二十三話 ハイエルフ
ソラは意識が朦朧とする中倒れている
そして意識が薄れていく中、頭の中で声が聞こえる
『…やぁ、久しぶりだね僕』
(……君は…)
ソラは考えることもできず、口に出すこともできずに心の中でそう思う、だが相手はソラの思考がよめるのか笑いながら答える。
『ふふっ流石の君でもその様子じゃあ限界みたいだね、君は僕に会うのは二年ぶりかもしれないけど僕はずっと君を見ていたよ、いったでしょ?僕は君、君は僕だ』
(…君は…二年前の)
『思い出したかい?実は今回は君が大変そうだからヒントをあげようとおもってね』
(ヒント?…どうせろくなことじゃないんでしょ…)
ソラの返した答えに相手は笑う、とても楽しそうに
『まあまあ聞きなよ、君はアリスとミレイを死なせてもいいのかい?』
アリスとミテイという名前に反応してソラの動かない右手がピクリと動く
(…方法があるの?)
『あるよ…憎しみだよ、相手を憎むんだ、君の力は憎しみで強くなる』
相手の言葉を聞きソラは思う
(…憎しみ…強くなる…アリスとミレイを守れる?)
ソラの思考を読み相手はたのしそうに声が大きくなる
『ああ、そうだよ!憎しみだ!大切な人を守りたいんでしょ?じゃあ強くなくちゃ、邪魔なものを殺さなきゃ』
(…憎しみ…守らなきゃ…うっ…だめだ)
最後の最後でソラの心が憎しみを否定しようとする、だが相手の声は言葉をやめない。
『…残念だけど、もうおそいよ』
そう声が聞こえた瞬間にソラの心の中で感情が爆発する
(うぅぅ…アリス、ミレイ…いやだ…いやだっ)
ソラは想像する、もしアリスとミレイが死んでしまったらどうしようと
それだけはいやだとソラは考える、それは二人だけに限らずエリイやダッグも同じだ。
(…アリスやミレイ…エリイ姉さん…ダッグさんには…幸せになってもらわないと…)
ソラは思考する、死なせてたまるものかと、もうこれ以上大切な人を死なせてたまるものかと。
ソラは思考する
(…もう嫌だ、大切な人が死ぬのは嫌だ…寂しい、悲しい、虚しい…死なせたくない、もういやだ、誰のせい…誰のせいでこんなことに………魔物…
魔物がいなければ…この周りのやつらがいなければ…殺す、殺す…大丈夫だ、殺すのは慣れている、僕が何とかすればいいんだ…殺さないと…殺す)
ソラの心の中で憎しみの感情と怒りの感情が爆発する
地面に倒れていたソラは俯きながらすっと立ち上がる
先ほどまで倒れていたソラが急に立ち上がり、ハイゴブリンだけでなくアリスとミレイも驚いていた。
「……はぁぁぁ」
ソラの体を黒いもやが覆っていく、黒いもやはソラの左肩だけでなく右肩から右手にかけても覆っていく、そしてソラはからだのほとんどを黒いもやに包まれ、背中からは黒い翼が生えている悪魔のようにも見える。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
ソラは狂ったように黒いもやをまといながら走る
「グギャ!?」
――――ザシュッ
―――ブシャァアア
ソラの黒いもやにより、魔物が虐殺されていく
ゴブリンとウルフが牙をむき出しながらソラに向かって走っていく
「グルァアアアアアッ」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
だがゴブリンとウルフがソラに近づく前にソラの黒い二つの翼により切り裂かれる。
しばらくの間ソラが暴れて、魔物が少なくなってきたとき
「もうやめてっソラ!」
「いつものソラ君にもどってください!!」
と、二人の少女によって腕をつかまれる
ソラはそれを振り払おうとして、動きをやめる
「…アリス、ミレイ?」
ソラの口から人間らしい言葉が発せられると二人は涙を流しながらソラに抱きつく。
「…よがっだよぉぉおおおおっソラぁああああ!!」
「ありがどうでずぅううう」
ソラは二人を支えながらこちらに近づいてくる足音に気づく、そちらを向くと武装した騎士がこちらにむかってくるのがわかる。
