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第一話 事の始まり

「良かったら、、化学武器専門学校に通ってみないかい?」


「はい?」


 高そうな黒いスーツを着用したダンディなおじさんは、私に向かって確かにそう言ったのだった。


事の始まりはこうである。


 私は今年の三月に中学校を卒業した。でも、家は貧乏だし両親もいない。そんな私の選択肢は一つ。そう働くことだった。そして、直ぐにバイト募集の紙に電話をかけ、見事採用されたのである。その次の日から私は電気製品を扱うお店でバイトを始めた。


 そのお店での私の仕事は、裏方に属するものだった。私は元々愛想の欠片もない人間なのだから、接客業はハードルが高すぎる。そんなこんなで、私は毎日電球を取り換えたり、品物を補充したり、そんなに忙しくもない、それなりに充実した毎日を送っていた。


 ところがある日、何故か店のすぐ近くでモンスターが現れた。近くにいた人たちが悲鳴を上げて逃げる中、私は使えそうな木の棒を手に取ると、紅い蟷螂の様なモンスターに攻撃した。


 確か授業で習った時の資料では、人間と急所がとても似ているモンスターだと覚えていた。木の棒を槍のように構えて、私はトーンとモンスターの上空に飛んだ。そして、人間でいう首間接辺りに、私は木の棒を叩き込むように刺した。


「ぐぎゃああっ!?」


モンスターが悲鳴を上げるのと同時に、私は地面に着地し一旦距離をとった。


 まるで苦しんでいる人間のような声を出すと、モンスターはさらに暴れ始めた。周りに植えてあった木々をなぎ倒す様子をチラリと眺めて私は眉を顰めた。


「やっぱりただの棒きれじゃ、急所に当てても一撃は無理か。」


 化学武器を持っていない私では、モンスターをあっさりと倒すことはできない。急所を当てない限りモンスターを倒すことは出来ない。基本的に化学武器以外で攻撃しても、急所に当てないとダメージはゼロである。ここまで言えばわかるだろうが、私がどんなに攻撃しても、それらすべてが急所に入っていなければ何のダメージにもならない。


 私はさっきと同じ場所から木の棒をとると、次は軽く勢いをつけるためにブンブンと振る。そして助走をつけると、一気に走り出す。そして、思いっきり木の棒を振りかぶり、モンスターの頭を粉砕した。


 流石に頭部を砕かれ、首間接には木の棒が刺さっている。そうなれば雑魚モンスターである此奴は身動きが取れない。


 私はふうっとため息をつくとその場に座る。ああ今日も疲れた。するとパチパチパチと私を笑顔で見ながら拍手を送っている人物がいた。高そうな黒いスーツを着用したダンディなおじさんだった。おじさんの後ろを見れば、黒い色の如何にも高級そうなリムジンがある。


何だか凄く怪しい人だな。第一印象はそんなもんだった。


「凄いな。まさか化学武器も無しに、それも木の棒でモンスターを倒す人物にお目にかかれるとは、驚いたよ。」


おじさんは私に距離を詰めながらも、話を止めずにそのまま話し続ける。


「そこでだ!良い物を見せてくれたお礼に君の願いを一つ聞いてあげよう。」


 その問いに私は悩んだ。そして信じていいものかよくわからなかった私は、思い付きの提案を上げた。


「なら、あそこのお店の商品で、適当に使いそうなのとか買っていってください。」


そう言って、私は自分が働いている店を指さした。


「そんなことでいいのかい?」


おじさんは驚いた後、少し考えるような仕草をしていた。あれかな、考える人のポーズをとっている。決まったのか、顔を上げると私を見て、


「よし!買おう。」


と言って私の手を掴みお店の中へと入って行った。


「いらっしゃいませー」


 店長さんが接客をやっていた。帰ったはずの私を見てお驚いた顔をしていたが、笑顔で私に耳打ちしてきた。


「この人知り合い?」


「いえ、でも商品は買ってくれるっぽいので、適当に案内してあげてください。」


私の対応に苦笑いすると、思い出したように店長はポンッと手を叩いた。


「そうだ!電球がちょうど切れちゃったみたいなんだよ。今から行って直してもらえる。あそこなんだけど。」


 そう言って店長は、カウンターのすぐ近くを指さした。その指を追って上を向くと、そこには今にも電気が切れそうな状態の電球があった。時折どころか一定時間点滅しては消えるを繰り返している。


「確かに、これでは仕事に支障をきたしますね。」


 私は急いで、裏方の梯子を持ってきた。その場に設置して上に移動して、キュッキュと黄色い明かりのついた電球を外した。外し終えて、店長に切れた電球を渡すと、さっきのおじさんが私を驚くほど凝視していることに気が付いた。


 まるで宝くじでも当てたような輝かしい笑顔に、私は若干引いた。そんな様子の私にお構いなしに、性懲りもなくまた近づいてきた。今度はいったい何なんだろう?と考えていると、今度は片手ではなく両手でガッシリと手を握り締められた。そして、


「良かったら、化学武器専門学校に通ってみないかい?」


「はい?」


と言う展開に至ったのであった。

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