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十六 答え

ふと気が付けば、俺は自分の部屋で目を覚ました。



 慌ててスマホを探し出し、電源を入れる。



九月一日と画面に表示され、時刻は夏休み前に起きていた時刻を指していた。



 俺はそっと胸を撫で下ろし、先ほどまで見ていたものが夢であると、今ここは現実であると、少しずつ実感していった。



 朝食を食べ、朝の支度をし、家を出る。人通りの少ない通学路を歩いて、誰も周囲におらずまだ開いていない校門の前に着いた。



 俺の気がかりは、ただ一つ。



果たして、彼女は来るのだろうか。



 時計の針の進みが、非常に遅く感じられた。一秒は二秒に、一分は二分に。



守衛さんが待機している小屋の正面に掛けられた時計の音がはっきりと聞こえるほどの静寂。風で揺れる葉、自分の心音。そう言った本当に小さな音が、やけに大きく感じた。



 だからだろう。地面を叩く、軽やかな足音が聞こえてきた時、俺の胸は高鳴っていた。



「栄治」



 聞き慣れた声が聞こえ、俺はその声のする方へ顔を向けた。



 一人の少女が、軽快に走りながらこちらに近付いてきていた。



「咲」



 俺は校門前で待っていられず、彼女のもとへと走り寄った。彼女の目の前で足を止めると彼女も立ち止まり、軽く息を切らしながら乱れた髪を手で直していた。



「「おはよう」」



 俺達は、しばらくの間見詰め合っていた。



「・・・・・・栄治、何かいいことでもあった?」



「いいこと、なのかな。大変な夢を見たよ」



「そうなの? なんだか嬉しそうだけど」



 嬉しそうな顔をしてしまっているのは、きっと、君に会えたからだ。



 俺はあたりを見渡し、周囲に人が誰もいないことを確認した。深く息を吸って、ゆっくり吐き出し、その後、咲と向かい合い直した。



「今から、かなり意味不明なことを言います」



「は、はい」



 俺が改まった様子で突飛なことを言うので、彼女は困惑気味に佇まいを整えた。



「五月の終盤頃に、俺は、君に瓜二つの女の子と会ったんだ」



 咲は驚くこともできないのか、ただ真っすぐにこちらを見詰めていた。



「始めはその子を咲だと思って、好きになってしまった。咲よりも早く。でも別人だとわかって、すごく悩んだんだ。そして、やっぱりその子自身が好きだったんだってそう思った。でも、その子はいなくなった。そこから、その子の影を咲に求めてた。でもいつの間にか咲自身を好きになってたんだ。・・・・・・その、何を言っているのかわからないと思うけど、以前別の子を好きで、ていうか多分今も好きだけど、咲のこともすごく好きだって思ってる。いや、正直何言ってんだって思うだろうし、わけわかんないと思うけど、一応咲にも知っておいて欲しくって」



 ふふっと、彼女は笑った。次第にその声は大きくなっていき、やがては本当に心から嬉しそうに、大きな声で笑い始めた。



 そして、少しずつ笑い声を抑えていきながら、ぽつりと「嬉しい」と彼女は呟いた。



 笑いが完全に収まった後、彼女は満面の笑みで俺を見た。



「そんなに私のことが好き?」


物語はここで完結です。

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