ってきた。
思いっきり美女、けれどその頭にはヤギのような角。
蝙蝠の様な翼に、尻尾。
うん。やっぱこの人も人間じゃないな、きっと悪魔とかそういう類だろう。
けれど大丈夫です突然入ってきた人。
ミミーなら俺の膝の上で三個目の飴玉を舐め始めたところです。
「大丈夫ですよカロッソ。あぁサジさん。こちらカロッソ・コール、孤児院で働く内の一人です。孤児院だけでなくこの町の治療師でもあります。カロッソ、こちらイナリヤマ・サジさん。新しい孤児院の院長だ。」
「今紹介に預かった稲荷山佐治だ。よろしくカロッソさん。」
「・・・しい!うらやましい!!ミミーちゃんを膝に乗せれるなんてなんてうらやましい!!私は一度もそんなことされた事なんてなかったのに!!なんてうらやましい!!!」
突然何言い出したんだこの人?
頭大丈夫だろうか?
色々とやばいのじゃないだろうか?
ミミーもちょっと怯えているし本当にこの人も孤児院の先生なのだろうか?
「あの・・・。」
「あぁ、すいませんねサジさん。カロッソはなんというかその・・・子供好きでして・・・。」
目を逸らしながら言ったよこの人!?何?そういう意味で好きな人?ロリコンさん?
だんだんこっちというかミミーを見る目がやばくなってきたし。
ミミーの怯えっぷりが酷いんですが・・・。
本当に大丈夫なのかこの人・・・?
「さぁ!ミミーちゃん私のひざにさぁ!さぁ!!」
「や!サジの膝がいい!!カロッソさん怖い!!」
あっ、心が折れる音が聞こえた。
ポキとかいう軽い音じゃなく、もっとえぐいなんというかこうグチャって感じの生々しい音が。
床に膝着いて真っ白になっているが本当に大丈夫なのかこの人?
さらさらと体が崩れているような幻覚が見えるんだが?
「えっと・・・エドワードさん。」
「あはははは・・・。まぁ大丈夫ですよ、大体いつもの事なので。それよりかロッソがこの状態なので妻にミミーを送らせましょう。ミミーもこれ以上はサジさんの迷惑になるし、孤児院のみんなが心配する。聞き分けてくれるかい?」
「サジ・・・。ミミーの事迷惑?」
エドワードさんに迷惑になると言われてかなりショックを受けたみたいだな。
なんでここまで俺を好いてくれているのか全く理解ができないが、好意を向けられ、迷惑になるかもしれないと思っている子を無下には出来ない。
きちんと理解してもらい、孤児院に一度帰ってもらおう。
「大丈夫ミミーの事は迷惑とは思っていないよ。けどカロッソさんみたいに孤児院の皆が心配するといけない。だから一度孤児院に戻って皆を安心させて欲しい。それに孤児院に俺の事を知らせておいてくれるかな?」
「・・・わかった!ちゃんとみんなに知らせるね!」
良い笑顔になったミミーは俺の膝から飛び降り、エドワードさんの妻、リューシカさんの手を取って孤児院へと向かっていった。
それをエドワードさんと見送った後、色々と疑問に思っていた事を聞くことにした。