花火直前の不穏
久しぶりの投稿となります!
かなり間が空いてしまい申し訳ありません⋯
咲良さんと花火に行った次の週末、俺は約束通り由希さんと蒼ちゃんも一緒に四人で再び花火を見に来ている。
ここの花火大会は地域のお祭りも兼ねているようで、屋台や人の数は先週より段違いに増えている。
「たこ焼き!焼きそば!出店多いね、お兄さんっ!」
「そうだね。蒼ちゃんはどれが食べたい?」
家を出てここまでずっとハイテンションなのは蒼ちゃんだった。それに対して咲良さんは無言。ここまでほとんど会話をしていない。
「もし体調悪かったりしたら、遠慮せず言ってね」
「だっ、だいじょうぶ!大丈夫だから⋯」
と、話しかけてもこんな感じですぐにそっぽを向かれる。体調が悪いわけでもなく、昨日のラインでは花火を楽しみにしていたため、謎は深まるばかりだった。
「お姉ちゃん、危ないから私に掴まって」
様子のおかしい咲良さんの手を蒼ちゃんが引く。人混みは避けてはいるものの、どの通路にも一定量の通行人はいるもので、肩と肩がぶつかりそうになることも多々あった。
ではなぜ前回のように少し離れた人気の少ない場所で見ることにしないかと言うと、由希さんの提案がきっかけだった。
並んだ屋台を突き抜けた先に百段ほどの石段があり、登りきると神社の本殿がある。そこは祭りの会場を一望しながら花火を拝むことができ、時間になると人が多く集まるそうだ。
そして俺たちが目指しているのはその先。本殿の横を通り抜け、少し歩いたところにベンチが置かれた開けた場所があるらしい。
石段をトレーニングや運動として利用することが多く、その後のウォーキングにこの辺りが使われるから設置されたそうで、地元の人でも知っている人は少ないという。
しかしまだ花火が始まるまでは時間がある。そこで俺たちは屋台をぐるりと一周することにした。
⋯そして今に至るのだが
「⋯蒼?い、いいよいいよ!」
ぼうっとしたり、あわてたり。目が合ったらそらされたり、歩いてる男性を警戒することなく向かっていったり。
明らかに普段と違うが、本人は頑なにいつも通りだというので、こちらが折れるしかない。
「そろそろ移動しましょうか」
最後方から見守っていた由希さんがスマホで時間を確認し、俺たちは神社がある方へ方向を変えた。
「ごめん、お手洗い行ってくる!すぐ戻るから!」
「あっ、私も!」
四人でベンチに座り、あと10分ほどで花火が始まるという頃、咲良さんと蒼ちゃんがお手洗いに席を外した。
その場には俺と由希さんの二人だけとなり、何度も会って話しているとはいっても気まずい雰囲気が流れる。先に口を開いたのは由希さんだった。
「音無くん、いつも紫音と遊んでくれてありがとうね。夏休みに入っても、音無くんのことを聞いたら楽しそうに話してくれるのよ」
なんだか咲良さんの完全なオフの顔を聞いているような罪悪感が押し寄せるも、由希さんの目は真っ直ぐと俺に向けられていた。
「ありがとう⋯ございます」
「でも、紫音とばかりで大丈夫?音無くんなら女の子から人気だと思うんだけど⋯」
「そんなことないですよ。数人とたまに話すくらいです」
人気。それが友人関係としての人気なら客観的に見ても上位だったと言えるだろう、昔は。今はあまり人と関わらないので、話す人でいえば咲良さん、宮前さん、高良さんくらいだ。
「意外ね⋯。こんな優しい子ならモテるはずなんだけど⋯。年齢の違いかしら」
俺もネット記事で見たことがある。小学生は運動ができる人、中学生は勉強できる人、高校生はコミュニケーション能力の高い人、大学生は経済力のある人。
年齢をあげるにつれて現実的になり、将来のことも含んでくる。恋愛は難しい。
由希さんの言うことが本当であれば、俺はこれからモテ期というやつが来るのだろうか。いかんせん、今はその兆しすら見えていない。
「そう⋯なんですかね。今、恋愛しようって気にはならなくて⋯」
「あら、てっきり紫音とそういう関係かと⋯」
「咲良さんは、大事な友達です。⋯それはこれからも変わらないと思います」
「⋯なにか過去に?って、聞かれたくないわよね」
「いえ、大丈夫です。中学生の頃に色々あって、恋愛を面倒なもののように感じてしまって、それから恋人を作りたいと思えなくなっただけです。ただ、それだけの事です」
由希さんは気まずそうに言葉を考える。ビュッと吹いた風が木の葉同士を擦れさせ、その音だけが空間に流れていく。
「⋯今から言うことはおばちゃんの綺麗事としてスルーしてくれてもいいんだけど」
「音無くんの過去を私は知らないし、変えられない。でも、その経験と向き合ってみて、これから音無くんの前に現れる人を見極める材料にしてもいいと思うの。失敗をしたってことは、失敗するパターンを覚えたってことだもの、ね」
由希さんの言葉には、しっかりとした重みがあった。過去の詳細を話したわけではないのに、その言葉が俺の心にグサリと刺さり、俺を前に進ませようと優しく背中を押しているように感じる。
「⋯そうですね。ありがとうございます」
俺は由希さんにお辞儀をし、感謝をした。⋯その時
「ぎりぎりせーっふ!⋯あれ?」
蒼ちゃんが全力ダッシュからの急ブレーキで止まった。
「お姉ちゃんは?先に戻ってるって言ってたんだけど⋯」
蒼ちゃんが言うには、咲良さんは蒼ちゃんより先にお手洗いを出て、ここに戻ると伝えたようだ。しかし、今いるのは蒼ちゃん一人で、その間に咲良さんは来ていない。
ラインを送っても、電話をかけても反応は無い。
そうこうしている間に、花火まであと2分を切った。
「俺、探してきます!」
困って電話をかけ続ける由希さんと、不安そうな表情になる蒼ちゃん。男の俺に出来ることはこれしかないと、俺は走り出していた。
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