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第一話 タイムトラベル

西暦1075年 


「ぎゃぁぁあああ!!しぃぬぅぅぅう!!」


少女(しょうじょ)は……落(お)ちていた。ものすごく、落ちていた。

月夜(つきよ)の澄(す)んだ空(そら)を、真っ逆(まっさか)さまに……。


「パパのバカ!!絶対(ぜったい)帰ったら文句(もんく)言うからぁ!!」


…って、ヤバいヤバいヤバい!!地面(じめん)もぉすぐそこじゃん。死んだわ。


あ、人だ。人出てきた!!


「ねぇ!!そこの人!!助けてぇぇえ!!上!!うえぇぇええ!!しぬぅぅう!!」


人影(ひとかげ)がこっちを見上げる。

どんどんと地面が近付いてくる。


怖くなって、ぎゅっと目をつぶった。


___ドサッ!


「……ったぁ。」


恐(おそ)る恐る目を開けると、

ウチは男の人の上に座っていた。


「うわっ!!まじごめん!!大丈夫!?てか、ありがとー!!マジ助かった!!」


慌(あわ)てて立ち上がり。男の人の手を取る。

男の人は、黙って着物に付いた砂を叩(はた)いている。

その顔をまじまじと見ていると、男の人は眉をひそめた。


「…なんだい。」


「貴方(あなた)が、安倍晴明(あべのせいめい)?」


「安倍晴明公がお隠れになってから、もう幾十年(いくじゅうねん)にもなるよ。」


「………は。」


男の人は不思議(ふしぎ)そうに、ウチを見てる。


「待って待って、安倍晴明死んでんの!?何十年も前に!?」


「あぁ。」


「まじか…もぉ!!パパ時間ミスってるよぉ!!」


男の人が、縁側(えんがわ)に座ったから。ウチも隣に座った。


「…なぜ隣に座ったんだい。」


「え?貴方が座ったから。」


「そうか…。」


ウチは、庭に咲く枝垂桜(しだれざくら)を眺める。


「幾つか聞きたいのだが…。」


「どぞー。」


「何故、空から落ちてきた。」


「そりゃ。パパが座標ミスったから?」


「…そうか。では、なんだその珍妙(ちんみょう)な装(よそお)いは。」


「…?ちょー似合ってるっしょ!!」


男の人は、深いため息を付き。頭を抱えた。


「では、最後。君の名は何というんだい。」


「ウチ?ウチは、柊木華恋(ひいらぎかれん)!!よろー!!」


「…柊(ひいらぎ)?」


「うん!!そうだよー!!」


「行く当てはあるのか?」


「ないよー!!」


何も言わず部屋を用意してくれた。

この、大きなお屋敷は男の人のお家みたい!!うらやま!!


「お布団ふかふかぁ…」


お名前、聞くの忘れてたなぁ。明日起きたら……聞きに…行こぅ…。


ウチは眠りに……


『か…れん…私の愛しい華恋…一緒に…行きましょぅ……華恋…』


「……っ。」


伸(の)し掛(か)かる黒い影が、ウチの顔を覗き込む。

光のない、漆黒(しっこく)の眼(まなこ)に映り込むウチの姿は、日に日に生気を失っていく。



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