二十五話 面接
ソラたち三人が学校から指定された場所まで歩いていくと、そこにはすでにソラたちよりも先に来ていた受験者達が受付をしていた。
自分たちも早く受付をしようとソラたちは列に並ぶ、周りを見るとそこは学校の中心で、噴水や石像がある、そしてその中心の近くに横長の机が設置されておりそこに学校の者であろう先生たちが受付を手伝っている。
「じゃあいこっか」
ソラがアリスとミレイに声をかけ歩き始める
ミレイは周りにいる人の数に少し戸惑っているがアリスはいつもどおりだった、ソラはなんとなく貴族同士の問題とかで人が集まっているところに行くのが慣れているのだろうと予想がついた。
ソラたちは後ろから受付をする人の様子をうかがっているとなにやら水晶のようなものに手を当てているのが見えた。
(なんだろう、あれ…水晶?)
ソラは水晶の正体を考えたが、結局わからずそのままじぶんの番がやってきた。
「はい、ではこの水晶に手を当ててください」
机に座っている男の人にそう言われ、ソラは言われたとおりに水晶に触る
すると水晶が光り始め、五秒ほどで元に戻り男の前にステータスが現れた
困惑しているソラに気づいた男の人が謝りながら話しかけてくる
「あ、ごめんごめん、説明してなかったね、この水晶に触ると触った人のステータスが見れるんだ」
「なんでそんなことを?」
ソラが疑問に思ったことを尋ねる、エリイに聞いた話ではこのあとに面接があり、その時に使える魔法を披露するらしい、ソラはてっきりその時に魔法が二つ以上使えるかどうか見るものだと思っていたのだ。
すると男は苦笑いしながらソラの頭に手を置く。
「たまに魔法を使えないのに周りにまぎれて受付を済ませようとする人がいてね、それだと面接とかで無駄な時間が増えるからあらかじめ確認しておくんだよ、あとついでに受付のときにステータスに項目を増やすってのも理由のひとつだよ」
なるほどとソラは理解し、新しい項目とはなんだろうと不思議に思うと同時に自分は大丈夫だろうかと心配したソラが自分のステータスを確認している男を見る。
「どれどれ……ッ!!」
すると男は目を見開き、驚いたような表情をする
そしてステータスから目を離し、再びソラを見る、どうしたのだろうかとソラは心配し、男に尋ねる。
「えっと…どうしたんですか?」
「…君、このステータスにのっていることは本当かい?」
ソラは何のことを言っているのかわからず自分のステータスを男の人から見せてもらう。
名前:ソラ(7番)
種族:人間
年齢:8歳
体力:D 筋力:F 覚醒:B
魔力:D 精神:C
[装備]
『服』『ナイフ×3』
[魔法属性]
【火属性】【風属性】【氷属性】
[魔法]
【フレイムボール】【ファイアーボール】【エアシールド】【エアカッター】【身体強化】【アイスソード】【アイスシールド】【アイスボール】
[称号]
【7番の少年】【目覚めた悪魔】
「…え?」
ソラは久しぶりに自分のステータスを見て驚いた、ステータスの項目で「魔法属性」というものが増えていたのだ、たしかにこれなら一瞬でなんの魔法に適正があるかというのがわかる、そして自分の適正属性のひとつで氷属性というものがあることにソラは驚いたのだ。
「…もしかして、君、ソラ君かい?」
ソラは自分のことを知っているのかと男を見上げる
「…僕はソラですけど」
「そ、それってあの、野原で魔物が出たときに活躍したあのソラ君!?」
どのソラかはわからないが野原で魔物と戦ったソラというのは自分以外いないと思うのでソラは小さく頷く。
「やっぱり!…それに今のとこ一人しか使えない氷属性…間違いない!」
そういい男はソラの手を引き面接の部屋へと歩いていく。
「えっと…どうしたんですか?」
「ああ、面接担当のものからソラ君がきたらすぐにつれてきてくれって言われてるんだよ」
学校のものにまで自分の存在が知れていることにソラは驚き、そしてこのままではアリスとミレイに何もいわずに別れてしまうことに気づき、男の人に少し待ってもらうようにいい、二人のところまで歩いていく。
「ごめんアリス、ミレイ、なんだか呼ばれてるみたいだから先に行くね、横入りみたいで気が進まないけど…」
ソラの少し申し訳なさそうな声にミレイが元気付けようとソラに声をかける
「だ、大丈夫ですよ!私たちもすぐに行きますから!」
するとミレイの言葉に重ねるようにアリスもソラに声をかける
「ええ、それに私は貴族だから別室での面接だからソラとおんなじくらいはやいわよ」
