消えた猫
家に帰る。
すると妻ちゃんがいない。
多少の抜け毛を残し、猫は消えていた。
僕はいそいで動画を確認する。
動画の画面には、リビングにいる妻ちゃんの姿。
だが次の瞬間――
映像の中央が、まるで熱気に揺らめく蜃気楼のように歪んだ。
「ぐにゃり」と空間が波打ち、妻ちゃんの姿はそこから静かに消えた。
カメラは、その消えた空間をただ静かに映し続けていた。
僕は家中を探した。
そして…
息を整え、最後に寝室のドアを開けた。
ベッドには、ぐっすりと眠る妻がいた。
柔らかな髪をわずかに乱し、丸く丸まって眠る姿は、まるで――
猫のようだった。
僕は胸を撫で下ろし、そっと彼女の頭を撫でた。
「おかえり――妻ちゃん。」
――――――――――――
僕は早く起きて
チーズケーキの準備をしていた。
妻は大きなあくびをして
一言
「チーズケーキ20分でできた?」
おもわず笑ってしまった。
やっぱり妻ちゃんは猫になっていたんだ。
僕はそれ以上なにも聞かなかった。
本当はいろいろ聞きたかったけど
物語には余白が必要だ。
それは作家の僕が一番知っている。
妻ちゃんが言いたくなった時でいい。
僕はそこまで待つことにした。
―――――――――――
私が猫になってから
夫ちゃんは以前より私を大事にしてくれるようになった。
もちろん
以前も大事にしてはくれていたけど
お互いの気持ちが通じるようになった―
そんな気がする。
私はというと
ついつい語尾に「にゃ」がつく
後遺症に悩まされている。
夫ちゃんは
以前より世話焼きになった。
少しの間だったが
癖になったのだろう。
もしまた夫ちゃんが私を放置すれば
また私は猫になったりするのだろうか?
それはわからない。
そもそも猫になった条件がわからないからだにゃ。
でも夫ちゃんは
「もう猫になるような寂しい想いはさせないよ」
と優しく抱きしめてくれる。
なので
この事件の顛末は寂しさから猫になったと結論づける
のがお互いにとって幸せなのかなと思う。
でも時折夫が不思議なことをいうにゃ。
ふと猫の鳴き声が聞こえた気がした。
と…
END
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この作品は完結していますが、
反響があれば続編を書く可能性があります。
ブックマークしておくと、もし更新された場合に追いやすくなります。
■坂本クリア作品
異世界・現代・コメディなど様々な物語を書いています。
次に読む作品はこちらから探せます。
坂本クリアの小説まとめ|全作リンク集
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/2898515/blogkey/3591538/




