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学校と僕。  作者: 奏良
40/52

39

水野聡、1年4組。

家族構成:父、母。

性格:短気だが、根は大らか。


被害者・西谷清太(47)

家族構成:両親ともに他界、妻なし、子なし。

性格:臆病者で、流されやすい。

現在、意識不明の重体。


僕は、集った資料を読みあさっていた。

「この・・・被害者の人の意識が戻れば、犯人分かるのに・・・」

中田がとなりでつぶやいている。

「でも、こういうショックが大きいことは、記憶がとんでいることが多いんだ。意識が戻っても、人の顔は憶えていないんじゃないかな」

「うーん」

田口の指摘に、僕らは頭を抱えた。

「どうすれば、水野君の無実を証明できる・・・?」

そう江桜がつぶやいているのが聞こえる。

僕は方法を考えながら、佐崎の様子がおかしいのに気づいた。

さっきから、ずっとうつむいている。

この事件についての資料集めで一緒にいた昨日、一昨日は普通だったのに、今日は妙なほど無口だ。うつむいて、そう・・・上の空だ。

「佐崎?」

僕は佐崎に声をかけた。

「・・・え?」

「・・・」

反応が遅い。

佐崎らしくない。

「どうした?」

「いや、なんでもないよ」

佐崎が笑顔を作る。

でも、それが偽の笑顔であることなんて、バレバレだった。

「ダイジョウブだから」

「・・・」

僕はその笑顔に複雑な感情を憶えた。


「水野君に、直接会いに行ったらいいんじゃないか?」

和倉が提案したことによって、僕らは休みの日を使って水野君の家に向かっている。

「あわせてもらえるかな?」

「・・・無理かもしれないね」

僕はそんな江桜と如月の会話を聞きながら佐崎を見た。

今日もぼやーっとしていて、上の空。

僕は怪訝な顔をしながら佐崎を見ていた。


「ごめんください」

田口がインターホンを鳴らす。

「はい」

出てきたのは、水野君のお母さんだった。

「あら・・・聡の友達?ここで話すのもなんね。中に入ってお茶でもいかが?」

僕らは水野君の家に上がった。

掃除も行き届いていて、とても大きな家だ。

僕らは、おばさんに進められたソファに腰掛ける。

「・・・あの事件のことかしら?」

おばさんは、ティーポットをかまいながら聞いてきた。

「後輩なんですけど、ダイジョウブかなって思って・・・」

「そうね、あんなことしてしまった(・・・・・)んですから精神は安定していないかもしれないわね」

僕はおばさんの言葉に少しわだかまりを覚えた。

してしまった・・・?

「おばさんは、水野君・・・聡君のことを信じていないんですか?」

無意識のうちに、僕はおばさんに聞いていた。

「え?」

「聡君、否定してるんでしょ?」

「・・・」

おばさんは黙り込んでしまった。

次に口を開いたのは、江桜だった。

「何で信じてあげないんですか?してしまった、なんて・・・そんな言い方・・・ひどいじゃないですか!」

「おばさんだってね、色々と大変なのよ」

「一番大変なのは、誰にも信じてもらえない聡君ですよ」

和倉も言った。

「独りで孤独で・・・つらいのを我慢してるんですよ?」

「私は、聡のことをちゃんと心配してるの!余計なお世話よ!」

おばさんが取り乱して叫ぶ。

「ちゃんと心配して・・・行動してるわ!」

「・・・おばさんは、聡君のことを心配して、信じてるかもしれない。でも、聡君はそうは感じていない」

「・・・」

「聡君を信じてるなら、聡君の言い分を聞いてあげてください」

僕らは水野君の家を出た。


「水野君に合わせてもらうつもりだったのにな」

田口がそういって苦笑していた。

そうだ、当初のここに来た理由を、すっかり忘れていた。

「何か、言いたいこと全部ぶちまけちゃったみたい・・・おばさんに悪かったね」

江桜がそういっていた。

僕もそうだ。

いえなかったこと、全部おばさんに言ってしまった。

少し反省。

僕はそう思いながら、佐崎を見た。

さっきまでと、全然違う顔をしていた。

なんだか・・・そう、何か、大きな事を決心したような、そんな表情だった。

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