アリスの言葉にやっぱりこういうところではしっかりと区別されるんだなと思うソラ、そしてその話が本当だと遅れるのは結果的にミレイ一人になる
「…ふぇ、だ、大丈夫です!」
そんな様子のミレイにソラは苦笑いしながら男の下へと戻っていく
しばらく男のあとをついていくと学校に入り、面接室であろう場所につく
その部屋の前では5人ほどソラと同い年の子供がいすに座りながらまっている、なかには緊張してぶつぶつとなにやら呟いている者もいる、男のいうとおりにソラはの一番端っこのいすに座る。
「じゃあここで自分の名前が呼ばれるまでまっててね」
そういい男は去っていった、呼ばれるまでは退屈かなとソラは思ったが横を見ると緊張してか汗を流しながらぶつぶつとなにいかを呟いている少年がいた。
「…大丈夫?」
ソラは心配になり声をかけると、少年はゆっくりとこちらを向きソラの顔を確かめる。
「だ、大丈夫に決まってるだろう、お、俺を誰だと思ってやがる」
「…説得力ないね」
震えながらいわれても説得力が皆無だとソラは思うが、これは同性の友達を作るチャンスではないのかとソラは気がつく。
「ちょっといい?」
ソラは隣の男に声をかける
「…なんだ?」
―――ぶす
ソラのあらかじめ用意されていた人差し指が少年の頬にささる
「いやなにすんだよ!」
ソラは微笑みながら手を離す
「楽しいよ?」
「俺は楽しくねえよ!?」
「でも落ち着いたでしょ?」
「……あ」
ソラのいきなりの行動に驚くとともに緊張もなくなっていることに気づいた少年は嬉しそうにソラの手をつかむ
「おお、たすかったぜ!ありがとう!俺ゼット、ゼット・アグソルトだ、よろしくな!」
「僕はソラ、ただのソラだよ、よろしく」
そういいソラはゼットの差し出された手を握り、握手を交わす
『ゼット君、どうぞ』
部屋の中からゼットを呼ぶ声が聞こえる、どうやら気づかない間に順番が回ってきたようだ。
「じゃあがんばってきてね」
応援の気持ちをこめて送り出すソラにゼットは笑顔を浮かべながら
「おう!」と元気な声を上げる。
ゼットが中に入ってしばらくたつと部屋の中からゼットが出てくる、その顔は満足げだった。
「うまくいった?」
ソラが質問するとゼットは息を吐き、ある程度落ち着いてから顔に笑顔が戻り、ソラに近づいていく。
「ああ!なんとかなったぜ!じゃあソラ、お前もがんばれよ!」
そういいゼットは嬉しそうに外に歩いていった、ソラは横のゼットが終わったから次は自分かなと思ったがそうじゃなかった。
ソラを一歩またいだところに座っている子供が呼ばれたのだ、どうやらいすに座っている順番ではないらしい。
そして最後になり、ソラが呼ばれる
『ソラ君、どうぞ』
―――ガチャ
扉を開け、中に入るとそこには椅子がひとつ置かれており、その前には横長の机がありそこのいすに座っている先生らしき人が三人いた。
ソラは静かに扉を閉め、いすに座る。
「はい、じゃあこれから面接をはじめていきたいと思っているけど…君が例の野原の魔物を全滅させたっていうソラ君?」
ソラは苦笑して首を横に振る
なんとなく予想はついていた、が、野原の魔物をつれていたリーダー格を倒したのはソラではない、いや、だれもいないのだ。
ソラが気絶した後、騎士達がやってきて魔物を倒したのだが、リーダー格のものはすでにいなかったのだという。
「魔物を倒したのは事実ですがそれを指揮していたリーダー格はたおしていません」
ソラの言葉に先生たち三人は驚いたように目を見開く
「いや、十分だろう、そもそも君の年で魔物と戦うのが早すぎるくらいなんだから」
そう、ソラの年であれだけの魔物を倒したのは十分過ぎる結果である、学校側としてもその話を聞きそこまで優秀な生徒はぜひとも入ってもらいたいと思い、ソラを先に呼んだのだ。
真ん中の先生が話し終わるとその隣にいる女性の先生が話しかけてくる
「ちょっといいかしら?氷属性の魔法が使えるって本当?」
女性の言葉に残りの二人の先生は目を見開きソラを見る
「使えますけど…」
「それって誰かに教えてもらったの?それとも自分でつくったの?」
女性の言うことにソラは考え、この魔法を教えてくれた人の名前を口にする
「僕にこの魔法を教えてくれたのはシュリエ・アルシードという人です」
「「「……なんだって!?」」」
先生たち三人は同時にすごい勢いで立ち上がる
そんな様子を見たソラは
(…あの人、やっぱりすごい人なんだなぁ)
と、気の抜けたことを考えていた




