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逃亡聖女は引き籠もりたい  作者: 橘可憐
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ボロボロのドロドロ


宿泊施設には殊の外お金が掛かった。


それはもう有り金全部すっからかんになるんじゃないかと言う位。


建物自体はノームが作ってくれたが

浴槽は温泉施設を利用して貰う事にして設置しなかったが

ベットだの布団だの便器だのとその他備品を色々細々要求され

こんなにお金が掛かるのだと改めて驚いていた。


こんな事なら迂闊に了承しなければ良かったと

そんな事を思ってしまったくらいだった。


そうして現金表示を気にしていると言うのに

等価交換様がアメニティーグッズの自動販売機を勧めて来る。


体を洗うタオルやフェイスタオルに歯ブラシなどや

1回分にパウチされたシャンプーやリンスや化粧水など

要するに温泉を利用する人には必要な物だろうと言いう。


私はぶっちゃけもうどうにでもなれと言う気分で

アメニティーグッズの自販機も購入した。


内心等価交換様頼みの転売商法もあるしと思っていたが

今日から本当にまじめにポーション作りに精を出そうと決意した。


そう、私に出来るのはお金を出すくらいの事だと

そう悟ったばかりなのにそれすら出来なくなってしまっては

折角みんなが色々頑張ってくれているのに

ココを維持するのも難しくなり

申し訳なさに本当に家に引き籠る事になりそうだった。


何が何でもそれだけは避けたい

折角日々楽しく生活出来ている今の状況は絶対に維持したい。


私がそうかなり強い気持ちで一人意気込んでいると

アウラが血相を変えて飛んできた。


「冒険者が到着しました」


慌てる様子のアウラが珍しくて何か言いたかったが

それよりも待ちに待った冒険者がやっと到着したのかと

私は慌てて様子を見に行くために駆け出してしまった。


見るからにボロボロで汚れでドロドロの冒険者4人が

力尽きる様にしてココ拠点入り口に座り込んでいた。


出来る事なら近づきたく無い程の様相だったけれど

ココで本当に力尽きて死なれても困るので

私は慌てて駆け寄り取り合えずヒールを掛けた。


そして「大丈夫ですか」と私がそう声を掛けると

体力は回復した冒険者達が何故か泣きついて来た。


「本当に死ぬかと思った」


「このまま森の中を彷徨い続けるのかと思っていた」


「迂闊に森に入って申し訳なかった」


「精霊の祟りに違いないと言っていたんだ」と

冒険者達は口々に思いのままを話し始め

そして揃って「赦してくれ」と縋り付いて来る。


ココに辿り着くのはそんなに大変な事だったのかと私は改めて実感し

どうりで冒険者達がなかなか来ない筈だと

なにか対策を取らなくてはならないかと考えていた。


「この森でたとえ迷ったとしても死人が出るのは困る」

私がそうアウラに言うと

「そうですね、少しばかり分かり易い道でも作りますか」

そう私に答えて来るので

「そうしたら至れり尽くせりでココに一直線だね

でもそれってどうなの?」私が疑問を投げ掛けると

「もうすでに来て欲しいと言う設備でいっぱいですが」

そう言って身も蓋も無い現実を突きつけて来た。


「それもそうだね、じゃあこの際ノームに頼んで

3ヶ国方向にそれぞれ道を作って貰おう」私がそう言うと

「任せるのじゃぞい」と

ノームは宿泊施設の事は後はエドガーさんに任せると言って

さっさと出かけて行ってしまった。


そしてシルフも「他の冒険者さん達も連れて来るのです~」

そう言って何処かへ飛んで行ってしまった。


最近の精霊達は言うより早いと言うか仕事が早すぎる

みんなやっぱりココの事や私の事を

本当に考えてくれているのだろうとそう感じさせていた。


その気持ちが嬉しくて何も言えなくなるし何かお礼がしたくなってしまう

毎晩の精霊達の飲み代をウダウダ言っていた自分が恥ずかしい。


精霊達のお酒代位本当に稼がなくてはと思っていた。



そしてお腹を空かせたボロボロのドロドロの冒険者達に

取り合えずおにぎりを振舞い温泉に入る事を勧めた。


綺麗サッパリしてからしっかり食事でもしてくれと言って

