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宇宙怪獣vsVtuber ~地球最後の日に貴方は何をしますか? 答え:Vtuberの配信を見る~  作者: 桂かすが


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第49話 コラボ準備

「そらちゃんお腹へった」


 モコスとそらがコラボの相談を終え、あかりの仕事部屋に行ったところそんな要望が出たので、そらは食事の準備にリビングキッチンに戻っていった。人間は不便にも毎日食事を取らないと活動もままならなくなるのを知るモコスは、食事を優先してもらい待つことにした。部屋に手持ち無沙汰に取り残されたモコスは、原稿を描いているあかりに尋ねる。


「このまま見学していてもお邪魔になりませんか?」


「いいよー。見ての通り、アシさんたちとも一緒に作業するし、人が居て多少騒がしいほうが集中できるんだ」


 仕事部屋にはパソコンと液晶タブレットが五組並べられている。その中で一人静かにあかりは手を動かしている。モコスがあかりの後ろに周り、邪魔にならないよう作業画面を観察していると、あかりが話しかけてきた。


「モコスちゃんは五歳なんだよね?」


 作業の手を止めずに話しかけるあかりに、モコスは、はいと頷く。


「生まれた時の記憶もあるの?」


「はっきりと覚えています」


 アンドロイドであるモコスは成人として生まれてくる。自分の存在、今の状況、期待される役割。すべてが起動時に機能チェックと共に認識され、検査技師からも確認された。モコスの買い主、雇い主はすでに決まっていて、必要な知識のインストールとオプション機能の組み込みが行われ、テストののち、いまのボスに引き渡された。


「生まれたのはどんなところ?」


「目を覚ましたのは地球の病院に近い雰囲気のある場所です。清潔な場所で技師やオペレーターが私たちアンドロイドの機能チェックしたり改造したり、修理をする」


「ふむふむ。生まれた星はどんな感じ?」


「見た目はだいぶ変わっていますが地球と同じく人がたくさん居て、都市は雑然としていて、自然は豊かですよ」


「見たい。写真とかないの?」


「ありますよ。どうぞ」


「うわっ」


 部屋の中央に濃い青とオレンジ色が入り混じった不思議な色合いの惑星がホログラムで表示される。


「すごい。立体映像だ……」


 さすがに作業を止めて部屋に浮かんだ惑星を立ち上がって見るあかり。よく見れば惑星はゆっくり回転していて、顔を近づければ近づけるだけ都市部らしき細部までかなりはっきりと見ることができた。


「惑星クシュ・ナ。オレンジ色の空、という意味となります」


「ほえ~、モコスちゃん、本当に異星人なんだね」


 エキゾチックな惑星もそうだが、地球ではまだあり得なさそうな立体映像の投影。それも身一つで装置っぽいものを何も持たないモコスから即座に出されたことで、ようやくあかりはモコスが地球人ではないのだと腑に落ちた。


「私が異星人なのは内緒でお願いしますね」


「もちろんだよ。ね、宇宙にも神様は居るの?」


 異星をじっくりと眺めながらあかりがそんなことを言い出す。


「居ますよ」


「宇宙の神様ってどんな感じなの?」


「地球の宗教と同じで色々です。進化の過程で神の存在を信じる種族は多いですし、神のごとく恐ろしく進歩した種族がどこかに存在するという説も否定されていません。あるいはこの宇宙を作った偉大な存在が本当に居るのかもしれません」


「モコスちゃんは神様を信じてる?」


  はい、とモコスは頷いた。


「私たちにとっての神は、我々を生み出した種族の方々です」


「ああ、創造主が実在するんだ。それはなんだかすごいことだね」


「いつか引退したら、あの方々の住む惑星に行って、余生をお仕えして過ごす。機能を停止する時にはお前はよくやったと褒めてもらうのが我々多くの夢なのです」


 夢は夢。叶わぬから夢なのだ。未開文明レベルまで退化した原パルルーニャ人の住む惑星は厳しく管理され、訪れることも簡単にはできない。宇宙に脱出して退化を逃れた現パルルーニャ人たちもモコスたちアンドロイドとは距離を置いて、ほとんど交わることはない。


