33
佐崎が帰ってから、おじさんとおばさんが来た。
ダイジョウブかいと何度も問いかけてくるおばさん、前よりずいぶんやせたようなおじさん。
泰葉の姿はなかった。
僕がにっこり笑って見せると、おじさんもおばさんも安心したように帰っていった。
「・・・」
時計を見ると、もう午前10時。
あんなことがあってから、ずいぶんと時間がたった。
頭部に巻いてある包帯に触れる。
泰葉・・・
何で、あんなことしたんだよ。
そのときだった。
不意に病室の扉が開いた。
「・・・泰葉」
たっていたのは泰葉だった。
泰葉は黙って来客者用のいすに座る。
「・・・」
沈黙が流れた。
「・・・ごめんなさい」
ちょっとためらった後、泰葉が頭を下げた。
「私から父さんと母さんを奪った奴が・・・なんてひょうひょうした顔してるって思ったら・・・憎たらしくなって・・・ごめんなさい」
泰葉はそういって頭を下げていた。
「・・・悪いのは、僕だ」
「・・・」
「僕、怖かったんだ。学校に行くのが。それで、逃げた。逃げて家に引きこもって・・・
父さんが言いたかったことも、何にも分からなかった。
今になって、やっと分かったんだ。お前にも・・・つらい思いばっかりさせて、ゴメンな」
泰葉が顔を上げた。
「ほんとに・・・ゴメン」
僕は泰葉を見て言った。
「・・・」
泰葉はしばらくうつむいた後、顔を伏せて泣き始めた。
「ち・・・違うの・・・」
しゃくりをあげながら、泰葉は言う。
「転校した学校で・・・いじめがあって・・・すごく仲良くしてくれた子がいじめられてたの・・・殴られたり・・・蹴られたりしてて・・・
私、見てることしか出来なくて・・・どうしたらいいかわかんなくて・・・自分自身がいやになって・・・学校行きたくなくなって・・・
そしたら・・・兄さんも・・・こんな気持ちだったのかなって、そう思ったら会いたくなって・・・でも、なんていっていいかもわかんなくて・・・実際会ったら、すっごく憎たらしくなってきて・・・あいつが不登校なんかじゃなかったら、こんな思いしなくてすんだのにって・・・
だけど・・・兄さんは、最後まで私のこと守ってくれて・・・なんか変な気分になって・・・
どうしたらいいかわかんなくて・・・ごめんなさい・・・」
泰葉はそういっていた。
僕は微笑むと、腕を伸ばして泰葉の頭に手を置いた。
泣きじゃくる泰葉を見て、僕は安心した。
やっと、泰葉の本心が分かった。
これからは、兄としてちゃんとするから。
ほんとに・・・ゴメンな。
僕は心からそう思った。




