オロッカダンジョン、結末
◆カゲマサダンジョン カゲマサside
「・・・シロ、何あれ。生物が小さくなったんだが」
「ミレンダによると《生物縮小》というスキルだそうです。何らかの形で意識を失った生物を小さくできるスキルだとか。そして小さくした生物を《格納》というスキルで仕舞い込んだようですね。ゼータは、そうやって生きている兵士を《格納》して戦地に持っていく運送用に調整したようですから」
はえ~、そうだったのか。いや待て、《格納》?そんなスキル知らんぞ俺は。
「空間魔法【ボックス】で生物が入れられないのは知っているが、《格納》では違うのか?」
「はい、どういう理屈までは解明されていませんが、違いがあるようです」
理屈は分からんのか。まあ、仕方ない。今ダンジョンバトルは優勢だから考えるのは後だ。
「でだ、シロ。ゴブイチとワイズはどうだ?」
「はい、敵マスターと戦闘中です」
「勝てるかな」
「間違いなく」
シロは、そう断言する。まあ、俺もそう思うけどさ。やはり心配だ。大丈夫かな~?
◆オロッカダンジョンコアルーム 三人称
クロが不滅のシミターを第四階層まで吹き飛ばした時、ゴブイチとワイズはオロッカと戦闘中だった。
「死ね!《血爪》!!」
オロッカは、己の血を使って爪を作り出しゴブイチに襲いかかる。だが。
「させないも~ん!」
「ッ!?」
阻むは、灰色スライムのワイズ。自らのスライムボディを触手のように伸ばし《血爪》を防ぐ。
「チッ!小癪なぁ!!正々堂々と戦うつもりも無いのか!!」
「いや、今更っすか」
ゴブイチは、斧を振りかぶりながらヤレヤレと呆れたように呟く。
「これは戦争っすよ?正々堂々なんて関係無い、勝てばいいんすから」
「ぐっ、だが正義は我輩にある!我輩は、父上の期待を受けた天才!正義たる我輩は負けるわけにはいかん!」
「馬鹿っすね」
普通の一対一ならばそうしただろう。だが今回は、お互いのダンジョンの尊厳を賭けた戦争だ。そこに正々堂々などという甘い言葉は無い。ましてや、正義とか悪などの概念も最初からない。あるとしても、勝った方が正義で負けた方が悪である。と、ゴブイチは考えていた。
「ば、馬鹿だとぉ!?ゴブリン風情が、我輩に馬鹿だとぉ!?」
「ああ、もう良いっす。ワイズちゃん、さっさと殺るっすよ~」
「は~い!」
ワイズは、子供の如く無邪気に返事をする。そしてオロッカの右腕が、爆ぜた。
「・・・・ッ!!??わ、我輩の腕がァァァァァ!?」
「あれ~?軽くしたのに腕無くなっちゃった。ま、いっか♪」
オロッカは慌てふためき、ワイズは振るったであろう触手をヒラヒラと動かしている。オロッカは、爆ぜた腕の部分を押さえながら痛みに耐えていたが、次は左腕が爆ぜた。
「ギャアぁぁぁぁぁァァァァァ!!痛い痛い痛い痛い!!」
「・・・ゴブイチさん、吸血鬼って再生できるって言ってなかったっけ?」
「その筈なんすけど・・・。あ、コイツの場合、元の腕と繋ぎ合わせて再生するパターンじゃないっすか?」
「ッ!!」
オロッカは、何故分かったといった顔でゴブイチを見る。
「・・・マジだったんすか。冗談半分で言ったんすけど」
「ふ~ん、そうなんだ。まあ、関係無いね!」
ワイズは、再び触手を振るう。すると、オロッカの両脚が爆ぜ、肉片が辺りに散らばる。オロッカの悲鳴が響くなかワイズは、肉片全てを溶解液のような液体で溶かしていく。
「処理終わったよ!」
「おつかれさんっす。さあ、オロッカとか言ったすか?コアの場所を教えるっす」
「ヒィィぃ!!だ、誰か!」
オロッカは地べたを這いずりながら逃げようとする。だが、這いずるための腕も脚も無く、只身体をくねらせているだけだった。
「うるさいっすよ。さっさと吐くっす。吐いてくれたらオイラは、殺さないっすから」
「だ、誰がそんな」
「あ?」
「ヒィ!わ、分かりました!我輩の後ろにありますゥゥゥ!!」
ゴブイチの軽い殺気にオロッカは、尿を漏らしながら答える。ゴブイチは、ワイズに見張りを頼み、オロッカの後ろにある台座の後ろを調べると、案の定ダンジョンコアがあった。
「ダミーじゃないっすよね?」
「ち、違う!本物だ!」
「・・・これを破壊したらいいんすね?分かったっす」
「じゃ、じゃあ!」
「約束通りアンタは殺さないっすよ」
「よ、良かっ」
「まあ、オイラはッスけど」
「え?」
何故か強調されている「オイラは」という言葉。そしてオロッカがその意味に気付いた時には、
「え~い☆」
ワイズによって頭を潰され、息絶えた後だった。
「オイラは、殺さない。うん、確かに言ったっす。けど、ワイズが殺さないとは言ってないっすからね?」
ゴブイチは、オロッカだった肉体を見て、そう呟いた。その顔は、馬鹿を見るように見下した表情だった。
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