プロローグ
本作では、情景描写や文章表現、人物名の案出しなどにAIを活用しています。物語の世界観・設定・ストーリー構成は作者自身が考案しています。AIが考えた展開ではありません。
かつてこの世界では、人間と魔族の間に戦争が繰り広げられていた。
土地を巡る長きにわたる争いは、一人の救世主の出現によって終局を迎える。
救世主は魔王を封印し、人間はついに勝利を収めた。
しかし、長きにわたる戦争が世界にもたらした傷跡はあまりにも深かった。
森は焼き払われ、河川は干上がり、大地は裂け、草木の生えぬ荒野が広がっていたという。
国々の争いが絶えることはなかったが、人々は幾多の戦乱を経て、各国の領土も次第に定まり、大陸は新たな時代へと歩みを進めた。
——『世界年代記』第1巻『魔族との戦争と再興』より抜粋
敗北した魔族の生き残りは大陸の辺境へと逃げたと伝えられているが、その姿を見たものはいないと言う。
それから3000年。
時代とともに科学技術が発展し、武器もまた進歩を遂げた。人々の暮らしが安全で便利になるにつれ、魔法を用いる機会は減っていった。
そうした生活が何世代にもわたって続いた結果、人々が生まれ持つ魔力量もまた、次第に衰えていった。
それでも、魔物と戦う冒険者や魔導師は、今なお人々の暮らしを支える存在だった。
「ああ、やっぱり炎竜のお肉は美味しいなぁ」
暖かな春の陽射しを浴びながら、倒した炎竜の上に座って骨付きの肉を頬張る一人の少女。頬に手を当て、恍惚の表情を浮かべていた。
お肉を見つめる双眸は金色に輝き、風が吹くたびに真っ赤な髪が美しくなびいている。
あまりにも強すぎるその少女は、冒険者の最高ランクSを超越した、唯一のSSランク。冒険者ギルドは彼女の実力を測りきれなかったため、とりあえずSの上を作りSSランクとしたそうだ。
炎竜は活火山の噴火口付近に棲む体長30mを超えるSランクオーバーの魔物である。安全のために50名以上の精鋭部隊で討伐するのだが、その炎竜でさえ、彼女にとっては赤子同然だった。
所謂チート少女ということだ。
彼女は満足するまでお肉を頬張った後、横たわっている炎竜から飛び降りて程良いサイズに切り分ける。
何もない所に手を翳すと空気を裂くように何かが現れた。
それは炎竜だった肉片を全て飲み込むとすぐに消えて見えなくなった。
「今日の収穫はいまいちだなぁ」
先程まで満足そうにしていたのはどこへ行ったのだろうか。つまらなさそうに呟いた。
今日の仕事はSランクの依頼2つで、炎竜討伐と幻の花と言われているディオネヴァの採取。あとは自分に牙を剥く魔物を狩って素材を手に入れて終了だ。
サフィニアは常に魔力を制限していた。
制限をしないと他の人間との魔力差がありすぎて相手を威圧してしまう。普通の人間の魔力量なら威圧を使わなければ問題ないのだが、サフィニアの魔力は膨大すぎて纏っているだけで格下は意識を保つことができなくなるのだ。
そのため、普段はSランクほどの魔力量だけを放出している。
魔物は敵わない相手には勝負を挑まないことが多い。
つまり、勝負を挑んでくる魔物は最低でもAランク以上。無駄な殺生をしたくないサフィニアにとって、ありがたい生存本能である。
素材は全て空間収納に入れて保管してあるので、必要になったら出せば良い。
だが彼女の持っている素材は、もはや自分でも把握しきれていなかった。持っていることを忘れて更に採集してしまったものも大量にあるだろう。
「うーん。収納してある素材とかのリストアップってできないかな。こう、可視化できるような……」
口元に手を当てて考え出すと、彼女の周りに光が集まってくる。
『解析鑑定を応用して、収納してあるものを読み込んで記録すればいいんじゃん?』
『それなら、空間収納にカウント出来るような魔法陣配置した方が良いと思うわよ?』
『んーどっちも面倒くさいから、もう収納管理者作っちゃおうよー』
