罪の意識
もうこの湿地帯に入ってからどの位の時間が経ったのだろう。
既に何日経ったのかも分からない。
この世界って元の世界と時間とかカレンダーとか共通なのかな?
「違います」
「じゃぁ、元の世界の時計とかカレンダーは役に立たないのか」
「この世界に合わせて改造しますか?」
「そんな事まで出来るの?」
「レベルが上がれば出来なくはありません」
「と言う事は今は無理なんだね」
「すみません」
「いいよいいよ、出来る様になったら教えてそしたら時計買うから」
「了解しました」
等価交換様はレベルMAXになったら
いったいどんな事が出来る様になるんだか
私は想像しただけで興奮していた。
私は自分のレベルMAXになっても聖女の仕事はしないから
まったくもって役に立つ気はしないのが難点だったけど
等価交換様のためにこれからも頑張るとそう決めていた。
そうして決意新たに湿地帯を変わらず進む。
高額そうな魔物は漏れなく倒し
カバや水牛の群れも見かけたらわざわざ倒しに行って
そうして段々とぬかるみが少なくなり出すと
魔物の種類も変わり始めて私は躊躇した。
目標の1千万円に届いてないよ。
この先にも高額の魔物が居るのだろうか?
せめて目標の1千万円を達成させるまで
この湿地帯で粘った方が良くないか?
でも一刻も早くこの国は出てしまいたいし、
後ろ髪を引かれる思いで悩みに悩み湿地帯を抜けていた。
そしてそこに広がる草原で突然ウサギに襲われた。
魔物じゃないただのウサギにだ。
『浄化』を念じても何も起こらない
寧ろ怒りが深まったのか激しく襲って来る始末。
今まで瘴気を浴びて魔物と化したヤツらを浄化する事で倒せたが
魔物となっていない獣達では『浄化』はまったく効かず
戦う術を持たない私にはたとえウサギでも倒せる気がしなかった。
この辺りは瘴気が少ないのか?
それとも今まで奇跡的に獣に会わずに済んでいたのか
どちらにしてもこの難局をどう潜り抜けるかが問題だ。
考えろ考えろ考えろ私
どうしたら倒せる?
・・・・・・・そうだ
「ボーガンを買います」私は等価交換様にそう叫んでいた。
そして扱いやすそうなボーガンを購入して
ウサギに向けて矢を放つ
矢は思いの外力強く早く飛びウサギを貫通して地面に刺さり
そしてウサギは簡単に絶命していた。
やはり日本では禁止された武器だけあって
その威力の凄い事に自分でも驚いた。
今まで魔物を浄化して倒す事にはあまり抵抗も感じなかったが
獣をボーガンで倒してみて初めて感じる罪の意識。
そして血を見たせいか込み上げる気持ち悪さ。
ウサギの方からいきなり襲い掛かって来たんだから
まったくの不可抗力ではあったけれど
やっぱりなんとなく抱いてしまう罪悪感。
元の世界での平和な生活や道徳観念のせいだろうけれど
この先もただの獣に出会う事も多いだろうと思うと
これは乗り越えなくてはならない試練なのかと落ち込んだ。
だって、助けてくれる人は誰も居ないし
私はこの世界で生きて行かなくてはならないんだから。
そう自分を鼓舞し納得させて草原を進んだ。
体力も大分付いて来た様で長い距離を歩くのも平気になっていて
最近ではかなり体も軽くなった気がする。
少しくらい激しく動いても息切れを起こす事も無くなったし
何より筋肉痛で困る事がまったく無くなった。
草原は身を隠す場所が無いから万が一追っ手に見つかったら
少しくらいなら走る自信も付いたので
ここは構わずに最短ルートまっしぐらで進むことにした。
なるべく獣に出会いません様に
私はそう願いながら草原を速足で進んで行った。
読んでくださりありがとうございます。