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宇宙怪獣vsVtuber ~地球最後の日に貴方は何をしますか? 答え:Vtuberの配信を見る~  作者: 桂かすが


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第40話 アンバサダーとはビジネス・マーケティングの分野では企業やブランドの顔として、その製品やサービスの魅力をPRする役割(宣伝大使)を指します。

 やはりアニメ視聴は最速リアルタイムに限ると、余裕をもって新しいホームに戻ったモコスは、居間の大型テレビで子供向けアニメを鑑賞していた。ちらっと銀河そらのほうを確認すると、やはり説明は相当に長引いている様子で、任せて正解だったとモコスは思う。


 その場に居たら居たで追加の質問攻めにあっていたことだろうことは想像できたし、ちょっとした改良以上のことをするつもりはモコスにはなかった。地球人はすでに月へと到達している。やっていることはただの後追いだし、提供した技術もロケット本体はただの再設計。燃料も金属素材もジャイロセンサーも、配合や製法がほんの少し違う程度で真新しい部分はない。

 それでも文明レベルが少しでも上がるとなれば、銀河連盟からやり過ぎだと処断される可能性は高かった。ずっと隠し通せるとは思わないが、関与した形跡は消しておくにこしたことはない。紙で資料を渡したのも電子的な痕跡を残さないためだ。


 今回のコラボはなかなかの収穫があったな、そうモコスは考えた。表に出せないのは残念であるが、新規の登録者も増えたし、月へ行けるロケットの設計は我ながら上手にできたと思う。


「コラボ。悪くないかもしれません」


 活動の幅も広がるし、視聴者と会うのも楽しかった。やはり顔合わせしてのオフコラボがいいのだろうか、そうモコスは考える。そして直接交渉したからこそ、コラボ相手を上手く巻き込め、手間のかかる仕事をいい感じに任せることができた。


 もしかすると自分には交渉の才能があるのかもしれない。アンドロイドにも個体差はあるし、経験によって成長もする。

 交渉人ネゴシエーターというのはタフで尊敬される職業だ。個人、企業、果ては惑星間のトラブルまで。彼らは徒手空拳で、代わりに知識と経験を武器にして、何十億クレジットもの損失や、時には戦争そのものを食い止める。相手の嘘を見抜き、味方の本音を聞き出し、誰もが飲める落としどころを探り当てる。

 モコスは我知らずニマニマとしていた。未開惑星で揉まれる経験は、交渉人でなくともきっと重宝されるだろう。むろんモコスの現在の職業、交易商人としてもだ。


 宇宙怪獣に狙われた未開惑星に一人取り残された時は絶望したものだったが、地球は案外楽しかったし、生き延びた後の希望もこうして持てる。もしかすると一つの惑星を救った英雄になれるかもしれない。

 アニメの視聴を終えたモコスはそんなことを考えながら、次のコラボ先の選定に入っていった。



 ◇◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◇



「なあ。連絡は取れんのか?」


 南原社長が社員たちから離れこそこそと銀河そらにそう問いかけた。誰に、と口にしないだけの判断はあった。


「私とも秘密保持契約を結びますか、南原社長? 詮索無用とは自分が言った言葉ですよ?」


「しかしだな……」


「南原社長は事の重さが分かってないようです。月旅行と地球の滅亡、秤にかけるのもおこがましいんです」


「それはそうなんだが……」


 これはわかってなさそうだと、銀河そらはため息を付く。たった三〇分の切り抜き映像を見ただけではやはり理解が浅いのだろうか。それとも信じてないのか。


「あれだけのものを渡されたんですよ? これ以上望むのは欲張り過ぎです」


 社員たちはモコスの作った資料を手に手に大騒ぎをしている。


「だからこそだ。これで終わり。関わりはなしとはいかんだろうが。連絡先すら聞いてないんだぞ?」


 南原社長は義理を通したいのか。それともまだ何か聞き出したいことがあるのか。銀河そらには判断がつかなかったが、モコス様に手間もリスクもかけさせるわけにはいかないと考える。


「超光速航行ができる宇宙船を所有している宇宙人からすればたかが月ロケットです。それともあんな小さい子にもっと頼らなければ月にも行けませんか? 地球人はなんて原始的で未開なんだって笑われますよ」


 とにかくこれ以上モコス様に関する話はしないと、銀河そらはまだ何か言いたげな南原社長にあえて煽るような言い方をする。


「それはそうとそろそろ帰ってもいいですかね? もう私がすることもないでしょうし」


「待った。君、銀河そらに別口の提案がある。ああ、もちろんこれはあのお嬢ちゃんは無関係な話だ」


「なんでしょう?」


 警戒もあらわに銀河そらが言う。


「銀河そらに依頼だ。うち、南原宇宙技研の公式のアンバサダーにならんか? 一度きりの案件じゃない。継続的な仕事だ」


 予想外の提案に銀河そらはすぐには反応できなかった。いい収入になる案件はほしいが、さすがにこの段階での提案は、南原社長の下心が透けて見えすぎている。


「今日みたいな現場実況はもちろんだが、うちの顔として色々なイベントに出たり、公式キャラとしてグッズ化してもいいな。次回からは大手通信会社の衛星の打ち上げが正式に始まる。美味しい仕事だぜ?」


