香子の日記4
北斎くんの部屋に入った直後あたりからの記憶がなぜかありません。身の毛もよだつような何かを見た気がするけれど思い出せないとなぎこちゃんに言ったら、「無理に思い出すことないんじゃない? きっとたいしたことではなかったのよ」と、顔をそらしながら言うものだから余計に気になります。
私が眠っている間に北斎くんの説得が成功していて、さらに武蔵くんが見ちがえるほどイケメンになっていてビックリしました。でも、武蔵くんは体育会系のイケメンという感じで、私の好みではありません。もうちょっと頭がよさそうな人がいいです。
夕方になって、私となぎこちゃん、漱石くん、一葉ちゃんは、文学部に戻りました。武蔵くんと源内くんもいったん自分たちの学部に帰り、明日文学部に集合する約束をしました。玄白くんから医学部の生徒たち百七十人の署名が届いていて、なぎこちゃんは大はしゃぎでした。それはよかったのだけれど……。
和泉式部さんがなぎこちゃんにベタベタしすぎなんです。サムライ学部に行ったまま一晩帰って来なかったから心配していたのだと言って、「無事でよかったわ」となぎこちゃんの手をにぎって泣いていました。他の女子たち、男子までもなぎこちゃんを囲み、私はその輪からはずれた場所からそれをじっと見ていました。
なぎこちゃんがだれかと仲良くするのを私が止める権利なんてない。そんなことは分かっているけれど、なぎこちゃんが私以上の親友をつくってしまうのは嫌……。
人間なんて信用できないんです。あんなに優しそうな人だった藤原道長先生が、自分の出世のために他人をおとしいれる裏表のある人間だった。私、好きだったのに……。自分の好意が裏切られるかと思うと、うかつに人を愛することなんてできません。でも、なぎこちゃんだけはちがう。なぎこちゃんは「自分がそれを好きか嫌いか」で態度をハッキリさせてしまうおそろしいほど自分に正直な子なんです。だから、なぎこちゃんに「好きだよ」と言われたら、何の疑いもなく彼女とは親友でいられる……。
もし、なぎこちゃんが和泉式部ちゃんと今よりもずっと親しくなって一番の親友同士になったら? わたしが二番目になったら? 正直ななぎこちゃんはこう言うかもしれない。
「ごめん、香子。今日からあんたは二番目の友だちね」
二番目になるくらいなら、なぎこちゃんの友だちなんかやめてしまって、わたしは二度と友人をつくらない。そう思っています。
香子「まーたー私の日記がーーーっ!! しかも、めちゃくちゃ重いことを書いている部分が~! ……はぁ~。もう勘弁してよぉ……。 次の投稿予定は12時です……」




