表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学校と僕。  作者: 奏良
10/52

「・・・」

部屋にいる佐崎君、中田さん、田口君、如月さん、それに名前のわからない二人の男女が、無言で僕を見つめている。

「・・・あの・・・状況が全くわからないんですけど・・・」

僕は口を開いて、全員を見渡した。

「え?状況?」

「状況って・・・」

「だから、君に執行部に入ってほしいんだよ」

「ね?」

「・・・」

「うん」

6人は一人一言ずつ言って(あっと、一人無言だった)僕をもう一度見た。

「だから、執行部だよ」

佐崎君があっけからんとした口調で言った。

だんだん6人のペースに乗せられてきている気がする。

僕はあわてて言った。

「な・・・なんで僕が・・・」

もっともな反論だと思う。

大体、転校早々執行部だなんて・・・おかしいだろ・・・

「会計の役があいてるのよ。数学得意でしょ?」

中田さんが僕を見る。

全く理解できない僕に、田口君が言った。

「うちの学校は、生徒会長、副会長二人、企画、書記、雑務、そして会計で運営されている」

田口君は、顔と同化している細い淵のめがねを押し上げた。

「選挙で選ばれるのは生徒会長と副会長。生徒会長は立候補が一人だったため、佐崎裕介に決定した」

「ちょっと、決定は決定だもん、そんな言い方しなくてもイイジャン」

佐崎君の小さな反論は田口君の鋭い目によって完全に消えた。

「副会長は、多数の立候補者があったが、中田筑紫と和倉担(わくらにな)が当選」

中田さんはまだ僕を見ていた。

和倉君は・・・何も言わない。制服を着崩していて、一見全く副会長に見えない。

さっき、一人だけ何も言わなかったのは和倉君だ。

「そして、その選出されたメンバーを執行部の「第二役」と呼び、第二役によって選出されたあとの4人を「事務局」と呼ぶ。

僕はその中の企画を担当している。いろいろな行事や運動の企画をするんだ。

書記は如月。雑務は江桜薫(えざくらかおる)。雑務は、様々な面で足りないところを補ったり、雑用をしたりする。我中学では、少々雑務と補佐の役が混合しているが・・・まあいいだろう」

江桜さんは満面の笑みで手を振ってきた。すごく明るそうな雰囲気の人だ。

田口君は言葉を切った。

「そして、会計には君が適任だと、満場一致で決定した」

生徒会室内から拍手が起こる。

「ちょ・・・待って、何で僕なのかっていう質問に答えてもらってない!」

僕は顔の前で手を振った。

「大体、数学は得意だけど・・・でも、もっとすごい人いるだろ!」

「瀬斗、君が違うからだよ!」

佐崎君が僕に熱い視線を向ける。

「教室に入ってきたとき、直感で感じたんだ」

「直感って・・・」

僕はだんだんくらくらしてきた。

「あのね、梶谷君」

中田さんは立ち上がった。

「は、はい」

僕は反射的に気をつけの体勢をとった。

「拒否権はないの。それに、グダグダ言ってる場合でもない。あなたは会計、これは決定した事実なの」

「・・・」

僕は何も言い返せなかった。

みんなの笑顔を背に、僕は生徒会室を出た。

角を曲がったところの廊下でへたり込む。

出来るだけ・・・出来るだけ人と壁を作っておきたかったのに・・・

なんだよ・・・これ・・・

僕はうなだれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