お勧めのロールケーキ
相変わらず亀の歩みで魔界の森を進んでいた。
あと3体精霊が居るってシルフは言っていたけれど、
この広い魔界の森をこのスピードで進みながら探すって
いったいどれだけの時間が掛かるか分からないよね。
最優先は拠点に最適の場所探しだけれど、
精霊が封印されていそうな場所に当たりを付けて探してみようか?
あくまでもついでだけれど。
そう考えて地図を広げて見たけれど
精霊の封印場所なんて私には全然見当もつかなかった。
やっぱり精霊探しは無理だと早々に諦め、
当初の目的通り中央部に流れる川を目指し進んだ。
この魔界の森に入ってすでに結構な日数が過ぎている。
時計が無いのもカレンダーが無いのもやっぱり不便だ。
いったいこの世界に来てから何日が過ぎたのか、
もうすでに随分と前の様な気もするし、
まだそんなに経っていない気もして感覚が曖昧になる。
ただ、等価交換様の現金表示だけが数字として現実を表していて
その現金表示がいよいよ3千万円を超えた。
自分で決めた唯一贅沢を許して良い理由なのだ、
今日も美味しいお取り寄せを選ばせて頂きますよ
そう思いながら等価交換様のカタログを捲っていた。
またシルフが突然現れても良い様に
分けても大丈夫な美味しいスウィーツにしなくちゃね
そう考えながら色々と物色していた。
シルフは今も私の中でそれはもうぐっすりと眠っている様で
あのチーズケーキ以来まったく気配を感じさせない。
美味しい匂いでまた目覚めてくれたなら
少しは楽しい時間も過ごせそうな予感がして
カタログを捲るのにも気合が入る。
この前はケーキだったから今回はプリンにでもしてみようか。
でもプリンはシルフにはちょっと食べ辛いかもしれないし、
このフルーツタルトも美味しそうだな。
などとなかなか決められずにいると
「このロールケーキは今一番人気の様です」と
生地が薄っすらピンク色でクリームにも色々練り込まれた
見るからに美味しそうなロールケーキを
何故か等価交換様が勧めてくれた。
これは1本を一人で食べるとなるとなかなか気合がいるが、
分けて食べるには丁度良さそうだ。
うん、これにしよう。
「等価交換様ありがとう、それにします」そう注文すると
すぐに目の前に現れた美味しそうなロールケーキ。
食べ始める前にすでに半分に分けてシルフが現れるのを待ったが
なかなか現れる様子を見せないシルフに
ロールケーキは好みじゃなかったのかと思いながら
食べ始めようと口を開けた途端にシルフが現れた。
「美味しそうな匂いがする~」
今回は口に入れようとしていたのは強奪されなかったが、
シルフは両手を突き出して早く頂戴の様にポーズを作っている。
その可愛い仕草に思わず含み笑いをしながら
半分に分けてあった分を差し出すと
またまた両手で抱える様にして食べ始めた。
お皿とフォークを用意して食べ方から教えないとな。
私がそんな事を思っているのを知ってか知らずか
相変わらず美味しそうに嬉しそうに食べている。
なんだかんだ言ってシルフと一緒に美味しいものを食べる
この時間が私にとって今一番のご褒美だな
そんな風に感じながらロールケーキを堪能していた。
そして食べ終えたシルフは今回はすぐに体には戻らず
私の傍をパタパタと羽ばたきながら飛んでいた。
そして「みんな離れた所にいるの~」
と、精霊の居場所を教えてくれた様だった。
「じゃぁ、少なくともこの近辺には居ないって事だね」
「そうだよ~」
「そっかぁ、ありがとう教えてくれて」
私がシルフの頭を撫でながらそう言うと
「うん、頑張って~」と言って
アイススケートのスピンの様にクルクルと回ってから
私の体の中に消えて行った。
何だか見るたびに少しずつ元気になっている気がする。
それが何となく嬉しくて私も元気が出た様だった。
読んでくださりありがとうございます。