「モコスちゃんはよくやっている。えらいよ。なでなでする?」


「なでなでは遠慮しておきます。でもありがとうございます」


 そう言ったところで惑星のホログラムを消す。


「モコスちゃんは神様にお仕えする天使になりたいんだね」


「天使、ですか?」


「そう。天使だよ」


 不思議そうに首を傾げるモコスに、やっぱりモコスちゃんは天使だった。そう納得してあかりは作業に戻った。



 ◇◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◇



「モコス様は時間は大丈夫なんですか?」


「今日は一日確保してますし、待ってる間もこちらの作業も遠隔できるますので」


 そらたちがもぐもぐしながら話す。メニューはオムライスだ。モコスの分もそっと差し出されたが、当然モコスに断られた。食べる振りくらいはできるがエネルギーに変換する機能などはないから、食材が無駄になるだけなのだ。


「それでコラボなんだけど」


 遠隔作業というのも気になったが、そらはコラボの話を進めることにした。


「無難に復帰記念の雑談にしようかと思って」


「ぶ、無難~」


「じゃあ歌でも歌う?」


「ヤダ」


「アニメの主題歌とかやったの、評判良かったじゃん」


「味があるとか言われてたんだよ! 絶対微妙な評価じゃん!」


「何かアイデアがあるなら聞くけど」


「ん~、モコスちゃんは何か希望はないの?」


「あかり先生が復帰のお知らせをできるのですから、私も雑談で良いと思います」


「じゃあ雑談ね! そらちゃん設定とかお願い! ボクは告知しておくから」


 食事をもう終えたあかりが再びパソコンとタブレットに向かい描き始める。


「配信は何時からにする?」


「今から」


「サムネもないよ!?」


「前使ったやつでいいよ。告知も終わった~」


「こいつマジかよ」


「雑談するだけだし。あとこのまま描きながらやるから。仕事しながらの配信、リスナーさんたちが喜ぶんだよね」


「そりゃ人気作家の仕事風景が垣間見えるんだよ。興味津々でしょうに」


「じゃあ始まったらボクが挨拶とかするから、落ち着いたらゲスト紹介して、後は流れでよろしく」


 配信専用のパソコン、マイクやカメラなどの機材など、いつでも配信できる用意はあるらしく、それが手慣れた様子で準備され、モコスとそらのアバターも画面に表示できるところまで進む。


「あー、あー、あー。音声チェック音声チェック。始まったらリスナーさんにも音声大丈夫かの確認はヨロ。操作は間違えないでよ」


「配信は久しぶりだけどセッティングはそのままだから慣れたもんだよ」


 原稿の画面から顔も上げずに言うあかりに不安を感じるそらだったが、今日は雑談だけだし操作のほとんどはそらがやるから平気だろうと準備を進める。


「配信枠立った。あかり、おトイレとか大丈夫? 配信は一時間の予定だよ?」


「平気~。飲み物はほしい」


「ほい。モコス様、NGな話題とかありますか?」


「性的な話題は避けてもらえると助かります。それとあかり先生の治療の件ですね」


 一度コラボしているモコスとそらだからそのあたりの確認はしているが、これはあかりに向けてのものでもある。


「あかりもそれだけは絶対言っちゃダメだよ」


「うーん、じゃあガンは早期発見して治して、念のためにしばらく療養していたことにしようか」


「病名は言わないでもいいんじゃない?」


 そらの提案にそれもそうかと、あかりも頷く。個人の病気というのはかなりセンシティブな話題だ。配信者が病気療養で休んだ時、病名を公表する人もいればぼかす人もいる。それを詮索するリスナーもまずいないものなのだ。

 

「なんかややこしい名前の病気、あ、そういう余計なことも言わないほうがいい? 病名は伏せるけどちょうど退院するタイミングで、そらちゃんとモコス様がコラボの相談をしていて、その流れでボクともコラボしようということになった。そんな感じの説明でいいかな?」


「いいね」


「はい、いいですね。嘘はないほうが設定が破綻しませんから」


「よーし、じゃあ始めるか!」


 さすがに作業の手を止めたあかりがそう宣言した。


「まずはオープニング映像流しまーす。配信開始! まだミュート中でございます」


:配信始まった!

:先生、やばめの病気って聞いてたけど復帰するの?

:おかえり、観奈月先生!

:連載再開するのかな? 楽しみ~


「ん、ん、ん~。あめんぼあかいなあいうえお! 声出しおっけー!」


「皆様準備は万端? じゃあ始まるよ〜。ミュート解除一〇秒前、九、八、七――」


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