第89話 精神負荷限界
東京ダンジョン管理局・清掃員休憩室。
復元されたばかりのソファに、三人が沈んでいた。
ナカニシ・コウイチはコーヒーをすすりながら言う。
「いやぁ……死ぬか思たわ」
リサ・カミシロが睨む。
「勝手に突っ込むからでしょ。
あんたの脳みそ、液体窒素で冷やしたろか?」
「怖っ」
カイ・シノハラは淡々とログを整理していた。
そのとき。
端末が震えた。
【SYSTEM LOG】
【Warning : Cleaner Mental Load = 99.8%】
【Threshold : Exceeded】
リサが画面を覗き込む。
「……精神負荷? 限界値?」
ナカニシが眉をひそめる。
「誰のや。わてか?」
リサ。
「違うわよ。あんたは脳みそ軽いから負荷かからないでしょ」
「ひどない?」
カイは静かに画面を見つめた。
「……清掃員全体の精神負荷です」
リサが息を呑む。
「全体……?」
【SYSTEM LOG】
【Cleaner Population : 312 → 313】
【New Cleaner ID : AUTO-GENERATED】
【Location : UNKNOWN】
ナカニシ。
「……増えた?」
リサ。
「は? 勝手に? どういうことよ」
カイは淡々と読み上げる。
「精神負荷が限界に達したため……
新規清掃員の“バーコード刻印”が自動生成されたようです」
リサが立ち上がる。
「ちょっと待って。
清掃員って、勝手に増えるの?」
カイ。
「……初めて見ました」
ナカニシが腕を組む。
「どこかの現場で、新人が生まれたっちゅうことか」
リサ。
「生まれたって言い方やめなさいよ!」
【SYSTEM LOG】
【New Cleaner Status : ACTIVE】
【Signal : Weak】
【Message : ……help……】
三人が固まる。
リサ。
「……今の、聞こえた?」
カイ。
「はい。
新米清掃員が……どこかで稼働しています」
ナカニシ。
「場所は?」
【SYSTEM LOG】
【Location : Not Found】
【Error : Data Corrupted】
リサが散弾銃を肩に担ぐ。
「……探すわよ。
放っといたら死ぬでしょ、新人」
ナカニシ。
「せやな。わてらの仲間や」
カイは掃除機を背負う。
「では、捜索を開始します」
リサは小声で呟いた。
「……新人なんて聞いてないんだけど……」
【SYSTEM LOG】
【Mission : Cleaner Rescue】
【Status : Start】