「それは……興味がないでもないですけど……」


「報酬はもちろんたっぷりと弾む。とりあえず年間契約でこれくらいでどうだ? もちろん経費は別だ」


 銀河そらはその数字を聞いて目を見開く。年間一二〇〇万。毎月一〇〇万円。銀河そら程度のVtuberには破格過ぎる申し出である。


「うち以外での活動の制限もしないし、他の要望もあれば聞く」


「私を籠絡したってモコス様には取り次ぎませんよ?」


 実際のところモコスと銀河そらは今日顔を合わせたばかりで、仲がいいかというとそんなこともない。下手したら一回限りのコラボで終わることも有り得るのだ。銀河そらがやらされたことも考えると、それなりに役に立つ人材として優遇してもらえるかもしれないが、宇宙人のことは銀河そらにも判断がつかないのだ。


 ただ銀河そらは思う。縁もゆかりも無い地球を、漫画やアニメが面白かったという理由で、生命のリスクを負ってまで救おうとする存在だ。あっさり切り捨てるようなことはしないと思えたし、たとえここであっさり切り捨てられたとしても、モコスを支援するという考えは変えるつもりはなかった。


「それでいい。だが繋がりは残しておきたい。それに俺が何も聞かなくても、事業の進捗とか、あっちが気になって何か言ってくるということもあるかもしれないだろう? 公式アンバサダーとしてうちの情報は君に流す。それは自由にお嬢ちゃんに話してくれていい」


 これだけのものをぽんと渡してきた相手だ。宇宙人だろうとなんだろうと、これだけの知識を持つ相手と少しでも話をしてみたかった。それにここまでのものを貰いっぱなしというのは性に合わないのも南原社長にはあった。


「まあ? モコス様に迷惑をかけないというのなら考えないでもないですけど?」


 これから大きく飛躍するのが確定している企業のアンバサダー。世界で二番目の、そして民間初の有人月飛行計画の広報担当。報酬も魅力的だが、仕事としても美味しすぎる。


「だけどまたゲストで呼ぶってこともあるかもしれないよな?」


「それは……聞いてみるくらいは……コラボはまたやりたいですし……」


 銀河そらはすっかりその気になっていた。チョロくもあっさり籠絡されたのだ。


「もちろん、こっちからは何も聞かない何も言わない。それだけは絶対守る」


 銀河そらは上辺だけ渋々といった風に頷く。なんだかお金のためにモコス様を裏切った気分である。

 

「月はまだ先だが宇宙旅行の席も用意しよう。あの嬢ちゃんは君が連れてきたんだ。それくらいの恩義はある」


 モコスから宇宙旅行の約束はしてもらってるとはいえ、これはこれでとても興味ある銀河そらである。 


「うーん。とりあえずモコス様の切り抜きを追加で見ましょうか。話はそれからです。下手に動かれて地雷を踏まれても困りますし、まずはモコス様の事情を完全に理解してください」


 南原社長は宇宙開発分野での国内最高クラスの権威である。何か言ったとして、銀河そらがモコスは本物の宇宙人だとか言うのとは重みが違う。

 迂闊に動かれてモコス様に迷惑がかかることだけは断じて避けなければならない。なにせ地球の命運がかかっているのだと銀河そらは考えた。

 いっそ最初の配信からか、七二時間耐久放送をまるごとでも見てほしいくらいだが、五、六時間分の切り抜きを見せれば、この男もきっと理解できるだろうと切り抜きを選び始める。


「いいぜ。だけどその前にものは相談なんだが……さっきの月の石、もう一回見せてくれ。少し!少しだけでいいから! あれって本物なんだろ!?」



 ◇◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◇



銀河そら『お疲れ様でした。今日は楽しかったです。モコス様は無事ご帰宅できましたか? モコス様が帰った後、技研は色々と大変でしたけど、みんな打ち上げの成功に上機嫌でした』


モコス『私もとても楽しかったです。コラボのお誘い、感謝です。次の打ち上げも成功するといいですね』


銀河そら『ですね。それとまたコラボをお願いしてもいいでしょうか?』


モコス『はい、ぜひともお願いします!』


銀河そら『モコス様のほうで私がご入用でしたらいつでも呼んでくださいね。ゲストでも雑用でもなんでもしますよ!』


銀河そら『ところで南原宇宙技研から公式アンバサダーの依頼が私のところへと……(長文以下略)』


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― 新着の感想 ―
交渉人とか英雄願望とか、アンドロイドなのに自分に酔ったり、人並みに承認欲求がある所がまた良いw
常識外れの説明を自信をもってやってくれるというのは、根拠を説明できない社員よりよほど心強いでしょう。 うまいこと周りを巻き込んでいきますね。
あああ… 「ナントイウミニクイ姿ダ コレガ人間カ……」 エンドの兆しが……
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