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学校と僕。  作者: 奏良
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「泰葉・・・」

僕は泰葉が進んでいったほうへと歩を進める。

「・・・ぐ・・・?!」

不意に後頭部に衝撃が走る。

僕は地面に倒れこんだ。

「はははは・・・」

泰葉の笑い声がする。

「ばっかみたい。だまされやすいのね。ちゃーんとこっちについて来るんだもん」

「な・・・!」

腹部を蹴り飛ばされる。

蹴り飛ばしたのは、泰葉の近くにいた男だった。

「あたしはあんたに復讐する為にここにいたの。絶対来ると思ってた」

抵抗できない僕に、男たちは蹴る殴るを繰り返す。

苦しい。息が出来ない。

「兄面して、何よ・・・バカみたい・・・」

泰葉の笑い声が止まる。

やっぱり変だ。

きっと、僕に復讐したいってだけじゃない。

何かある。


「なにやってんだよ」

僕がかすれた声で泰葉にしゃべりかけようとした時、誰かの声がした。

「誰だ!」

男たちが叫ぶ。

「あんたらみたいなカスに名乗るほど僕はお人よしじゃあないですよ」

「さ・・・さき・・・」

にごった瞳で捉えた姿は、佐崎だった。

「餓鬼が一体何のようだよ」

「友達、返してもらおうと思って」

「は?友達?こいつか?」

そういって、一人の男が僕の背中を踏みつける。

「ぐ・・・」

「・・・」

佐崎が黙り込む。

男たちはその姿をあざ笑った。

「は!何もいえないってか?」

だが、佐崎は肩を震わせている。

「・・・僕の友達に・・・なにやってんだよ!」

佐崎が怒っている。

肩を震わせて、怒っている。

あのキャンプ以来だ。

「は、餓鬼が一人で何が出来・・・」

男の言葉がそこで止まった。

佐崎の背後から現れたのは、図体の大きい5,6人の男たちだった。

「・・・」

僕の周りの男たちの動きが止まった。

佐崎の後ろから現れた男たちが一歩前に出ると、あっという間に僕を取り囲んでいた男たちは戸口のほうへ逃げていく。

そして、泰葉だけが残った。

「・・・」

泰葉は何も言わない。

男たちが泰葉に向かっていこうとしたのを察した僕は、それを制した。

「や・・・めろ・・・」

「瀬斗・・・でも・・・」

佐崎が僕の目の前にしゃがみこんで困ったようにいう。

「だめだ・・・ぜ・・・たい・・・」

「でも、君の妹のせいでこうなったんだろ?いくら家族だって言っても、ここまでひどいことをされて黙っていろなんて・・・」

「だめ・・・だ!」

「・・・」

佐崎が黙って男たちにうなずくのを確認すると、僕はほっとして・・・気が抜けたとたん、意識が遠くなっていった。


「ん・・・」

目が覚めた。

「瀬斗・・・!」

「あ・・・佐崎・・・」

佐崎が顔を覗き込んでいる。

どうやら、ここは病院らしい。

「ダイジョウブか?」

「あぁ・・・ダイジョ・・・!」

頭を起こそうとすると、後頭部が鈍く痛んだ。

「・・・」

「無理、だめだからな?」

「うん」

幸い、命にかかわるけがはないらしく、痛みが引けば退院できるそうだ。

「ゴメンな・・・」

不意に佐崎が謝ってきた。

「え?何が?」

「もっと早く気づけなくてさ」

「いや・・・それより、何でやばいこと分かったんだ?」

「え、なんとなく」

「は?」

「なんとなく、瀬斗がやばそうだなって思って・・・知り合いのお兄さんに頼んで・・・」

まただ・・・なんとなく・・・

あのキャンプの下見のときもそうだった。

なんとなく、ちょっと見かけただけでやばそうだと・・・

「・・・ありがとな」

そういうと、佐崎はうれしそうににっこりと笑った。

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