26
前回あったのは両親の四十九日だったが、僕は顔を合わせられなかったので、引っ越してからは初めての対面だった。
「・・・」
泰葉は僕をにらみつけるように見ている。
「どうしたの泰葉?」
となりにいる友達らしい人物が、怪訝な顔をして妹の顔を覗き込んでいた。
「あ・・・なんでもないの、私、今日用事があるからさ、ゆり先駅行っといて」
「え、あ、ちょっと・・・」
泰葉は友達を押して駅に向かわせると、僕を見た。
「やっぱりここの近くに住んでたんだ」
泰葉の目は氷よりも冷たかった。
「何でここに?」
かすれた声しか出ない。
「ううん、ただ、両親殺した人殺しは何してるかなって思って」
「・・・」
僕は何も言い返せなかった。
「少しはやつれたりしてるのかと思ったら、全然普通みたいな顔してるんだもん。あんたのせいで父さんも母さんも死んだのにね」
泰葉は小声でせせら笑う。
「友達とここら辺のデパート遊びに来たから、ちょっと商店街寄ってみたら、本当にいたからびっくりだけどね」
妹はせせら笑いながら僕の横を通り過ぎた。
「本当に・・・馬鹿なんだから・・・」
通り過ぎるときに泰葉がそういった意味が、このとき僕には全く分からなかった。
寂しげな瞳にさえ、気づけなかった。
ただ、呆然と通り過ぎていく妹を見つめることしか出来なかったんだ。
いくら殺人者呼ばわりされようと、バカにされようと、僕はあいつの・・・泰葉の兄なのに。




