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とらいあんぐる  作者: おーろら


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5/16

手のひらはあたたかい


~side:楓~


信号が赤に変わり

男の人の後ろ姿がゆっくり遠ざかっていく


ヒカリは

ペンギンのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめながら

「バイバイ!」

と何度も嬉しそうに手を振っていた


私たちは

見えなくなるまで、ずっと後ろ姿を見つめていた



「、、、帰ろっか、ヒカリ」

「うん!」

沈んだ私の声とは対照的に

ヒカリの返事は弾むように明るい

涙を流すことなく笑顔になったことがとても嬉しかった


ヒカリと手をつなぎ家に向かって歩き出した

短い歩幅に合わせながら

ゆっくりと歩く

左手から伝わる温かさが胸を温かくする



さっきの出来事を思い返そうとするのに

感情が追いつかない


驚き、戸惑い、悲しさ、恥ずかしさ

そして、嬉しさ、、、


胸の中で全部が絡まって

ほどけないままぐちゃぐちゃになっていた



「ぺんぺーん♪ およぐよー♪ ぺんぎんさーん♪」

ご機嫌に歌うヒカリ

こんなに楽しそうに笑うヒカリを見るのは

久しぶりな気がする

小さな左手に握られたペンギンのぬいぐるみが目に入った



あっ

ぬいぐるみのお礼、言えてないかもしれない


っていうか

私、もじもじ喋って変だった?

そもそも挙動不審で気持ち悪かったかも?


ずっと顔見つめてた気がする

失礼だったよね、、、、

しどろもどろで何言ったか覚えてないし


名前、、、、聞いてないや、、、、

今更気づいて、後悔が波のように押し寄せてくる


あの人に似ていたから

思考が止まっていたのかもしれない

そうだとしても


「ぽんこつだなぁ、私」


ため息交じりにこぼれた言葉を

ヒカリがすかさず拾う


「ぽんこつー♪ぺんぺんぺーんぎん♪ぽんぽんぺんぺん♪」


意味の不明な替え歌を楽しそうに歌っているヒカリ

その無邪気さに

なんだか可笑しくなって笑ってしまった


もういいや

考えるのやーめた


「なぁに、その歌?ママにも教えてー?」

「ぺーんぺーん♪ぺんぎんさんのうただよー♪」

「ふふっ。そっかぁ、ぺんぎんさんの歌なんだね」

「そうなのー♪」

ヒカリは好きなアニメの曲を

歌詞を変えて歌っているみたい


一緒に歌うのは難しそうだから、

私は音程だけをなぞって、鼻歌を添える


ヒカリは笑いながら歌い続ける

その声が、胸の中のぐちゃぐちゃな気持ちを溶かしていく


今はこれで良い

この時間が、ただ愛しい


手のひらはあたたかい


私たちの家が見えてきた


今夜はハンバーグにしよう


あの人が好きだった、甘めのソースをたっぷりかけて。




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