集まってきた光たちは彼女の問いに答えるように話し出す。正確には思念を飛ばしているだけなのだが。
「ちょっと、意見はまとめてからにしてよ」
彼女は当たり前のようにそれに返事をした。
思念伝達なので実際に声に出す必要は無いが、やりやすいので誰もいない時はいつもこのようにやり取りをしている。
彼らは、この世界の自然の力を司る原始的な存在だ。決まった名前はなく、神の使い、精霊などと呼ばれている。1000年ほど前まではまだ視える者が何名かいたらしいが、今はもういない。
そんな彼らは久し振りの人間との会話をとても楽しんでいるようだった。故に彼らは彼女を好み、協力を惜しまない。
彼女の最強たる所以である。
『あんたはどういうのをイメージしてるのさ! それによってどれにするか変わるんじゃん?』
そう言って光は形を変え、妖精のような姿になる。彼は透明な羽を生やし、男の子のような顔立ちになった。
本来の姿は光でしかないが、具現化することで彼女に自分という個の存在を認識してほしいのだろう。
「リストアップできるようにしたいの! 何が何個って一覧にして! あと探しやすいように検索機能も付けたいな!」
彼女は書類に目を通している時のような仕草で、何もない空間を指差してそのまま下に動かす。
『それならボクの提案した解析鑑定の応用が良いよ!』
男の子の妖精は彼女の周りを嬉しそうに飛びながら話す。
『そうね、私のでは検索機能も追加するのは難しいわ……』
2つ目の提案をした光も女の子の妖精の姿になり、ウェーブのかかった金色の髪をふわりと揺らす。
『えー! 管理者作るのでも問題ないよぉー!』
3つ目の提案をした子も姿を変えて反論する。
可愛らしい女の子の姿だった。
大きなリボンで髪を縛り、ツインテールを作っている。
「喧嘩しないでよ! もう。
管理者だと会話しないといけないから面倒。ランの考え方でいこうかな」
『ありがとうサフィニア! 大好きー!』
『あら、私たちだってサフィニアが大好きよ?』
『私だってそうだしぃー!』
ラン、リン、ルンはそれぞれにサフィニアに好きアピールをする。
この名前は彼女が光たちに付けた名前だ。
なんともネーミングセンスを疑いたくなるが、彼らが気に入っているので問題はないだろう。
出会った当初、しつこくつきまとって名前を付けてくれと懇願する彼らを、煩わしく思った彼女が適当に付けた名前なので仕方ないとも言える。
他にもお察しの通り、レンやロンなどもいるが、全員が出てくると彼女に嫌がられるので先着2〜3名(?)程度と決まったらしい。
「えっと、解析鑑定で収納を読み込むようにして、でそれをリストアップできるようにっと……」
彼女は空間収納と解析鑑定を同時に発動させた。
そして鼻歌を歌いながら魔法陣を描き込んでいく。
こんな感じかな、と呟きながら魔法を発動させると空間収納に文字が浮かび上がった。
「うんうん、なかなか良いんじゃない?」
サフィニアは満足そうに頷いた。
彼女にとって、魔法陣を創り出すことなど難しいことではない。魔法陣に使われる精霊語を学ぶことから始め、魔法に用いる式や描き方に至るまで、その知識はすべて精霊たちから教わったものだ。今では、それらを自在に扱えるほどに習得している。
だが、本来魔法は学校で学ぶものだった。
初等部や中等部では、魔力について学び、生活魔法や護身魔法といった基礎的な魔法を習う程度だった。ほとんどの人間は、その程度の魔力しか持ち合わせていないからだ。
より高度な魔法を学ぶには、魔導師を育成する専門学院へ進む必要がある。
サフィニアは、そんな学校での学び方を知らなかった。
彼女にとって、精霊たちから教わった知識こそが魔法のすべてだった。そこに疑いを持つ理由などなかったのである。
それが彼女を苦しめることになるなんて、そのときは知る由もなかったのである。




