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「泰葉ちゃんが、一昨日から帰ってきてなくて・・・一日無断でいなかったこととかあったから、友達の家に行ってるのかと思ったんだけど、誰も知らないって言うし・・・」
一昨日って・・・商店街で僕にあってから・・・
「一昨日、友達と、そうね、瀬斗君がいる町に行ったの。それで、ゆりちゃん・・・友達の子はずっと駅で待ってたんだけど、なんか用事があるって言ってたみたいだから先に帰ってきたのよ。だけど、泰葉ちゃんがずっと帰ってこないの」
僕はそのまま立ち尽くしてしまった。
泰葉が・・・僕にあったから?
まただ。
また僕のせいで・・・
「だから、瀬斗君も心当たりとか・・・難しいと思うけど、探してくれない?」
「はい」
「じゃあ、こっちもこっちで探してみるから、もうこっちの町に帰ってきてると思うんだけど・・・」
「はい」
それで電話は切れた。
僕が・・・僕があったから・・・
「本当に・・・馬鹿なんだから・・・」
あれは、このことを意味していたのか?
僕は制服のままで外へ飛び出した。
「・・・」
僕はとりあえず、泰葉にあった商店街へ行った。
人通りが少なくても、店の人たちがいつもにぎわっている商店街なのに、夜はすごく静かだ。
小さな明かりがともるだけで、闇に溶け込んでしまったような、そんな感じがする。
「泰葉」
僕は小声で呼びかけながら懐中電灯をかざした。
誰もいない。
僕はその近辺の公園や、駅、中学校を探したが、姿はなかった。
「泰葉・・・」
僕は去年写した家族写真を見る。
他に泰葉が大きく映し出されている写真がなかったからだ。
父さんも母さんも泰葉も僕も、にっこり笑っている。
僕が不登校になる前の写真だ。
この頃は・・・すごく仲がよかった気がする。
泰葉と笑いあって、一緒にゲームしたり、宿題を教えてやったりした。
僕が不登校になる前は。
「瀬斗?」
僕は不意に声をかけられ、我に返った。
「さ・・・佐崎」
「どうしたんだ?こんな時間に」
「いや・・・」
僕はごまかそうとしたが、佐崎の目が真剣になっていることに気づき、言った。
「妹が、いなくなって・・・」
「妹?」
「一昨日妹に会ったんだんだけど・・・そこから消息不明で・・・」
「え、その子か?」
佐崎が僕の持っていた写真を指差した。
僕はうなずく。
「僕も探すよ」
「悪いな」
僕はそういって佐崎に家族写真を渡した。
佐崎はあっという間に向こうのほうへ行ってしまって、僕は公園に残された。
早く、見つけなきゃ。
僕はそう思って、走り出した。




