第一章 四話
「見よ孫よ!すごいぞー!、なるほどなるほど…20メートルほどかの、耐久力、魔力伝導率も格段に上がっとる、しなやかで柔軟、ならばひねり動かせば…。魔力伝導率も高いのならば属性魔結石はどうじゃ?、雷……、じゃな…、魔物を痺れさせれれば…」
感触を確かめながらブツブツと魔力を流したりと考察しはじめていた、ティアはというと、選ばせるために大量に出していた至宝の槍や剣などの武具を一つ一つ手に取って拾い、ズルズルと空間の中に仕舞っていく。
出したものは勝手に仕舞われる、なんて便利なことにはならないようだ。
仕舞い終わり空間を閉じって瓦礫の上にぺたんと座ってオルドを観察するように足ももにひじを置いて頬杖をついて目を向ける。
その時。
カタ。カタ。
大広間への通路奥から、足音がした。
「む?、この音、獣の足音のような爪が石床に当たるこの音。もしやついに魔物か!?!!」
嬉しそうに口角を上げて、体の周りに木の棒を回転させながら低く左足を前に出し伸ばしてひゃがみ構える、まるで相手の攻撃を考慮しない態勢、ただただ逃がさない、捕まえ捕らえてやる、観察のために突進してやるという意思がそのまま体で表現するように。
ティアは静かに足音のする方向をダルそうに見るだけ、手伝う気はさらさらないのだろう。
そこに現れたのは。
ウサギだった。
白っぽい茶色の毛並みをした、小さなまん丸の獣。長い耳を揺らしながら、何事にも興味がないような顔でそこにいる。
無表情。
ウサギを飼っている者ならわかるだろう、飼っていないものは今すぐショップに行って見てきてほしい、無だ、まん丸の態勢のままジッとして、動くのは音を聴き取るための耳、そしてたまにモコモコと動く頬と三角の口。
「なんじゃあれは、見たことがない、まさか!とうとう、ついに新種か!、人食いバニーでもアルミラージでもないぞ!、頼む、触らせておくれーーーー!!!」
現れたウサギに向かって跳ぶオルド、無で逃げようとしないウサギ、座ったまま眺めながらあくびをするだけのティア、大広間は今こういう状況になっている。
ズゴン。
「ギャフン!」
ウサギは飛び上がり回転、そしてオルドは蹴られ吹っ飛んだ、華麗な一撃、放物線を描いて地面を三バウンドして転がり回る、着地したウサギはなんか誇らしそうだった。
「こんのやってくれたのー!!よかろう、なでてモフって調べてきゅいきゅい泣かせてやーるわーい!」
起き上がり鼻息が荒い、まだ諦めない。
「これならばどうじゃ!簡略詠唱、大地は器、岩は檻、揺らぐ命を包み閉ざせ!第四環位、アース・チェイン!!《地鎖牢》」
大地が盛り上がり、ウサギを囲んで檻のように形作り、それと同時に足元から岩の鎖が何本も伸び、拘束しようと動く。
ダン!