ソラは助かったのだとわかるとそのまま気絶してしまう。
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ソラは今、いつものように魔法の練習をするため森に向かっている
野原での魔物の騒動がおき、ソラが目を覚ましたのはそれから2日後のことだった、体に異常はなく、傷も治っていたので無理を言ってソラは早めに退院した。
毎度のことながらエリイが長い間ソラに付きまとうようについてきていたが最近になり落ち着いてきた。
ソラは森に着くといつもの様に魔法を放とうと…
「…はぁぁあああ!……ん?」
してやめた、なにやら目の前に小さな人のようなものが転がっていたからだ
ソラはそれに気づき、歩いていく
「…えっと…大丈夫?」
『…にんげん?…みず、水をください』
のどが渇いてるらしいのでソラは休憩のときに飲もうと持ってきていた水を渡す。
『ゴクゴク…プハァッ…生き返りました!』
小さな人は顔を輝かせ、本当に生き返ったかのような笑顔でソラに礼を言う
するとその後ろから人の足音が聞こえる
「…どこにいったのでしょう…あ、やっとみつけました、ほら、帰りますよ」
『かえるの!にんげん、ありがとうなの!』
でてきたのは金髪で髪の長いきれいな女性だった
すると女性はソラの存在に気づき、状況を理解したのか微笑みながらソラに歩み寄っていく。
「あなたが精霊を助けてくれたのですね?ありがとうございます」
「え?精霊?…それってこの小さな女の子?」
「はい、あ、申し送れました、私はシュリエ・アルシード、ハイエルフです」
「…ハイエルフ?」
ソラは自分の頭の中でハイエルフについて知っている情報を探す
ハイエルフ、エルフの頂点に君臨するもの
ほかのエルフよりも膨大な魔力を所持している
エルフの国の王
「え!?ハイエルフ!?」
ハイエルフと聞き、どれだけ凄い存在なのか理解するとソラは驚きの声を上げる。
ソラの様子にシュリエは微笑みながらソラの頭をなでる
「ふふっ理解ができるということは賢いのですね?」
シュリエは微笑みながらソラに話しかける
「私の精霊がお世話になったみたいですね、何かお礼がしたいのですが…」
ハイエルフの言葉にソラは慌てて手を振る
「い、いいですよ、そんな、水をあげたくらいで」
ソラとしてはこれくらいのことでエルフの王から御礼を受けるのはだめだろうと考えているのだがシュリエは微笑を絶やさない。
「ふふっ貴方がよくても私がだめなんです…そうですね…水をくれたんですから…そうだ」
「?」
シュリエは何かを思いついたような顔をするとソラの後ろに回りソラの手を持つ、突然のシュリエの行動にソラは驚き、声を出すことができない。
「いいですか?あなたは水の魔法を使っていませんが適正はあります、それに…風の魔法をつかえますよね?」
「え?は、はい」
シュリエの問いに戸惑いながらも答えるソラ
「それでは…魔力をこめてください…いきますよ?…水を想像して、それに風を当てるのです…ゆっくりと集中して…いまですっ」
「は、はいっ…はぁあ!!」
ソラが手から魔法を放つと出てきたのは風の魔法でも水の魔法でもなく、氷の塊がでてきた。
「こ、これは?」
意味がわからないと戸惑っているソラはシュリエに聞く
「それは氷です…まさか本当にできるとは…ささやかですが今回のお礼です、それでは私はこれで」
「あ、ちょ、ちょっとまってください!」
だがソラの言葉を聞かずにシュリエは精霊と一緒に森の奥へ消えて言ってしまった。
一人になったソラは自分の右手を見る
「…氷属性の魔法…ありがとう、シュリエさん」
誰にも聞こえることのない小さな声がソラの口からもれた
だがソラは同時にあることを考える
「氷属性の魔法…空、飛べないじゃん…はぁ」
氷属性の魔法はいまだ発見されていない魔法なのだがソラはその重要性にきづいていない、ハイエルフのシュリエもまさか本当にできるとは思っても見なかったことだ。




