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【完結】魔法少女の異世界刀匠生活  作者: 音無ミュウト
第六章

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円卓会議(ちゃぶ台)-11

 二者――特にクアンタが神さまと呼んだ女性への警戒を怠ることなく、ただ何時でも動ける準備を整えるカルファスとアルハット。そんな彼女たちにクアンタが説明を開始する。



「二人とも、彼女は私をこの星に転移させてきた張本人である、地球における神さまだ」


「名は菊谷ヤエ(B)だ、よろしくな。カルファスとアルハット」



 パチンと指を鳴らし、火が灯された煙草の煙を吸い込みながら挨拶をする女性――ヤエに、カルファスとアルハットは未だ警戒を崩さない。



「クアンタちゃん、こっちに」



 カルファスがクアンタの手を引き、アルハットがクアンタよりも前に出て、ヤエを警戒。そんな二人に「守られるべき皇族がクアンタを守ってどうするんだよオイ」と笑いながら、庭へと足を向ける。



「まぁお前たちの言いたい事、したい事も分かる。今の所マリルリンデに関連する情報を持ち得るのはクアンタだけ。つまりそれだけクアンタが重要というワケだ。あとリンナさんも」


「貴女、神さまと名乗ったわね」


「ああそうだよ。だがそれについて語るには、場所が悪いだろう? 何せここには情報を持ち得ているべき皇族が二人しかいない。だーかーら、こうする」



 今一度、今度は両手の指で一度ずつ、パチンパチンと音を奏でたヤエの音に合わせて、カルファスとアルハットは肌に慣れ親しんだ感覚を覚え「バカな……っ」「ありえないわっ!」と思い思いに言葉を叫ぶ。



一秒も時が経たずに。



ヤエの周りには、三人の男女が突然姿を現した。


正確に言えば、兆候という兆候は確かにあった。


カルファスとアルハットが普段移動手段に用いている、霊子移動による転移が、行われたのだ。



――シドニア領皇居にいた筈の、イルメール、アメリア、シドニアの三人が、今この場に霊子転移されてきたのである。



突如として外に放り出された三人だが、丁度歩いていた所だったのか、地面に足をつけると僅かに体を揺らしただけで、転んだりする者はいなかったが、しかし三人が三人共、キョロキョロと周りを見渡しながら、現在いる場所がリンナ刀工鍛冶場の庭内だと知る。



「――オイ、オメェ何モンだ。人間じゃねェな」



 先に声をあげたのはイルメールだ。彼女は多少なりとも霊子移動の経験があり、自身がどのように運ばれたかを理解していたのだ。



「ああ、その通りだともよ。初めましてイルメール」


「……色々とお伺いしたい事があるのですが、その前に一つ種明かしをお願いしたい」


「何を種明かししてほしいと?」



 続いて口を開いたのはシドニアだ。彼は腰に備えていた二対の剣に手をつけて、何時でも抜いて斬りかかる準備も済ませている。




「主が吾輩らをこの場所まで転移させた方法、霊子移動で相違ないか」



 アメリアも口を開くが、しかしクアンタが今まで聞いたことのないような、殺気の込められた冷たい声だ。



「一度に質問しないのは賢い選択だ、若き皇族たち。私としても口は一つしかないからな」


「いいから教えて――貴女、今何をしたというの?


 貴女がした事は、まだ私とアルちゃんが研究し切れていない、遠く離れた人物を霊子移動させる方法よ。


 そんな、今どこにいるか、どういう位置座標も正確に測定できない状況で、霊子移動が出来るなんておかしいわ」



 ツラツラと、ヤエの行った事の異常さを語るカルファスに、しかしヤエは「別に大したことじゃない」と笑いながら、煙草に触れて口から放す。



「まず三人が居そうな場所、半径五百米寸を霊子探査するだろう? その後三人のいる座標を識別、霊子変換してここまで転移させる。お前たちもやり方はある程度分かるだろう」