スタンピング足ダンをしたウサギの足元が光る。
ウサギを中心に魔法陣が展開されていく、本来魔物は威力、効力が下がるが無詠唱が基本の第一環位魔術を使う、それは言葉をつかえない魔物が唯一共通して使える魔術だから、もちろん第一環位より上位の魔法も個体次第では無詠唱で使える。
だが例外があり、それが魔法陣なのだ。
魔法陣とは、古代に使われた技法であり、よく古代魔法などで言葉をつかえる人間でも今も使われることはある、なぜなら古代語は解読はするが詠唱に使おうとする者はいない、いるとしてもエンシェントエルフなど太古から生き続けている者たちだけだろう。
言葉が魔法陣から簡略された術式なら、魔法陣は術式を保存して拡張する触媒なのだ、両方使えばいいと研究もされたが、それはラップに包んだ食べ物をさらにタッパーに入れるようなもの、汁物漏れのように魔力漏れは削減できるだろうがあまり意味がない、ちゃんと工夫なりしてラップを包めばいいのだから。
詠唱と魔法陣を同時になんて魔力の無駄を戦闘中になおさらやることではない。
「な!?魔法陣の展開じゃとぉお!?」
「古代魔法よ。たぶん。」
「なんじゃと!?、な!?、ぬおおおおおおおおおおおおお!?」
石床から四つの芽が生え、メキメキメキと成長して岩の鎖を跳ね除けていき、囲んでいた檻を押し退け壊して大広間全体まで大樹が成長して、オルドの体にグルグルと巻き付いて逆に拘束してい、出ているのは頭と足先だけ。
「こりゃ参ったわい、ん?」
ウサギが跳ね歩いて、オルドの足元に寄って匂いを嗅ぐように鼻先を近づけた後、丸まり固まって無になり、足ダンスタンピングしてからティアの元まで跳ね歩いていく。
「ブゥ」
「なるほど、きゅいきゅいではなくブーと鳴くのか、それに古代魔法らしきものを使用と、多少ではあるが大全に書き記す情報は取れたからの、今日のところは勘弁してやるわい」
うんうんと一人で納得していた。
そのころウサギは、座ったままのティアの膝に跳び乗って正面を向いてから、丸まり固まった、無、それでも明らかにオルドの時の態度とは全く違って大人しい、それにティアも当然のように撫でている、その様子は顔見知りで慣れているような自然さ。
「ぬ?、孫よ、その凶暴ウサギやけにおヌシに警戒心もなくなついておるのかの」
「初めましてじゃないもの。」
「そうなのか?」
「ええ。私が結晶の中で寝てた頃よ。時々意識の中にこの子が入ってきたの。」
「ほう意識に入り込んできたとな」
「ええ。最初は美味しそうで食べようと追いかけてたわ。でも齧っても食べられなかったの。まあ精神ではなく意識なのだから夢みたいなものだもの。当然よね。」
「流石は孫!、ワイルドじゃ!」
「そう。そしてそのうちに食べることはあきらめて。時間を過ごして仲良くなったのよね。」
「むん!!!!!」
ムキ!
バキバキバキ
「あなた。どういう体してるのかしら。私分からないわ。それ、ふつう壊せるはず無いのだけれど。」
「孫よ、知りたいかの?、知りたいじゃろ?」
「ええ。」
「それは、このフンドシじゃ!!」
「聞いて損したわ。」
「わっはっはっはっはっは!、孫よ、そのクソウサギをそのまま撫でておくのじゃ」
「?」
オルドの目線の先、ティアになでられて耳をたたみ、動いていた鼻が動いていない、完全に警戒心を解いていると観察して感じ取り、そろりそろりとゆっくり近づいてしゃがみ込む。
「こやつ、本当に不思議じゃの」
「ふしぎ?。」
「うむ、そもそもこやつは魔物でないのは確定的じゃ、瘴気はないし嫌な匂いもせん、それにワシを殺そうとしておらん、普通魔物は人を殺すのが習性みたいなものじゃ」
そっと触れ、匂いを嗅ぎ、そして鑑定魔法をかける。
「ふむ、ほとんど読み取れん、魔法を使えるということはただの獣でもないしのー、孫はこ奴が何か知っておるか?」
「知らないわ。」
「よし!こ奴もワシの研究小屋に連れて行って観察しよう!!」
「まって。も、ってまさか。」
「今さらなーに言うとる、当たりまえじゃろ、孫なんじゃから」
もう当たり前だろ、という顔でさも当然のように言い放った、彼の勝手さはこの世界で一、二を争うことだろう、孫にすると決めたのだから一緒に帰るのは当たり前。
「それに帰るところは無いのじゃろ?ならいいじゃろうて、研究小屋の跡取りはもういるが遺産の用意はあるぞよ!!」
「要らないわよそんな物。私を勝手に遺産目当ての女狐みたいな言い方しないで欲しいわ。心外だもの。」
オルドは聞いてない、膝に乗っているウサギごと抱き上げるように、ティアの膝裏と背中にオルドは腕を入り込ませようとする。
「ふふ。私にあなたは触れないわ。」
ひょい
ティアは宙に浮いていた、あっけなく、ウサギを腹の位置に乗せた状態で抱き上げられていた。
「へ?。うそ…」
「よし!!!帰るぞよ!!!!」




