平のモリモリ一族!?
サムライ学部の委員長・清盛くんは、自分の学部の生徒たちに手を焼き、ストレスがたまって高熱を出してここの病院に入院していたはず。もう大丈夫なのかしら?
「清盛くん。熱はさがったの?」
「清少納言さん、ひさしぶりだね。いや、ぜんぜんだよ」
そう言って、清盛くんは自分の頭のうえにたくさんの氷が入った袋をのせた。すると、
ブシュー。
氷はあっと言う間にとけてしまい、ホカホカのお湯になってしまったのである。
「そんな状態で起きてきたらダメじゃない!」
「うちの学部の生徒たちが医学部のみんなに迷惑をかけているというのに、委員長であるオレがゆっくりと寝ていられるわけがないよ。……ところで、清少納言さん。いつの間に分身の術なんて高度な忍術を修得したんだい? 君が三人……いや、四人いる」
「分身の術なんかできるわけがないでしょ。清盛くんの意識がもうろうとしているから、そんなふうに見えるのよ。その体で玄白くんを手伝えるの? 大人しく寝てなさいって」
「うん……。実を言うと、今、立っているだけでせいいっぱいなんだ。しかし、オレのかわりに、オレの魂の家族が力になる」
「た、魂の家族?」
「紹介しよう。初代・平清盛の一族のDNAを受けついだ仲間たちだ」
清盛くんがそう言うと、彼の後ろにいたおおぜいのサムライ学部の生徒たちが右から順番に自己紹介をはじめた。
「ぼくは、初代・平清盛の長男のDNAを持つ平重盛です」
「次男の基盛です」
「三男の宗盛です」
「四男の知盛です」
「清盛の弟の経盛です」
「同じく弟の教盛です」
「さらに同じく弟の頼盛です」
も……もりもり、もりもり、うるさ~い!
他にも多くの平家一門のDNAを持つ偉人のたまごたちが次々と自分の名前を名乗っていたけれど、とても覚えきれない。読者のみなさん、ごめんなさい。以下略でお願いします。
「オレたちの初代はみんな平家の武将で、仲良し家族だった。二代目のオレたちはそれぞれ別の家庭で生まれたが、このように魂のきずなで結ばれて、家族同然の仲なんだ」
清盛くんはほこらしげにそう言った。
初代・平清盛は、ライバルだった源義朝をやっつけて、「平家にあらずんば人にあらず」と言われるほどの平家一族の繁栄を築き、自分の家族たちに高い地位をあたえた。清盛の死後に源義朝の子の頼朝と義経兄弟に平家は滅ぼされるけれど、その時も平家の人々は力を合わせて最後まで戦い、ほとんどが壇の浦の海へ身を投げて死んだのである。そこらへんは『平家物語』というお話にくわしくのっているから、興味がある人は図書館へGO!
「もりもり一族……じゃなかった、平家一門のみなさんが力を貸してくれるのなら、心強いかぎりです。どうかよろしくお願いいたします」
玄白くんが頭をさげると、もりもり一族(いちおう名前に「盛」がつかない人もいるけれど以下略!)のみんなは、手わけしてケガ人たちの治療を手伝いはじめた。
「香子、大丈夫? ちゃんと立てる? 私、もう少し玄白くんのお手伝いをするけれど、あなたは清盛くんといっしょに休んでいたら?」
大量のケガ人たちを見て気分が悪くなっていた香子のことを気づかい、私はそう言った。でも、意外と芯の強いところがある香子は「大丈夫」とけなげにも答えた。
「なぎこちゃんはケガの手当てが乱暴だから、私がちゃんと見はっていないと……」
「あはは。そうね。それじゃあ、もうひと仕事しますか!」
玄白くんは、私や香子、鴎外くん、平家一門のみんなにテキパキと指示をして、五十人ちかいケガ人たちの手当てを素早く行なった。
「大ケガをしていて今すぐ治療が必要な人の手当ては、僕に任せてください! みなさんは、かすり傷や軽い火傷などの簡単な手当てですむ人たちをみてあげてください!」
う、うおお~! い、いそがしい~!
