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先生はESPでストーカー  作者: 依馬 亜連
本編

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10/40

10 「男はみんなおっぱい好きだろ!」

 この年頃の若者──特に男子生徒は、色々と持て余している。

 主に、異性に対するアレやコレを。


 今日も今日とて六斗は、クラスメイトたちと教室に居座っていた。

 彼らが囲む机の真ん中には、数種類の雑誌が広げられている。

 いずれも肌の露出が過多、あるいは生まれたままの姿の女性の写真が、多数掲載されている。


「あー、こんな後腐れなさそうな姉ちゃんと、色々してぇー!」

 胸を前へ突き出したモデルの微笑に、男子生徒の一人が絶叫する。


 六斗も鼻息荒く、隣の雑誌に食いつく。

「ウヒョーッ! おっぱいでけぇー!」

「お前ら、ちょっと静かにしろよ。先生に見つかるって」

 一人が笑いながら諌めつつ、六斗の食いついた写真をのぞきこむ。


「でも六斗って、おっぱい好きだよなぁ」

「うんうん。おっぱい星人だよな」

 半笑いのクラスメイトたちに、六斗は握りこぶしを作って力説する。


「何を言う! 男はみんなおっぱい好きだろ! お前らだって、おっぱい吸って大きくなったクチだろー!」

「それは女子も一緒じゃん」

 一人が六斗を指さし、苦笑する。


 別の雑誌を独占していた友人が、不意に声を上げた。

「おっ? 女子って言えばさ……このモデル、ちょっと露芝に似てね?」

「マジですか!」

 六斗が、本日一番の食いつきを見せた。


 雑誌を奪い取り、血走った目で写真を凝視する。

 浴衣姿で寝そべっているモデルは、和的かつ優しげな顔立ちがどことなく、十和を彷彿とさせた。


「うーん……十和ちゃんに似てるっちゃあ似てるけど、まぁまぁ、かなぁ……エロス度は八十点だけど」

「ホントに今、露芝がお気に入りなんだな」

「うん。あのおっぱいが理想的。ありゃ、将来国宝になるね」


 大真面目に馬鹿を言う美少年に、一人が失笑。

 隣の友人も呆れ顔だ。そして、少し眉を潜めた。


「でも露芝って、めっちゃガード固いだろ? おまけに、超怖いセコムついてんじゃん」

「そうそう。神出鬼没の鬼セコム」

 男子生徒全員の脳裏に、眼光鋭い美術教師の姿が浮かび上がる。

 そして、揃って身震いした。


 しかし六斗は、机の上であぐらをかいて笑う。

「いやー、だからこそムキになっちゃうんじゃないの! ってか俺、この前十和ちゃんのブラジャー見ちゃったしー」


 このカミングアウトには、その場の全員が沸き立った。

 地響きのような歓声が上がる。


「いつだよ! ってか、どんなシチュエーションで見たんだよ!」

「着替え覗いたのか?」

「ひょっとして、ヤッちゃったのかよ! 嘘だろ!」


 優越感たっぷりに、六斗は整った顔をにやけ面に変える。

「へへへー、知りたい?」


 うんうんうん!

 男子生徒たちはすかさず何度もうなずき……途中で固まった。

 まるで石化したかのように、肌まで色を失っていく。


 お調子者の六斗は、そんな異変に気付くわけもない。

 へらへらと笑いながら、得意げに続ける。

「それがねー、この前、たまたま家にお邪魔したっていうかさー。ちょっと色々、俺と十和ちゃんの間でありましてねー、ムフフ」


 勿体ぶって話す彼の肩を、誰かが叩いた。

 いや、掴んだ。

「なんだよ! いってーなぁ!」

 その痛みに口を尖らせて六斗は振り向き、たちまち友人たちと同じように凍りついた。


 そこには鬼セコム改め、三潮がいつのまにか仁王立ちしていた。

 酷薄な印象を与える三潮の面立ちには、もはや一片の慈悲さえ見当たらない。


「随分と、楽しそうだな?」

「あ、あははは……みっちゃん、先生ぇ……」

 空笑いでごまかそうとするも、六斗の肩を掴む手は揺るがない。むしろ更にギリギリと、万力のように締め付けてくる。


 その力に、再び六斗が悲鳴をこぼした瞬間。

「あっ!」

 クラスメイトたちは思わず声を上げた。

 現れた時と同じように、三潮が唐突に消えたのだ。

 六斗と共に。


 後日六斗は、長崎県・五島列島の集落にて発見される羽目となった。

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