神界にて 2
「くっ、なぜ、そこで鈍感発揮するんだっ!」
神(仮)は下界を見下ろして嘆いていた。ささやかな援護に気がついてくれなかったらしい。だが、毒入りお茶は回避したようだった。
本来なら声を送れたはずが、つながりにくいという。最終手段として虫が偶然、お茶に入った。奇跡としてはしょぼいとぼやいていたが、明らかななにかをするわけにはいかない。
「飲んでいたらどうなったんです?」
「あの姫様はすでに毒耐性あり、レティのボディは耐性なしだから徐々に調子悪くなるようなやつ、と思う。
推測バッドエンドリストで一番光ってる」
レティシアは神だけが見えるという板を覗いた。問題なく読めた。
怪訝そうなレティシアに神は笑った。
「今の君は僕の一部みたいなものだからね。
ただ、勝手に触れないよ。
ほら、見なよ、具合悪くなって出られない部屋に王子様と監禁されて、無理やり婚約だって!」
「それは悪くないのでは?」
「いっぱい選べるなら、1回くらい試してみたいけどね」
「なぜ、一度だけなのですか?」
神が少しためらったようにレティシアには思えた。
「どうせ忘れるから言うけど、あの子の魂が限界だったんだ。仕方ないよね。普通の子だったんだから。
僕は平気だから、あの子が時を繰り返して擦り切れてなんて想像もしなかったんだ。
だから、今回はレティの現地確認兼あの子の体の感覚を取り戻すのと自我の強化が目的。
思ったより接続が悪くて困ってはいるけど上々、かな」
先程まで点滅していた場所はもう灰色になっていた。レティシアは他の項目に目を向けた。
「……34回とか、10回とかなんですか?」
「へ? あ、ああ、な、ななんでもなし」
明らかになんでもない、ではなかった。
処刑回数34回。たしかにそう書いてあった。次に見た瞬間には見たこともない字に変換されていたので何らかの処理をしたのだろう。
「毒殺10回は少ないですね」
「数え始めてからは事故50回が最多かな……」
うなだれた神がそうつぶやいた。やはり、死因リストだったらしい。まさか自分の死因を観測することになるとは思わなかった。レティシアはその数と項目の多さになんとも言えない気分になった。
やり直しをしているとはきいていたが、そんなに死んだのか、と。
「ごめん。不甲斐なくて」
「いえ、私も変えられなかったようですし……。
今回は関わったことのない人ばかり出てきていますね?」
「そ、そうなんだよ。
好転はしている。やっぱりあの野郎がだめだった。でも、出てきそうなんだよな」
「執着されている気はなかったのですが」
ただ、そこにいるのが当たり前でという扱いだ。
「離れた時だけそうなるんだろうな。
あれが最悪なことになるという未来はまだ観測されていない。延命はされるようだから、それで良しと……」
いいかけて神が黙った。
「どうされたんですか?」
「ん? だいじょうぶ。問題ないよ」
それはすごく嘘くさい笑顔だった。




