第99話 これでいい
清掃局からの帰り道。
夕方の街は、仕事帰りの人々で賑わっていた。
カイ・シノハラは、
制服のまま歩道を歩いていた。
ふと、電柱の根元に落ちている紙くずが目に入る。
「……」
カイはしゃがみ、
それを拾い上げた。
ただの包装紙。
誰かが落とした、何の価値もないゴミ。
近くのゴミ箱に入れる。
歩き出す。
数歩先で、今度は空き缶が転がっていた。
拾う。
潰れたままの缶。
誰も気にしない。
カイはそれもゴミ箱に入れた。
通りすがりの人が、
ちらりと彼を見て、
何も言わずに去っていく。
カイは気にしない。
「……ああ」
小さく息を吐き、
徳積みさせてもらいました。
「これでいい」
誰に聞かせるでもなく、
ただ、自分の中で確認するように。
世界の大きなバグを直す日もあれば、
こうして街角のゴミを拾う日もある。
どちらも同じ“掃除”。
どちらも、
世界を少しだけ軽くする。
【SYSTEM LOG】
【World Repair Rate : 0.0052% → 0.0053%】
【Minor Action Detected】
【Effect : 微小改善】
カイはログを見て、
ほんの少しだけ笑った。
「……帰ろう」
夕暮れの街を、
静かに歩き出した。
世界は今日も、気づかれないところで――整えられていく。