「分かるからこそ言っているのよ。貴女が何気なく言ったその技術は、私とカルファス姉さまが後十数年の年月を費やして開発しようとしていた技術だからこそね」


「おいおいアルハット、お前さんは阿呆か? その程度の演算処理なら、お前らの持っている霊子端末四個分の処理回路を作れば済む話じゃないか。何故それに十数年もかけねばならんのだ?」



 阿呆が、と口悪く言ったヤエの言葉に、シドニアが剣を抜く。


一瞬の内に抜き放たれ、下段から振り切られていた剣によって、煙草のフィルター部分から斬り落とされ、ヤエが視線を彼に向ける。



「――おいおいシドニア、最近煙草は増税で高くなったんだ。一本だって無駄にしたくないってのに」


「私はね、ある程度寛大な皇族であろうと自戒しているが、しかし貴様のその態度は捨て置けん」



 チラリと、シドニアから視線を外してイルメールへとやったヤエだが、彼女も同じく殺気が溢れ出て、今にも彼女へ襲い掛かりそうである。



「私の方こそ言いたいんだが――お前等こそ、神さまに対してその態度は何だ、気分が悪い」



 シドニアとイルメールが同時に動いた。


自身の武装である大剣を持っていなかったイルメールが、その屈強な筋肉ダルマの体からは想像もつかない程の速度で、一秒間の間に十数発の拳を振り込んでいく。


しかし、ヤエはその拳を全て右手だけで受け切り、最後に腰を引いて打たれた力強いストレートが顎に入りそうになった時だけ、身を引いてイルメールの背後に回り込み、一瞬の内に振り上げていた右脚部で後頭部を強打して、地面へと叩きつける。


そしてその間、シドニアは全く何もしていなかったわけではない。


イルメールが拳を振り続けていた間、彼もまたヤエから左方にて、双剣を振り続けていたにも関わらず、それを左手の中指と人差し指だけで全て受け切り、そしてイルメールに叩き込んだ踵落としが綺麗に決まった後、イルメールの後頭部を踏みつける足を軸にした左脚部の回し蹴りにて首筋を殴打され、リンナ刀工鍛冶場の塀近くにまで蹴り飛ばされた。



「っ、何だコイツ……ッ!」


「い……っ、! クアンタ以上の異端であることは、間違いない……ッ!」



 そうして二者の動きを止め、只者では無いという事だけを証明すると、ヤエは煙草を取り出し、火を灯しながら息を吐く。



「ふん。少しは頭が冷えたか、阿呆ども」


「先ほどから阿呆阿呆と、言うのぅお主。神を名乗るようじゃが今の所、吾輩らはお主の事を『途轍も無く腕の立つ反逆者』としか考えられんのじゃが」


「やはりまともに話を聞く気があるのはお前だけかアメリア。お前の兄妹は血の気が多くてな、独裁者のお前が一番冷静に話を聞ける口というのは皇族としてどう」


「おい、口を慎めよ大愚(たいぐ)。貴様の腕が如何程に立とうが、相手が由緒正しき皇族であり、その皇族に無礼を働いて良いと許しを出した覚えもないぞ」


「……失礼しましたよアメリア様。それより、お話を聞いてくださいませんかねぇ?



 ――クアンタやリンナ、そして虚力について色々とご説明が出来るので」



 ヤエの言葉に反応を示すのは、アメリアだけではない。シドニアが今、傷だらけの身体でアメリアの所へと向かい、イルメールは鼻血を乱雑に親指で拭いながら問う。



「オメェ、何を知ってる」


「そうだな、殆ど、とでも言おうか。少なくとも今この星に――否、レアルタ皇国に訪れている危機に関しては説明が出来る」



 その場にいる全員が言葉を出せずにいる中。


クアンタだけが、彼女へ言葉を発する。



「分かった。話を聞こう――いいな、アメリア、シドニア」



 今この場で、落ち着いて思考が出来得る者二人へそう確認した彼女に促される形にはなったが。


本日二度目の、円卓会議 (ちゃぶ台)が行われることとなった。

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