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「瀬斗・・・」
「ん?」
帰り際、佐崎が不意に声をかけてきた。
「ありがとな」
僕は照れくさくなって、空を見た。
「僕ちゃんと明日から学校行く。生徒会・・・どうにかするから」
佐崎の声に、僕はしっかりとうなずいた。
「ごめんなさい」
次の日の放課後、佐崎は深々と頭を下げて謝った。
「・・・いいよ」
そういったのは、中田だった。
「私たちも、裕介のこと何にも考えてなかった。ゴメン」
「僕も、佐崎のこと考えてなくて、勝手に怒っちゃって・・・」
「私も、裕介君信じてあげられなくてごめん」
「私も」
「俺も」
みんなが口々に佐崎に言う。
「ありがとう」
僕らの部屋に、笑顔が戻ってきた。
後は・・・生徒会を取り戻すだけだ。
僕らは全員そろって職員室に向かった。
「生徒会を存続させてください!お願いします!」
僕らは校長先生に頭を下げる。
周りにも、たくさんの先生がいる中で、僕らはひたすら頭を下げた。
「ちょっと待て君たち、問題ばかり起しておいて、そんな言い草がよくも出来るな」
教頭が横からすすすっと現れて、僕らの間に入った。
「後始末させられる、先生たちの気持ちも考えたまえ」
それでも、僕らは頭を下げ続けた。
他に、どうしようもなかったから。
「大体、今まで君たちがやってきた行事だって、個人の思い上がりじゃないか。
生徒たちが、本当に楽しんだのかね?」
教頭が僕らを見下ろしている。
「思い上がりで勝手に動いてもらったら困るんだよ」
・・・思い上がり。
確かに、僕らの行事が楽しんでもらえたのかは分からない。
でも、僕らは必死に働いた。
みんなが楽しめるように、働いた。
それは、変わりようのない事実だ。
「もっと先生に頼らずに出来るようになってから出直してきなさい」
頼る・・・?
未熟者の僕らが、何にも頼らずに生きていけるわけがないじゃないか。
そこを指導してくれるのが、先生じゃないか。
教頭、逃げないで下さい。
責任だ、といわれることを、避けないで下さい。
それが、教師だから。
僕は、先生たちを信じます。
だから、先生たちも、僕らを信じてください。
「先生、僕らを信じてください」
無意識に、思いは言葉へと変わっていた。
「何?」
「僕らは、先生を信じます。だから、先生も僕らを信じてください。お願いします」
「お願いします」
「だからなぁ、われわれは、君たちをちゃんと信じて・・・」
「僕らを信じるのなら、逃げないで下さい」
そういったのは、佐崎だった。
「逃げないで、ちゃんと前を向いてください」
教頭の顔が険しくなる。
「とにかく、無理なものは無理・・・」
「ちょっと待ってください!」
不意に職員室のドアが開いた。
そこにいたのは・・・
「水野君・・・」
息を切らした水野君だった。




