死亡フラグ(×3)をへし折るための簡単なお仕事。0
この世は繰り返す。
人の都合ではなく、世界に都合が良い結果が出るまで。
レティシアの中の御使いが言ったのはそういうこと。それをユーリクスは考えていた。レティシアを起点に滅ぶ世界。
そんな世界滅べばいいのに、とユーリクスは言いたかった。
しかし、御使いは、あたしがレティシアを幸せにするの! と言った。
それならば、ユーリクスは個人の利益ではなく今後役に立つことを選ぶことにした。
例えそれが無謀といわれるものでも、次があるのならば価値はあるはずだ。ユーリクスはそう信じたい。
「お嬢、やっぱり、俺が砦に行く」
屋敷から帰宅し、情報の確認をしたあと、傭兵団だけを向かわせることに決まっていた。ユーリクスは一度は同意したが、それではやはり都合が悪い。
あの砦ではなく、あの王子が危ない。それは見過ごすべきではない気がした。
ん? と不思議そうな顔で見返されてユーリクスは淡々と用意していた理由を伝える。
傭兵団の士気や統率の問題があり、移動までの間に粗相をしないか、現地で軋轢が出ないか心配だと。それは確かに理由ではあるが、本命ではない。
「おじい様が雇用主だから相談して。
送り届けたらすぐに戻ってくるのでしょ?」
「できる限り速やかに戻るよ。
色々心配だ」
「よろしく頼みます」
なにも疑われず、ユーリスクは少し拍子抜けした。
「少し疑うとかないのか? 逃げるとか?」
「そういうタイプじゃないでしょ? それにレティシアに不義理なことはしないでしょう?」
ニヤついた顔でそう言われるとユーリクスは顔をしかめた。レティシアが決してしない表情にはそんな顔するなといいたくもなる。ただ、そのおかげで同一視することもない。
見た目が同じで、違うものだと突きつけてくる。
おまえらが、助けることができなかった。という事実も。
「出立は半月後くらいのはずだ」
「必要なものはちゃんとおじい様に全部買ってもらってね? 資産は使い倒すものだから」
彼女は自分の財産でもないのにしれとっと言う。
それについてはユーリスクは適当に返し、護衛無しで外に出るなと念押ししておくことにした。なにがあっても生き残ることを優先するようにとも。
彼女がいなくなればもうおしまいなのだから。
彼女に口うるさいと追い出されたユーリクスはフリックの執務室を尋ねた。
なにかの報告を聞いているフリックと二人の男がそこにいる。ユーリクスには少し待つようにいい、なにかの指示を出している。
それからフリックはユーリクスに用件を尋ねた。
「俺も砦に行くことにしました」
「相談ではなく、決定として、か?」
「はい」
その不穏さに気がついたのだろう。フリックは部屋にいるものに別の用事を言いつけた。
二人だけになって改めてなぜかと問われる。
「御使い殿に言うべきかは判断を任せますが、二月後、砦が強襲されます。
そこでイライアス殿下が襲われる可能性が高い」
フリックにはユーリクスに前の繰り返しのどれかの記憶があるということを伝えている。隠したところで御使いが知っている風なのだから意味はない。
「殿下には残ってもらわねばならんようだからな……。
では頼む」
「承知しました」
ユーリクスは砦へ行くことになった。
大事なことは黙ったままに。




