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とらいあんぐる 〜俺と君とあの子の話〜  作者: おーろら


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10/17

優しい香り

~side:楓~

 

コンビニから戻ると

ヒカリはまだ布団の中で眠ったままだった

おはよう、起きて

と声をかけるとゆっくり起き上がり

洗面台の方に向かって行く


私は急いで朝ごはんに取り掛かり

簡単にベーコンと卵焼き、お味噌汁とサラダを仕上げた

ヒカリも同時に炊飯器から2人分のごはんをつぎ分け

冷蔵庫の麦茶をコップに注いでくれる


2人で一緒に朝ごはんを食べる

ヒカリはまだ寝ぼけたまま

ぼーっとテレビに映るアニメを見ていた


「ヒカリ、今日は遠足だからママお弁当作らなきゃなの」

「うん、えんそくだねきょう。たのしみ。」

「お弁当を急いで作るから、1人でお着替えできる?」

「うん、できる」

普段よりも早めにご飯を口に運びながら尋ねると、ヒカリはピースをしながら答えた


「じゃあ、ママ頑張って美味しいの作るから。お着替えがんばってね♪」

昨日のうちに選んでおいた洋服を指差してヒカリに促す

「おべんとうのあと、かみのけかわいくしてね」

ヒカリはウインクしながら

親指を立てて返事をした



------

お弁当を作り終え

さっと洗い物を片付けた後


ヒカリの髪の毛を結っている

今日は好きなアニメのキャラクターに合わせて

ツインテールがリクエストだった

大きめの鏡台の前に座り

鼻歌を歌いながら私に身を委ねている


「きょうはねー、これとこれにするー♪」

ヒカリが指差したヘアゴムで

束ねた髪の毛をまとめる

左右のバランスは良く

使ってあげたヘアオイルも馴染んで可愛く仕上がることができた

ピーチの香りがするのをヒカリはとても喜んだ


「ママー、ありがとう♪」

振り向いてぎゅーっと抱きしめられる

私も抱きしめ返す


こんな何気ない時間が

とても愛おしい

わずか数秒の幸せは

ボーンっと響く振り子時計が

8時を知らせてくれたことで現実に引き戻される


「ママ、いってきますのじかんなのー」

「うん、そうだね。遠足、楽しんできてね。」

「きょうはね、ここあちゃんとあそぶやくそくしてるの。たのしみなんだよ♪」

もう10回以上聞いたヒカリの言葉

それでも

「へぇー、そっかー!じゃあ、きっと楽しくなるね♪」

ヒカリの楽しい気持ちに水を差さないように

返事をする



ヒカリは体に似合わない大きめのリュックを背負い

笑顔で手を振って学校に向かっていった

ちょっとだけ空いたファスナーの隙間から

昨日、私がこっそりと抜いておいたはずの

ペンギンのぬいぐるみが

私を見つめていた




--------

ヒカリを送り出した後

私は激しく後悔していた


「はぁーー、、、」

大きなため息を吐いた後つぶやく

「、、、恥ずかしい」


あの時

コンビニの前で

必死で大きな声を出してしまったが

そのことについては

まぁ気にしていない

、、、いや、静かな朝に響き渡る私の声

今思えばかなり恥ずかしい気もする


そんなことはまだ良くて


近くのコンビニに行くくらいなら

と思い、急いで家を飛び出したことを忘れていた


「超すっぴんだったぁ~」


メイクなし、学生時代のジャージ姿

走って乱れた髪の毛

度のきついビン底眼鏡

挙動不審な私


「油断してたよ~、うぅ~、変なやつだよ〜、私」

今更になり恥ずかしさがジワジワとこみ上げてくる


飲食店に身を置くものとして

普段から化粧は最低限にと心掛けているのだが

今朝の私は0点だったはずだ


恥ずかしさを搔き消すように

テーブルを力強く消毒していく

10分ほど身悶えしながら清掃を終えた


過ぎたことを後悔しても世界は好転しないのだから

私はいつものように


パンっ!

と両手で頬を軽く叩き気合を入れた


スマホで音楽アプリを操作しながら

店内のスピーカーから好きな曲を流す


まだ誰もいない店内

開店前の私だけの時間


「白川遥人———さん」

教えてもらった名前を口にしてみる


白川さんは奏多ではない

名前を繰り返すたびに

その事実が更新される気がした





コーヒー豆をゆっくり挽き

ドリッパーにフィルターを被せ

時間をかけてお湯を垂らす


店内には甘く、苦い何ともいえない良い香りがしている






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