第二十四話 クリティカルの秘密
「クリティカル……?」
ガルシアが、驚いたように声を上げた。
「今、クリティカルと言ったのか?」
セシリアが頷く。
「ええ」
「今日、彰人さんが戦闘中に出した一撃です」
ガルシアは彰人を見る。
「クリティカル……」
その言葉を確かめるように、もう一度呟いた。
「それは……本当なのか?」
「はい」
リーナが答える。
「私もはっきり見ました」
ミレイも続く。
「私もです! しかも一回じゃないですよ!」
「……一回じゃない?」
ガルシアの表情がさらに驚きへと変わる。
「ええ」
セシリアが静かに頷く。
「少なくとも、戦闘中に何度も確認しました」
「何度も……」
ガルシアは彰人を見つめる。
「しかし、クリティカルというのは……」
そこで言葉を止める。
「普通、そう簡単に出せるものではないだろう?」
「はい」
リーナが答える。
「私も長く剣を使っていますが、狙って出すとなると話は別です」
「私たちも、そう思っています」
フィリアも頷く。
「だからこそ、彰人さんがどうやって出したのか気になって……」
全員の視線が彰人へ集まった。
「えっと……」
彰人は少し困った。
どう説明すればいいだろう。
まさか、
『ゲームで敵の動きを見ていたからです』
などと言えるはずもない。
彰人は少し考えてから、口を開いた。
「実は……」
全員が耳を傾ける。
「魔物の動きを見ていたんです」
「動きを?」
セシリアが聞き返す。
「はい」
彰人は頷く。
「攻撃する前に、少しだけ動きが変わるんです」
「……動きが変わる?」
「体勢だったり、視線だったり……」
彰人は、戦闘中に観察したことを思い出す。
「攻撃した直後も、ほんの少しだけ隙ができる」
リーナが黙って聞いている。
「そこを狙ったんです」
「……なるほど」
リーナが呟く。
「つまり、魔物の動きを読んでいた……と」
「そんな大したものじゃないですよ」
彰人は苦笑する。
「たまたま、うまくタイミングが合っただけです」
「たまたま……?」
ミレイが目を丸くする。
「でも、何回も出してましたよね?」
「それは……」
彰人は言葉に詰まる。
するとガルシアが、じっと彰人を見る。
商人として数多くの人間を見てきた男の目だった。
「彰人君」
「はい?」
「それは本当かい?」
彰人の手が止まる。
「……はい」
「本当に、ただ魔物の動きを見ていただけなのか?」
「……」
彰人は一瞬、答えに迷った。
嘘をついているわけではない。
だが、すべてを話しているわけでもない。
「俺には……そういう戦い方が合っていたんだと思います」
そう答えると、ガルシアはしばらく彰人を見つめていた。
そして――
「……そうか」
小さく頷いた。
だが、その表情にはまだ納得しきれていないものが残っていた。
一方、セシリアは興味深そうに彰人を見る。
「魔物の動きを観察して、攻撃の瞬間を見極める……」
「それだけでクリティカルを?」
リーナも考え込む。
「普通なら、そこまで正確に合わせるのは難しいはずです」
「ですよね……」
彰人は苦笑する。
そして心の中で呟いた。
――やっぱり、この世界ではクリティカルってそんなに珍しいものなのか。
自分にとっては、ゲームで覚えた知識。
けれど、この世界の人たちにとっては――
それは、簡単には再現できない一撃なのだった。
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