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最終話 繋がる未来

 どれだけ優秀でも、変えられないことがある。そう信じていた。

 屋上での自殺騒動から数日後、昼休みに晶はそんなことを考えていた。

 いつも昼休みになれば集まってくる鏡の取り巻きの姿はない。理由はきっと、新しく増えた友人にあるのだろう。

 晶は、横に立って会話に加わっている慎沢をみた。

 ロングヘアをバッサリ切ってボブカットにした彼女は、意志の強そうな大きな瞳を楽しそうに輝かせて、鏡と会話している。

 慎沢は晶の視線に気づくと、一転して表情を険しいものに変えた。


「……なによ」

「いや、なんかキャラ変わってない?」


 すると彼女は、高飛車なお嬢様がするように髪の毛を指で払うと、やはりさっきまでとは違う厳しい語調で言った。


「はぁ? 意味分かんないんだけど。ていうか感謝してよね。わたしのお陰で昼休みこうやって静かにしてられるんだから」

「いやまぁそうだけどさ……」


 彼女のイライラした表情は元が美人なだけあって、やたら高圧的にみえる。仲間だと思っていたクラスメイトの豹変に、鏡の取り巻き達は恐れ慄いて散っていってしまった。

 そもそもなんで髪型を変えたのだろう? そう思いながらみていると、意図に気づいたのか慎沢は神経質そうに毛先に触れた。


「別に失恋したから髪切ったとかそういうんじゃないから! 勘違いしないでよね! キャラがかぶるといけないから、切っただけなんだから!

「キャラ?」


 よくわからないが、イメチェンしただけということか。

 慎沢はキッと晶を睨むと、言った。


「負けないから!」

「それ、昨日も聞いたよ」

「なんですってぇ!?」


 このところ毎日聞いている。律儀に反応するのも飽きてきた。


「そんなんだから友達にいないのよ!」

「それとこれとは関係ないでしょ!?」

「まぁまぁふたりとも……」


 ふたり同時に鏡に視線を送ると、彼は体をすくませて小さくしぼんでしまった。

 このところ妙に騒がしくて、疲れる。晶は深く椅子に腰掛けて、気分転換にスマホの画面をつける。すると、通知で時間が来ていることを知った。

 晶は顔を動かして鏡の方をみる。彼は既に能力でそれを読み取り、立ち上がる準備をしていた。


「氷上さんも、来る?」

「うん」


 晶も立ち上がり、二人揃って教室を出る。

 目的地は別館の三階、あと一〇分程度で、そこでけが人が出る。

 二人連れ立って移動しようとすると、うしろに慎沢もついてきた。


「またぁ!? もう……なんであなたたちの行くところ行くところって事故が起こるのかしら……」


 晶はそれに、真実で返す。


「そういう未来がみえるから」

「妄想もいい加減にして」


 信じないのも、知っていた。前を歩く鏡が、楽しそうに振り向いた。


「まぁいいじゃない。楽しいし」

「鏡くんが楽しいのなら……いいけど」

「ときどき理解できないわ……」


 能力で繋がった不思議な関係の三人は、誰に言われたわけでも、操られたわけでもなく一緒に動く。

 それはきっと、運命というのかもしれない。晶は停滞していた日常が動き出す気配を感じていた。

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