案内をエドガーに頼み施設や設備の使い方の説明もお願いした。


初めはマリーさんに頼もうかとも思ったが

考えてみたら男の冒険者相手にトイレや入浴作法を教えるのは

やっぱり抵抗があるかもしれないと考えたのだが

当のマリーさんは忙しいエドガーに任せるのは申し訳ないと

さっさと冒険者達を連れて彼方此方案内し始めた。


なので私は先ほどの決意通りポーション作りに精を出そうと

家へと戻るとマリーさんがそれを追いかけて来た。


「冒険者達が着替えが無いそうなんです」


それを聞いた私は一大事とばかりに冒険者の所へ駆けつけ

一番大事な事を聞いた「お金はあるの?」そう聞いていた。


「金なら持ち合わせはそこそこある」


「どうせ死ぬつもりだったから使い果たしても良いぞ」


「売れるなら素材も結構持っているぞ」と

そう言っているので取り合えず安心して

冒険者達の着替えを買い揃えて渡した。


等価交換様を知らない冒険者たちは不思議そうにしていたが

私の特殊能力だと簡単に説明だけして

後で購入したい物があれば相談に乗るとだけ言って別れた。


あまりの体臭の凄さに傍に居るのも限界だったのだ。


あの冒険者達に付き添って説明をするマリーさんに

プロ意識と言うか仕事熱心と言うかそんな事を感じ

私は心からつくづく尊敬していた。



そうしてひと段落付いたと思っていたら

シルフに送られたらしい冒険者がまたまた到着した。


何やらキツネにでもつままれた様な様子の冒険者に

「いらっしゃいませ」と取り合えず愛想よく挨拶をして

有無を言わせず温泉施設へと案内して後はマリーさんに任せた。


冒険者とは一様に臭いのか?私は激しくそう思っていた。


本人たちは気にならないのだろうか?


そんな事を考えているとまたまたマリーさんがやって来て

「やはり着替えが無いそうです」と伝えて来るので

この際何着か用意して置いて好きなのを買って貰おうと決めた。


そしてマリーさんが

「冒険者達の衣服を洗濯しても良いでしょうか」と聞いて来るので

洗濯機や洗剤を使うのは構わないが

必ず有料と決めてきっちりお金は取る様にとキツク言い聞かせた。


そしてその洗濯代はマリーさんとエドガーさんで分けて良いと

私がそう許可するとマリーさんはエドガーさんの為にも稼ぐと

意気揚々とあの臭くドロドロの衣服を洗濯する気満々の様子に

私は心から感心してしまった。


私なら迷わず燃やして捨てたよ、間違いなくそれだけは言える。


冒険者達の為にそこまでしようと考えるなんて

マリーさんこそが聖母なんじゃないかと思う

私がそんな事を考えているとまたまた冒険者が到着したらしく

今度はエドガーさんが伝えに来た。


シルフがよほど張り切って冒険者達を集めている様だった。


じゃぁ、前回は一組で終わらせたのは何でだ?


シルフも慣れていなかっただろうし

冒険者達に泣きつかれ困っていた様だったからだろうと

そんな事を考えていたが違ったらしい。


ウィンディーネ曰く冒険者達の危機感だそうだ。


「みんなが来ているなら私にも教えてくれても良いじゃ無いのぉ」

そんな事を言いながら登場したウィンディーネが

少し膨れた様子を見せながらシルフの行動を説明してくれた。


この森に入ってすでに長く滞在し

不安を抱え彷徨っている様子の冒険者を選んでいるそうだ。


この森をすでに出る事を考えている冒険者は無視して

健康状態や精神状態を鑑みて選び連れて来ているそうだ。


「なのできっと諸悪の聖女捕縛の元気も無いわよぉ」

そう言うウィンディーネに私はつい笑ってしまった。


そう言えば諸悪の聖女捕縛に来る冒険者を撃退するんだったと

今さらながらに思い出し可笑しくなってしまったのだ。


今じゃそんな事よりお金をどうやって毟り取ろうかと考えていて

一も二も無くお金を持ってるか聞くなんて

まったくもって守銭奴の様だと自分でも思う。


こうなったら鬼と言われようが魔王と呼ばれようが

ココに来た冒険者の財布を空っぽにしてやると

私はまたメラメラとやる気に満ち溢れて来たのだった。



読んでくださりありがとうございます。

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