表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学校と僕。  作者: 奏良
PR
48/52

47

僕らはバスに揺られて隣町に行った。

「こんなに近くに住んでたんだよ、僕と父さん」

「ホント、求めていたものが、こんなに近くにあったんだね」

僕が求めているものは、ずっと遠くに行ってしまった。

だから、佐崎が求めているものを、必死で守ってやりたい。

僕は心からそう思った。

「・・・」

佐崎が急に無言になる。

「・・・ダイジョウブ、僕らがいるよ?」

僕がそう言おうとしたとき、バスが止まった。

僕らに緊張が走った。


バス停のすぐそばに、佐崎の親父さんの家はあった。

「・・・」

僕は佐崎の背を押した。

佐崎がためらいがちにインターホンを押す。

その手が震えているのを、僕は見のがさなかった。

「ダイジョウブ」

僕は佐崎につぶやいた。

ダイジョウブ。僕らが付いてる。

「はい」

中から、太い男の人の声が聞こえた。

「どちら様・・・」

ドアが開き、中の男の人が佐崎を見た。

「またきたのか」

そういう親父さんさっきの心優しそうな声とは全く違う、冷たい、氷のような声だった。

そう・・・仲直り前の泰葉のような・・・

僕は一歩前に出る。

「始めまして、僕は梶谷といいます。裕介君の友人です」

「俺には関係ないことだ」

「自分の息子のことが、関係ない分けないじゃないですか」

僕の言葉に、おじさんが一瞬硬直する。

「・・・玄関先で騒いでると目立つからな、中に入りなさい」

僕らは家に入る。

僕はちらりと佐崎を見た。

緊張した顔で、肩が小刻みに震えている。

僕はそっと背中をさすった。

ダイジョウブ。僕らがついてる。


「何故また家に来た?しかも、友達まで連れて・・・どういうつもりだ?」

「・・・言わなきゃいけないことがあるから」

「言わなきゃいけないことぉ?」

おじさんは心底バカにしたような口調で言った。

「僕は・・・僕は、あなたの息子だ」

「はっ、オマエの母親と離婚した時点で、お前はもう俺の息子じゃないんだ。たわごとはいい加減にしろ」

僕はその言葉にカチンと来た。

「ふざけないで下さい」

「はぁ?」

「何故認めないんですか?裕介君は・・・佐崎は、あなたの息子でしょう?」

「他人に、そんな口出しされる筋合いはない」

「佐崎の気持ちはどうなるんですか?あなたの言葉に、佐崎がどれだけ傷ついたと思ってるんですか?佐崎は・・・佐崎は、ずっとあなたのことを信じていたんですよ?ずっと、ずっと、ただ、信じていたんです」

僕は続ける。

言葉が体中からあふれ出してくる。

「それを・・・平気で裏切ったんです。そんなことが、よくもで・・・」

「うるさい!」

おじさんが、僕の声をさえぎる。

「もう、親子じゃないんだ!」

僕はまた言い返そうとした。

でも、それを佐崎がさえぎった。

「僕はあなたの息子だ。母さんと離婚しようとも、僕と父さんは、血のつながった親子なんだ」

佐崎がきっぱりという。

「うるさい!・・・全く、若菜も何を考えてるんだ・・・今更こいつをよこすなんて・・・」

おじさんがぼそぼそとつぶやく。

「それは、おばさんが佐崎にはあなたが必要だと考えたからですよ」

「何ぃ?」

「佐崎は、あなたを求めている。せっかく血のつながった子供が近くにいるのに、何故見放すんですか?僕なんて、うらやましいぐらいです。大事な家族の一人が、すぐそこにいるんだから」

「・・・」

おじさんが黙り込んだ。

「僕は今でも、父さんを信じてる」

佐崎が続ける。

「だから・・・だから、父さん・・・」

「・・・帰ってくれ」

おじさんはボソリとつぶやいて佐崎の声をさえぎった。

「・・・」

僕らは無言で立ち上がる。

部屋を出ようとしたとき、不意に佐崎がおじさんのほうを振り返った。

「もう一つ、大事なこというの忘れてた」

佐崎はそういって、おじさんを見る。

「ありがとう。母さんと出会ってくれて、ありがとう」

僕は佐崎が語ってくれた「夢」を思い出した。

「・・・」

おじさんは無言で座っている。

その目から、涙が零れ落ちた。

小さな音を立ててドアが閉まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