1-3 『病院』
この薬よね
本当かしら?
‥あ‥‥れ?
‥薬‥‥飲‥だ‥
‥‥……―― クスッ♪
「‥誰‥‥なの?」
「・・・須藤 恵里佳だけど?」
「へぇっ?」
「起きた?」
「‥‥‥‥」
「転んで失神とか大いに笑わさせて頂きました。」
病院内部に入るなり明菜が始めに行なった事とは恵里佳が言った様に足を滑らせて転ぶ事だった。
後頭部を地面に打ち付けた明菜は手で優しく擦り付けながらも未だに腹を抱えて含み笑いで何とか大笑いを抑え込んでいる恵里佳を睨み付ける
「恵里佳!!」
「ゴメンゴメン・・・ぷっ♪」
「もう知らない!」
睨みながらも恵里佳を怒鳴ったと言うのに謝る処か病院に入る直前まで見せていた怪しむ顔付きが破顔し余計に明菜を腹立たせていた
「…私はこっち行くからじゃあね」
「ちょっと!待ちなさい!!」
一緒に居る事が腹立だしく感じたのだろうか、恵里佳からの警告を聞く事も無く、分かれ道を見付ける成り意味も無く怒り心頭な明菜は先々と一人で歩き進んで行く
そして、幾らか進んだ後に来た事の無い筈の病院内部を進みながらも違和感を感じ始めていた。
「…知ってる?‥でも、此処に来るのは初めてだし‥‥ぬぅぅぅ?」
頭を捻らせ、明菜は自身が此の病院に来た覚えが無いのかと必死に記憶の中を探るが見付からない
「やっぱり此処に来てない……でも‥」
此の病院に来た覚えが見付からない事が不安を増長しているのか、先程までとは違い少し身体を震わせ辺りを見渡しながらの歩行に変わっていた。
辺りを見渡しながら歩く様になって幾ばくか進み、その方が安心するのか、道程を称えながらの歩行にしていた明菜は見えた曲がり角にも何の疑問も無く放った一言が
「…角を曲がると『子供の広場』‥ッ!!」
来た事が無い病院内部の筈なのに、まるで自然と構造を知っている様な口振りだった。
「ない、ない、有る筈ない!! ‥‥似てる所?そうだよ!似てる所が在って其処と間違っているだ!!」
まるで『自分の記憶が間違っている!』と有り得ない記憶を否定するかの様に声に出して角を曲がる
「…そん‥な‥‥」
だが、角を曲がった明菜に突き付けられた現実とは、其処には存在しては為らない空間『子供の広場』と思われた場所が壊れた遊具と共に広がっていた。