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 ナイショのお話 その3



俺、ヘルヘーレンは若い頃他国に居た。あぁ、いや、今も若いだろとかそういう話してないんで黙ってて。







幼い頃は危ない連中と一緒に暮らしていた。とは言っても、食事や寝床の心配が要らなかったって程度だけど。

朝起きて食事をもらった後は放置されるから、靴磨きや皿洗いなんかをして金を稼ぐ。俺の場合は楽器もちょろっと出来たし、ちょい金持ちの家で皿洗いした日は食後の団欒の時間に何曲か弾いたらお小遣いをもらえた。


庇護してたのは危ない連中だったけど稼いだ金を取られるのは半分だけで、食事もちゃんとした量を食わせてくれて、そこそこいい奴等だったと思う。

家で危ない話をする時は金を渡されて「朝まで帰ってくんな」って追い出される。ガキの頃は分かってなかったから腹立ったけど、金渡す辺りがいい奴等だよな。







ココまでなら普通のガキっぽく聞こえるんだけど、残念ながら普通じゃなかったんだよね。

俺の母親の家系がちょっと特殊で……まぁ……早く言えば魔物だかの血が混じってるらしい。ホントかどうかとか、そのせいかとかは知らないけど俺くらい髪や目が赤いのは珍しいんだって。混じりっけがないっつーの?この燃えるような色が昔から嫌いだった。



でもさ、何年かすると魔物の血ってヤツにも納得出来たんだよねー。

毎日とか周期的とかじゃないんだけど、気付いたら無性に血が見たくてたまんない時があるんだ。

好みで言うなら男よりも女、大人よりも子供。特に5才とか6才とか、遊びたい盛りの子がいいな。


別に男よりも女の方が殺しやすいからとか、大人よりも子供の方が肉が柔らかいからって理由じゃない。もちろん血も見たいんだけど、もっともっと見たいのが殺される瞬間の絶望した顔。愛される事や親の温もりしか知らない幼い子供の、恐怖に泣き叫ぶ顔がたまんない。



俺さぁ、音で物が操れるのよ。

音さえ届けば同じ部屋に居なくてもいいって事。夜寝てたら誰も居ないのに刃物が襲ってくる光景を想像してみなよ。それって……どんだけ怖いんだろうなー。







そんな事を繰り返してたら、ある日ヘマしちゃった。アレ成功させてたらめちゃくちゃ楽しかったんだけどなー。ホント残念。


何才くらいの頃だったんだっけ……もう覚えてないなぁ。多分式典とかがあったんだろうね、俺の国に来てたグランツがアイトと歩いてたのを見かけたんだ。お忍びってヤツ?

場所に合わせたようなボロくさいローブで隠してたみたいだけど、俺以外にも金持ちだって気付いた奴は居たと思うぜ?


最初は変なの居るなーって見てたんだけど、興味本意で跡をつけたのがダメだったんだよね…。後ろを歩いてるうちにいつもの発作が出ちゃって、恐怖に歪んだ顔が見たくなっちゃった。

まぁ、当然失敗したんだけどさ。



何故かグランツに気に入られて一緒に来いって言われて、一応保護者達が居て勝手に消える訳にいかなかったから一度帰って軽く話したんだ。そしたら食費程度は減ってたみたいだけど今まで取り上げた分の金を返してくれて、餞別代わりだって新しい……といっても中古の楽器も買ってくれた。

最後までホント、いい奴等だった。







なんやかんやで気付いたら城の前なの、笑えるだろ?出迎えはコーテーヘーカってヤツだしさぁ。

契約書を見たら何かあれば責任は取るから俺の好きなようにしていい、みたいな事が書いてあんの。ふざけんなよって思ったね。


半年……くらい?イソーローして何度か襲撃してみたんだけど、ムカつくくらい隙がねぇの!!背後からとか寝てる時とか頑張ったのにさぁ!!

半年も失敗すれば流石に諦めたよ、諦めましたよチクショー。グランツは遊んでた程度の認識だったって聞いた時にイラッとしてナイフ投げたけど諦めたよ。



えっ?それから?

国内外をフラフラしながら面白そうな情報仕入れてグランツに渡したり、発作が起きたら気まぐれに殺人鬼やったり?うーん……いろいろかな。







あぁ、そういえば聞いた?“沈黙の民”殲滅作戦。皇帝暗殺の情報を仕入れたのは俺なんだよね。まさかアレが仕組まれていただなんて思わなかったよ。しかも、あんな小さな子供に踊らされてたなんて…さぁ。


あの子を……トレーネ君を初めて見たのは、たまたまだった。いつものように集めた情報を届けに屋敷へ行った時、庭師の手伝いをしている姿を遠目に見たんだ。

ホントびっくりしたよ、滅ぼされた筈の“沈黙の民”がグランツのテリトリーに居るなんてさぁ。だって俺、彼処に行くの皇帝暗殺の情報届けて以来だったし。


接触してみたら普通の子供だったのに、あの姿で“沈黙の民”の長とか……すっかり騙されたなぁ……。



でも、残念な事に気に入っちゃったんだ、あの子供を。

しっかりしてるのに危なっかしくて、芯があるのに脆くて、残酷なのに無邪気で。

矛盾ばかりの子を、気付けば目が追い掛けてる。ついつい手を差し伸べちゃう。


グランツとアイトもでしょ?知ってるよ。


でも……でもね……気に入ったのと同じだけ、あの子を殺したくもなるんだ。

ナイフを向けたらどんな顔してくれるのかなって考えるとワクワクするけど、きっと君は殺される事を受け入れるんだろうね。ごめんね、ソレは面白くないなぁ。







「トレーネ君!!」


「あっ!レンさん、おかえりなさい!」


「うん、ただいま」







もう少しだけ。


もう少しだけ、俺と仲良くなって。


もっと生きたいと思ってよ。


その時は必ず俺が殺してあげるから。


……もう、少し…。







もう少しだけ、君と過ごしたいな…。

閲覧ありがとうございます。





明けましておめでとうございます。

昨年は大変、大変お世話になりました。今年もよろしくお願いします。





Twitterではチロッと言いましたが、今年は少し早いですけどお休みさせていただきます。本当にすみません。


次話で長編を予定してますが、コレが前後編になるのか前中後編になるのか、ちょっとずつ書きながら調整してます。

が…………もう前後編と前後編の2回に分けちゃおうかなー(←面倒くさくなってきた)


もしかしたら現実逃避に番外編とかアップするかも知れませんが、次話は2周年記念になります。


6月にまたお会いしましょう。

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