おひとりさま
「等価交換様がご存じか分かりませんが聞いても良いですか。」
「何でしょう」
「この世界でどの国にも属していない土地ってありますか?」
「地図をお買い求めですか?」
「ああそうか、そう言う手があったよね」
私はこの世界の地図を10000円で購入して現在地を確かめた。
A5サイズ以上はある大きさで国境や主要都市が載っていた。
その中に『魔界の森』と表示されている怪しげな場所を見つけた。
ここグロシアートとカルザックそしてサーゲイトと言う
3ヶ国が近接する場所にかなり広く広がった森林の様だ。
その森には国境が書かれていないので
きっとまだどの国にも属していないのだろう。
となれば、その森を目指せば私は誰からも干渉されなくなる。
魔物討伐でお金を稼いで等価交換様のお力を借りて
悠々自適な生活を送れるはず
私はそう考え、新たな目的地を『魔界の森』と決めて歩き出した。
昼は魔物を討伐しながら移動して、
疲れたら魔法の練習をしながら身体を休め、
そして目指すは『魔界の森』で悠々自適生活。
はっきりとした計画に妄想を加え
気分は既にこの国から逃げ切っていた。
コンパスを購入して方角を絶対に間違わない様に注意しながら
慎重に移動して行った。
不思議と魔物以外に誰に会う事も無く森を移動出来た。
この森を抜けたら湖があり湿地帯が広がる筈なのだが
その間に村の様なのは無いのだろうか?
地図には小さな村までは載っていない様なので
その辺は分からないのだが、湿地帯となったら
そう簡単に寝袋で寝られる場所も無くなるだろう。
となると、湿地帯をどうやって抜けるかそれとも迂回するか
今のうちに決めるためにも誰かに情報を貰いたい。
そう考えているのだがなかなか人に出会えない。
この世界冒険者もあまり居ないのか?
そう思っていると離れていても分かるとても濃い瘴気を感じた。
そう言えばあの村で森の奥に瘴気溜まりがナントカって言ってたな
きっとそれの事だろうか。
でも私に瘴気溜まりなんて如何にか出来るのか?
何にしても確認するだけなら大丈夫だろう。
無理そうだったら逃げれば良いだけだしと
濃い瘴気に向かって歩き出すと強そうな魔物の数が増えだした。
慎重に1匹づつ倒しながら進んで行くと
霧の様に漂う瘴気がどんどんと濃くなって行って
私を中心に掛けた範囲結界の外が見えなくなる程だった。
これはヤバイかもと思い出した時にはすでに遅く、
多くの魔物に囲まれてしまった。
逃げ場も無いほどに取り囲まれパニックになりそうだったが
厳重に結界を張り直しやる事は一緒だと
『浄化』を魔物ではなく範囲を意識して念じ続けた。
自分を中心に広く広く土地を浄化するイメージで
今までにない集中力を自分に要求し目を瞑りとにかく念じた。
辺りで騒がしくしていた魔物の数が減って行くのが分かったので
目を開けると少しだが瘴気も薄くなって来ている。
とは言っても、まだまだ魔物の気配もあるし
瘴気の霧は消えてはいない。
安心する事無く続けて『浄化』を広く広く意識して掛けて行く。
どの位経っただろうか30分、いや1時間。
時間の感覚は良く分からなかったが体はとても疲れて辛い。
ともすると集中する事も難しいほどに疲れて来ていた。
あと少し、もう少しで瘴気の霧が無くなりそうなのに、
私の体力が勝つのか瘴気の方が勝つのか
その様な気合勝負の域にいた。
ただ有難い事に私の魔力が無限大って事で
魔力の枯渇の心配が無いのか救いだった。
もう少し体力を付けておけば良かった。
運動とは無縁の生活を送っていた自分が今更ながら悔やまれる。
最後の気力と体力を振り絞る様に『浄化』を念じ
ギリギリの所で諦めて休憩する事にした。
考えてみたら結界で守られているのに
焦って一度で終わらせる必要は無いんだった。
疲れた体を引きずる様に倒した魔物を回収してから
体力補給のために食事をして休憩して
そしてまた結界の周りに集まった魔物を少しずつ浄化して休憩してを繰り返し
気が付けば魔物の数もだいぶ減り
瘴気の霧は大分無くなり辺りとほぼ同じ位に戻っている。
あとはここに残った魔物を倒せば終わりだ。
終わりが見えた事で大分気持ちも楽になり体も軽くなった気がした。
そうして残った魔物をすべて倒し回収を終えると
なんとびっくり等価交換様の現金表示が100万を超え
1028460円になっていた。
これはもう今日位贅沢をしてご馳走を食べても良いよね?
我慢していたあれもこれも食べて良いよね?
私の頭の中は食べたいあれやこれやで一杯になっていた。
私は等価交換様から厳選に厳選を重ね
七輪と練炭に網やトングに取り皿等も購入して一人焼肉を楽しんだ。
勿論お肉は和牛のお高いお肉と色んな部位を楽しもうセット
所謂お取り寄せで美味しいと有名な名のある高級和牛。
焼肉のタレも今日は奮発して有名店のお高いタレと調味料。
冷えたビール片手にお肉の美味しい焼き加減を見ながら
一人黙々と堪能して行く。
もう最高です、美味しいです、幸せです。
こんな場所だけど元の世界で生活していたら
きっとこんな贅沢はそうは出来なかっただろう。
そう考えたら逃亡生活だけれど卑屈にならずに済みそうだ。
明日からまた頑張れそうだ。
私は気持ちを新たにビールとお肉をお腹いっぱいになるまで堪能した。
読んでくださりありがとうございます。