私、不器用だから包帯をなかなかキレイに巻けないのよ……。私がもたもたと一人の患者を手当てしている間に、手先が器用な香子は三人も治療しちゃっているんだもん。
「ううう……。わたしはどうせ乱暴で雑な性格の女子ですよーだ。とほほ……」
「清少納言先輩。泣いていないで、ちゃんと働いてください」
「はい……」
鴎外くんに叱られちゃった……。私は巻くのに失敗してぐちゃぐちゃになった包帯をほどき、新しい包帯で再チャレンジするのだった。
「傷が痛むから早く手当てをしてくれ。はやきこと風のごとく頼む」
「わ、分かっているわよ。ええと、あんたは武田信玄くんよね? 名前や顔写真は学園新聞で何度も見たことがあるけれど、会うのは初めてだわ。戦国武将最強の男として有名な君がどうしてケガして医学部に運ばれてきているのよ」
「信長のやつが、学園が使用を禁止している鉄砲を大量に持ち出して、オレの騎馬隊にぶっぱなしやがったんだ。鉄砲隊を三列にならべ、一列目がうったら二列目がすぐに前へ出てうち、さらに三列目がうつ。そうやって、一瞬のスキもなく鉄砲を一斉射撃されたら勝ち目なんかあるものか。ちくしょう、長篠の戦いの再現をされちまった」
長篠の戦いというのは、戦国時代の中でも有名な一大決戦だ。天下統一を狙う織田信長がもっともおそれた武田信玄が死んだ後、その息子の勝頼と信長が戦ったのである。その時、信長はポルトガル人が日本に伝えた鉄砲を本格的に合戦で使い、武田の騎馬隊を倒した。
「何よ、また信長くんなの? 義元くんも信長くんにやられたって……」
「ここにいるサムライたちは、みんな信長に倒された連中ばかりだ。上杉謙信、浅井長政、朝倉義景……。どいつもこいつも信長に戦いを挑んで、返り討ちにあったんだ」
「あ・い・つ~‼ 署名活動はどうなっているのよ~‼」
激しい怒りのために髪の毛が天を突きさすほど逆立つことを「怒髪天を衝く」という。今の私がまさにそれだった。
「署名活動を手伝ってやるから、成功した時はオレの彼女になれ」なんてナンパまがいのことを言っておいて、戦ってばかりじゃない! しかも、鉄砲なんて危ない武器を持ち出して! 最初から署名集めなんかする気がなかったのね! 私をからかっていたんだわ! 年上のお姉さんをバカにして許せない!
「清少納言先輩。お疲れさまです。だいぶ落ち着いてきたので、少し休んで……」
「玄白くん! 私、サムライ学部にもう一度行ってくる!」
「え? 急にどうしたんですか? だ、ダメですよ。サムライ学部の生徒たちから聞きましたが、今あそこはかつてないほど危ないことになっているそうですよ。信長くんが、戦国武将でもっとも頭が切れる毛利元就くんとはげしい合戦をしているんです。のこのこ行ったら、今度こそ戦いに巻きこまれて大ケガしますよ?」
「でも、あいつにひとことガツンと言ってやらないと気がすまないんだもん。署名活動を手伝う気があるのかも確認したいし。もしないのなら、私たちがやらないと。第一、これ以上ケガ人が増えたら、玄白くんたちが大変じゃない。かおる……紫式部、行きましょ!」
「そ、そんな……。あんな地獄の一丁目みたいなところにまた行くの?」
「行きたくないのなら、別にいいわ。私一人でも行くから」
「だ、ダメだよ。一人でなんて。でも、私たち二人で生きて帰れるかしら……」
香子がものすごく不安そうに言った。昨日の夜、あれだけ恐い目にあったのだから、サムライ学部へ再び行くことをしぶる気持ちはよくわかる。今の私は怒りのせいで恐いもの知らずになっているだけで、冷静だったら私だって香子と同じことを言う。
「そこまでの決心なら、うちの学部のアイツを先輩二人のボディーガードにつけましょう」
そう言って、玄白くんは私と香子を医学部の学生寮へと連れて行った。
「玄白くん。医学部の子が私たちをヤンキーみたいなサムライ学部の生徒から守れるの?」
「一人だけ、とんでもないやつがいるんです」
「そんなにケンカが強いの?」
「ケンカはからっきしですが、別の恐るべき才能を持っています。……着きました。この部屋です。といっても、わたしとルームメイトの部屋ですが」
玄白くんは学生寮のある部屋の前に立つと、ポケットからカギを出してドアを開けた。
「おい! 医学部の仲間たちがいそがしく働いている時に、一人だけ部屋にこもって何をやっているんだ!」
「もぐもぐ、むしゃむしゃ。ウナギうめー! ……ああん?」
その男子生徒は、ウナギ丼を食べながらネコ型ロボットの設計図を書いていた。
果たして彼は何者なのか? 待て次回!
清盛「紫式部さんの日記も同時投稿されていますよ。ちなみに、この小説、続編があったらオレの出番がもっとあった予定だったそうな……。くっ、無念……!」




