拝啓、明日の君へ
「悠介……?」
目が覚める。
浩介は、夢の中で悠介に会った様な気がしていた。
愛を囁かれた様な気がした、この部屋で、寝ている間に。
「んー、電話?」
スマホがなっている、何か病院から電話が来た様子だ。
「坂崎さん、残念ですが、坂入さんは……。」
看護師の言葉を聞いて、理解した。
悠介は、最後に会いに来てくれたんだ、と。
「……。すぐに向かいます。」
僕も、ずっと愛しているよ、悠介。
どこに行ったって、誰に転生したって、気っと見つけてみせるよ。
「悠にぃ!」
心電図の止まった音を聞きながら、浩介と悠治は悠介の死を聞いていた。
悠治は取り乱して泣いていたが、浩介は泣いていなかった。
ただ、やせ細った悠介の頬を撫でて、一言告げた。
「ありがとう、悠介。」
浩介は笑う、悠介はきっと、そうして欲しいと願っただろうから。
「ねぇ浩にぃ、結局、悠にぃは何を手紙に書いたんだろうね?」
葬儀が終わって、悠介の遺品を整理している時、ふと悠治が声を出した。
葬儀には、ファンレターをくれていた子達や、その家族、そして編集である相田などが来てくれた。
悠介の家族には連絡をしなかった、それは、悠介が望まなかっただろうと思ったからだ。
遺書には、遺産の相続は全て浩介に、と書かれていたし、事務的な事を弁護士に依頼して、そちらに任せている状態だ。
浩介と悠治は、忌引き休暇をもらい、こうして悠介の遺品を整理していた。
「うーん……。」
「読んでみたら?」
「そうしようかな。」
遺品の整理を悠治に任せ、浩介は悠介から送られてきた手紙を、古い順番に読んでいく。
「浩介、俺は死ぬのが怖い、でも、仕方のない事なんだ。だから、幸せになってくれ。」
そんな事を書いていた、最初の方。
「浩介、もう、死ぬのは怖くない。ただ、浩介と悠治を置いて逝くのが悲しい。」
死を覚悟したのか、真ん中はそう言った語り口。
「愛してくれて、ありがとう。俺も、ずっと愛してる。」
最期の手紙、昏睡する前日に綴られた、たった一言の手紙。
「……。馬鹿悠介……。」
「浩にぃ?」
「ううん、何でもない。さ、整理終わらせちゃおう。」
やっとわかった気がした、悠介が、生涯を掛けて話したかった事が、小説にまで書いて伝えたかったこ事が。
それは、他の誰でもない、浩介の為なのだと。
六年間もずっと、となりで見て来たはずなのに、十四年間もずっと、一緒にいたはずのに。
今更になって、悠介が伝えたい相手、が誰かが分かった。
「刊行されましたよ、タイトルはあれで良かったのですか?」
「はい、部外者のわがままを聞いてもらってありがとうございます。」
「他の誰でもない、坂崎さんの願いですから。坂入さんもきっと、喜んでいらっしゃいますよ。」
拝啓、明日の君へ。
綴られた言葉にどんな意味があったのか、どんな想いで書いたのか僕にはわからない。
でも、君がそう言ってくれるのなら、僕も……。
僕も、生きていこうと思う。
君の分まで、きっと。
またいつか会えたら、頑張ったなって言ってくれる様に。
だから、安心して眠ってね。




